周回遅れの諸々

90年代にオタクとしての青春を過ごした人のブログです

ラノベ

00年代初頭の女子高生漫画オタク、伊原摩耶花(古典部)の本棚

10月に発売されたムック『米澤穂信と古典部』では、原作者が考えた「古典部」メンバー4人の本棚が公開されていた。 米澤穂信と古典部posted with ヨメレバ米澤 穂信 KADOKAWA 2017-10-13 AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo オタクとしての伊原摩耶花 「古典…

『小説 魔法使いの嫁 銀糸篇』 原作を知らなくても楽しめるファンタジー小説集

人外×少女の現代ファンタジー漫画、ヤマザキコレ「魔法使いの嫁」の、小説アンソロジー。先行して発売された『金糸篇』とは執筆陣を替えての一冊。 東出祐一郎「ウォルシュ家攻防戦」 真園めぐみ「ナチュラル・カラーズ」 吉田親司「戦場の赤子」 相沢沙呼「…

『血界戦線 グッド・アズ・グッド・マン』 濃密さを増したHL描写、ザップ大活躍、堕落王の気高さ

千年かけて練り上げた魔導によって、破壊も創造も思いのまま。退屈を厭い、世界崩壊レベルではた迷惑なゲームをヘルサレムズロットに仕掛ける怪人、堕落王フェムト。彼が持ち合わせてないのはただ一つ、「普通(グッド)」であること――。ある日、たわむれに…

「魔術士オーフェン」は銃の存在するファンタジー世界をいかに描いたか

銃は、大陸でも類を見ない、強力な兵器のひとつではあった。が、最強ではない。便利ですらないかもしれない。数発撃つごとに暴発の危険性は高まり、さりとて一発目から危険がないわけでもない。故障も多い。それでもなお、この武器は騎士たちの誇りであり続…

祝プレオーフェン漫画化 コミクロンの三つ編みの行方

「魔術士オーフェン」シリーズは、90-00年代にファンタジア文庫から刊行されたラノベだ。当時のファンタジア文庫といえば、書き下ろしのシリアスな長編と雑誌連載のギャグ短編、二つのシリーズが同時進行するスタイルをもって人気を得る作品が多かった。「オ…

私の名は安井健太郎「ラグナロク」。小説家になろうで復活したスニーカー文庫の看板、それが私だ

お盆は死んだ人が帰ってくる。とは言うものの、まさかこの作品が帰ってくるとは思わなかったよね。 ラグナロク―黒き獣 (角川スニーカー文庫)posted with ヨメレバ安井 健太郎 角川書店 1998-06 AmazonKindle 1998年。ラノベ業界のファンタジーブームは既に収…

【我は放つ】「魔術士オーフェン」の呪文の元ネタ、RPG「ダイナソア」を知ろう【光の白刃】

「我は放つ光の白刃」など、「オーフェン」に登場する呪文は、日本ファルコムのRPG「ダイナソア」のパクリ――。「オーフェン」ファンなら、一度は耳にしたことがある疑惑だ。 「オーフェン」シリーズの呪文のカッコよさ 秋田禎信の「魔術士オーフェン」シリー…

『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』 現在の少女小説の主要読者は少女ではない

そもそも「少女小説」とは。新井素子「星へゆく船」や氷室冴子「なんて素敵にジャパネスク」、小野不由美「十二国記」、今野緒雪「マリア様がみてる」、雪乃紗衣「彩雲国物語」などの、少女に向けて書かれた小説のことだ。大正時代、吉屋信子のエス小説(百…

ラノベ作家としての佐藤大輔=豪屋大介 エロスとバイオレンスとビッグマウスと

小説家の佐藤大輔が、虚血性心疾患のために亡くなった。享年52歳。多くの未完作を抱えての逝去だった。 mainichi.jp 氏については「征途」「レッドサンブラッククロス」「皇国の守護者」などの(仮想)戦記を執筆した作家、というのが多くの人の認識だろう。…

「このすば」のアクア様とカズマさんがオーフェンとコギーだった

数多の異世界転生物がヒット作を飛ばしている。中でも「この素晴らしい世界に祝福を!」は特に、90年代を生きた人たちにある種の郷愁をもって迎えられているみたいだ。 曰く「めぐみんの爆裂魔法はスレイヤーズのリナが使うドラグスレイヴだ」「じゃあめぐみ…

思春期の頃、自分が読んでるor読むべきはこういうものだと規定されるのが嫌だった

あの頃、別に早く大人になりたかったわけじゃない。ただ、子供扱いされるのは間違いなく嫌だった。 児童文学は親が子供に買い与えるもの、ライトノベルは子供が自発的に買うものだ、とよくゆわれる。だからだろうか、児童文学として売られるものには「この本…

【勇者のクズ】草河遊也 現役のフルアナログイラストレーター【オーフェン】

私の人生に一番影響を与えたラノベは、「魔術士オーフェン」でまず間違いない。作者の秋田禎信に関しても、旧シリーズが終了してからもずっと追い続けてる。 じゃあイラストの草河遊也はというと、正直ファンタジア文庫版の頃はそこまで熱狂的なファンではな…

秋田禎信『血界戦線 オンリー・ア・ペイパームーン』 映像化も望まれる良ノベライズ

www.adventar.org ※この文章は、秋田禎信関連アドベントカレンダーの一日目の記事です。 内藤泰弘原作「血界戦線」のTVアニメ2期が、2017年に放送されることが決定した。ストーリーなど詳細はまだ明らかにされていないが、ノベライズでありながら一部の人か…

「ライトノベル傑作短編アンソロジー」をちょっと本気出して編んでみた

一般にライトノベルは短編が少ないとされている。書き下ろし長編のシリーズ物がメインというのがその主な理由だろう。ドラゴンマガジンや電撃文庫magazineに掲載されるのも、シリーズ物の外伝短編が多い。でも、たまにミステリのアンソロジーとか読むと結構…

上遠野浩平『パンゲアの零兆遊戯』 強靭な意志と固い信念が試されるジェンガ

上遠野浩平の新作は、ノン・シリーズ物のゲーム小説。講談社ミステリーランドの一作として刊行された『酸素は鏡に映らない』以来のハードカバー単行本となる*1。同じく祥伝社の、これはノベルスとして出ている「ソウルドロップ」シリーズと僅かながら繋がり…

七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」のヒットに見るラノベと一般文芸の境界

実写映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」が12月17日から公開される。原作は2014年に刊行された七月隆文の恋愛小説。10代、20代の女性にものすごく売れて、発行部数は100万部を突破したらしい。あの七月隆文が! 一般文芸で! 若い女性に受けて! 100…

「小中高校時代、学校や公共の図書館にラノベはあったか」アンケート結果

ライトノベルと図書館の関連性が話題になる度、最近の図書館にはラノベが置いてるのか! という声が上がる。一方で、いや昔からラノベ置いてあったしなんなら自分で購入希望出して入れてもらったし、という反論も出てくる。実際そこのところどうなの、と思っ…

あざの耕平「Dクラッカーズ」 おクスリキメてラリった挙句が熱血スタンドバトル

90年代後半から00年代前半のオタク文化というと、セカイ系だったり泣きゲーだったり少年犯罪だったり何かと根暗なイメージがある。実際に個々の作品を当たってみると案外そうでもなかったりするんだけど、逆にそんな時代だからこそ、健全な価値観の作品が「…

「サクラダリセット」「階段島」河野裕講演会 in 中央大学白門祭 レポ

11月4日に中央大学の学園祭「白門祭」にて開催された、河野裕先生の講演会に行ってきた。中央大学にお邪魔するのは、3年前に米澤穂信先生の講演会に参加して以来だ。って、そういえばあれも文学会さん主催のイベントか。いつもお世話になってます。 正式名称…

アラサーの私が20年間どんなラノベを読んできたか

「ライトノベル個人史」みたいなものを書きたくなったりすることもあるのだけど(そして同時に、そういうものを聞きたいし読みたいぞ、と頻繁に思ったりもしているのだけど、あまり「順を追うように」書いてくれてる文章って、巡り逢えてなくて、常に飢えて…

「バーナード嬢曰く。」と「俺ガイル」 自意識あるあるの幻

アニメ化に乗って、以前から気になっていた「バーナード嬢曰く。」を読んでいた。kindle unlimitedのラインナップに入ってたし。そしたらなんだか「俺ガイル」を連想してしまっていた。 読書家の自意識 読むとなんだか読書欲が高まる“名著礼賛”ギャグ! 本を…

榊一郎「ドラゴンズ・ウィル」「棄てプリ」そして「ストジャ」 生粋の「軽小説屋」に覚えた同時代意識

ひとつのジャンルに多少なりとも長く留まっていると、「あ、この作家は自分と同じものを食べて育ってきたんだな」「この人が使ってる言葉は自分と共通のものだな」というのが透けて見えることがある。それが単に流行に乗っかったり懐古の念をくすぐろうとし…

秋田禎信とかいうコラボ・ノベライズ大好きおじさん エロゲから国民的漫画まで

sube4.hatenadiary.jp 昨日、「VS.こち亀」の話をした。オーフェンとこち亀って接点皆無じゃないですか!? と驚いた人も多かったようだけど、実は秋田禎信という作家は、この10年くらい、意外なところでの原作つきの仕事やコラボに積極的に関わっている。昔に…

「VS.こち亀」 コラボ相手としての両さんとはどういう存在なのか

j-books.shueisha.co.jp 連載40周年&単行本200巻記念という名目だったのがいつの間にか完結記念になっていた、「VS.こち亀 こちら葛飾区亀有公園前派出所ノベライズアンソロジー」を読んだ。ちなみに作家陣は執筆当時、完結を知らなかったらしい。そうと知…

イリヤの空、UFOの夏:新海誠がブレイクしたので、今一度三大セカイ系について語る 02

sube4.hatenadiary.jpsube4.hatenadiary.jp 「イリヤ」*1は、2000年に電撃hp第7号で連載がスタートした。元々「EGコンバット」「猫の地球儀」などのSFラノベで高い評価を得ていた秋山は、本作で一躍売れっ子となった。 「6月24日は全世界的にUFOの日」*2新聞…

清野静「時載りリンネ!」「さよなら、サイキック」 歯列矯正ブリッジをつけた女の子は好きですか?

7年の沈黙を破り、あの清野静が新作発表! ってことで、未完の前作「時載りリンネ!」シリーズ1-5を読み返していた。 200万字の本を読むことでたった1秒だけ、時を止めることができる一族“時載り”。バベルの塔に住み、本を摂取することで生きている彼らだが…

石川博品「メロディ・リリック・アイドル・マジック」 国民的アイドル VS 野良アイドル

子供があくまで子供のまま大人の世界にコミットすることを求められ、しかし「仕事」をしていく中で否応なしに成長する/させられる*1。これを、アイドルが描かれた物語の一つの類型だと考える。その場合、子供の世界の狭さ、大人の世界の広さを強調したほう…

エンタメ寄り長谷敏司の魅力 「円環少女」「ストライクフォール」他

長谷敏司が久々にラノベレーベルで新作を発表! ってことで、エンタメ寄りの長谷作品の魅力とか特徴とかについてつらつらと語る。 今も連なるエモさを感じる「楽園」「フリーダの世界」 長谷敏司という作家は、2001年にスニーカー大賞金賞を受賞して世に出た…

秋田禎信「ハルコナ」 花粉症を駆逐した社会を描く奇想小説 空気に殺されないために

周囲数十キロの花粉を消滅させる*1特異体質を持つ人々がいる社会を描いた、奇想小説。それが、新潮文庫nexから発売された秋田禎信の「ハルコナ」だ。 5年前、遠夜(とおや)の隣に引っ越してきたハルコは特異体質の少女。数十キロにわたり花粉を消滅させるか…

ろくごまるに「食前絶後!!」「封仙娘娘宝録」が電子化 心理戦・頭脳戦ラノベの傑作

カドカワの小説投稿サイト「カクヨム」。そのオープン初日に、プロ作家であるろくごまるにが、カドカワ=富士見書房の電子書籍契約に関する杜撰さ*1を糾弾する文章を投下して、大きな話題を呼んだ。その後紆余曲折を経たものの、発端となった作品「食前絶後!!…