周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「ミュークルドリーミー」一年目から好きなエピソード九選

激動の二〇二〇年度を共に駆け抜けてくれたアニメ「ミュークルドリーミー」の一年目が無事に終わったので、印象に残った回を挙げていきます。一〇選にしようかと思ってたんだけど絞りきれませんでした……

第2話「ユメシンクロで仮入部」

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序盤にお約束の主要キャラ顔見せ回。なんだけど、とにかく台詞が途切れない。一人が喋ってる後ろでまた別の誰かが喋ってる。ツッコもうと思っても画面は既に先に進んでる。脇道に逸れたら戻らない……。


桜井弘明監督が二十年前の「赤ずきんチャチャ」で発揮した【早さ】を、御年六十を超えても維持し続けるどころかむしろ加速してるように感じる麻薬的テンポ。「ミュークル」がどういうアニメか、二話目にして知らしめた。

第6話「はじめての中間テスト」

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タイトル通り初めての定期テスト。ウチらアホです! コンビのゆめちゃんとまいらちゃんが、ことこ先輩の家に勉強を教わりに行く。


ふざけてばかりのように見えるアニメだけど、端々で子供に何かを伝えたい意図が見えて、基本的には真面目なんだと思う。ただそれは受け取る側には押しつけにしか映らないとも分かってる。だから理想の教育について語ることこ先輩の祖父や父(本職の教員)を見るゆめちゃんまいらちゃんは顔はにっこり笑ってても頭の中は目の前のご馳走のことで頭がいっぱい、ことこ先輩はシラーっとしている。そんな風に状況をギャグにする。学びはあくまで自分たちの手で掴み取る。それでいてことこ先輩は両親のことを別に嫌ってるわけではなく、むしろ家族仲はいい方なのが大人視聴者に優しい。

第10話「雨ふりねぶそくゆめちゃん」

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憧れの杉山先輩の夢を見たくて枕の下に写真を挟んだら彼とその幼なじみの百合先輩がイチャイチャしてる悪夢(ゆめちゃん視点)を見せつけられ、ゆめちゃん変顔百連発。からの、ゆめちゃんの幼なじみ朝陽くんとの甘酸っぱいオチ。怒涛のギャグと、中学生のあまずっぺえ淡い恋愛模様「ミュークル」の二大要素を巧みに織り込んだ回で、緩急自在の構成に舌を巻いた。シリーズでどれか一話を未見の人に観せるならセレクトしたい回。

第12話「オレっちが先に見つけるにゅい」

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屈指の人気キャラゆに様の過去が明かされる。誰かに必要とされたくて精一杯がんばる(でも空回り)ゆに様の健気さが視聴者の胸を打った。地上に落ちてきてから誰に顧みられることなく打ち捨てられていた歳月を草木や陽光の色合いの移り変わりで表現した背景美術(それと撮影処理?)がいい仕事してます。

第16話「私はやっぱりチアっちゃお!」

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何かと邪魔してくるゆめちゃんに対しゆに様が些細なことでもブラックスキーマを見つけてつけこもうとするも、周囲が優しく有能なのでことごとく回避してしまう。どんなシリアスになりそうな場面でもならないってのはこのアニメの大きな特徴。お約束を裏切るってそれ自体を目的にするとチープになりがちと思うのですが、ここまで超高速で天丼を続けられると一つの芸として成り立ってしまうんだと納得させられる。「ゆめちゃんがブラックアビス堕ちするとやべえ」って情報を共有してないわかばがゆめちゃんの笑顔守り隊にそうと知らず協力してたのが「基本的にあの世界は善意で成り立ってるんだな」って実感できて好きです。

第17話「恐怖のプチトマトマン」

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これぞキッズアニメ、これぞジャンル:サンリオアニメって感じのトンチキエピソード。トマト嫌いのゆめちゃんに対して、悪夢の中から【プチトマトマン】が現実に侵食してきてプチトマトを食べろと迫るホラー回。この回の絵コンテは監督の盟友大地丙太郎。以前桜井監督のテンポのよさに対して大地のそれは暴力的ですらあると書いたことがあったけど、それを証明するかのような。


ラストでゆめちゃんが勇気出してプチトマトを食べてみるもやっぱり苦手で、それに対してママが挑戦したという事実だけで喜び、「大人になったら食べられるようになる」と諭す、【嫌い】の改善を急かすようなことを言わないのがいい。

第19話「お誕生日ゆめちゃん合宿中」

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大切な幼なじみではあるけどそれ以上ではなかった朝陽に迫ってくる女・森村さん。合宿で告白する彼女の姿に、杉山先輩だけを見てきたゆめちゃんの心はほんの少しだけ揺れる。瞬間最大風速的には一番盛り上がったんじゃないかしら。それはひとえに【女児アニメらしからぬ修羅場】を期待した視聴者の心理によるもので、その期待は幸か不幸か翌週で裏切られるのだけど……。


でも、煽られるだけの不穏なものがこの回にはあった。特にAパートでは恋バナでキャーキャーやってた女子たちBでは森村さん周辺は友人の恋にキャーキャーしてるのにゆめちゃん(と朝陽)周囲が冷めてるのにぞくぞくっときた。異なるグループ同士でいる時とそうでない時のギャップが怖い。このアニメって普段はそういうジトッとしたところ見せないので尚更。あとラスト「ワイワイのホエ~ワイのワイのホエ~キャッキョキャッキョ!」(ガヤ)で誕プレ渡すの遮られるのギャグで落としたようで朝陽の心情を考えるとなかなかつらい。

第28話「まいらマイラブ♥」

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別れについてのお話。「コアなオタクに大絶賛され、以降長く語り継がれるサブキャラ主役のいい話」の最良の形。そういうエピソードって演出なり作画なりが良くも悪くも他から浮いててその落差で視聴者の感情をどうこうしてるなと感じる面もあるのですが、「まいらマイラブ♥」は雰囲気はあくまでいつものままで評価がぶっちぎってるのがすごい。


今回挙げた話数は基本的にはその回だけ観ても面白い楽しい興味深いものを選んでますが、これだけは一話からずーっと追っていって28話に辿り着いてこその感動があると思います。

第41話「バレンタイン和菓子配っちゃお!」

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モテない男の怨念がバレンタインとチョコレートという概念を世界から消し去る。世界改変という大ネタ、かっちょいいアクション作画といい最後の解決法といい、元からめちゃくちゃ高かった完成度がさらに高まった感がある。まるで劇場版を観てるみたいだと視聴者に言わしめた傑作。応援上映で朝陽がんばえーしたい。

あとは……


随所の作画的な遊びが楽しい第9話「きゅうちゃんのゆううつ」、杉百合のしっとりとした空気が全体を支配している第26話「おさななじみにはわかるの?」、桜井監督のロック趣味が全開になった第39話「ロック・ペブル&ストーンズ、ときわちゃんのいいお姉さんっぷりが堪能できる第40話「雪だるまさんが溶けないで」、父親の趣味のために娘が頑張ってくれる姿を描く親世代感涙のエピソード第42話「おたから石は突然に!」、ラストダンジョン侵入からラスボスとの対峙までを超ハイテンポで進行してく第45話「悪夢のお城だったかも?」辺りが選からは漏れたけど好きなエピソードですね。


そして二年目「ミュークルドリーミーみっくす!」に期待してるのは以下のような感じ。

  • 森ちゃん回。杉山親衛隊に収まったことに不満はないけど、まだまだこの子のポテンシャルを活かしきれてないはず。ゆめちゃんたちと同じクラスになったのでそこは期待していいよね? 朝陽関連でなくてもいいから……
  • ときわちゃん回。お姉ちゃんしてる時のときわちゃんは本当にいいお姉ちゃんなんだけど、まだまだこの子のポテンシャルを(ry
  • 逆にやってほしくないことは、朝ゆめのガチ大喧嘩とかですね。朝陽側からは勿論、ゆめちゃんからも朝陽に矢印を向けてないにしても大切な幼なじみだと思ってるし杉山先輩への感情で盲目になっても朝陽にひどい仕打ちをしたりしないのが一期の美点だったと思ってるので。やるにしても短い話数ですぱっと解決して欲しい。


二年目については、正直こういうノリと勢いで押し切る(でも時々それだけじゃない)アニメは「ジュエルペット」方式で一旦リセットして監督を他の誰かに引き継いだ方がいいのでは、と不安なのですが……始まってしまったからにはゆるく観続けていこうと思います。よろしくお願いします。