周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

(気の合う趣味友達+行動力)×オタクライフ=「腐女子のつづ井さん」

 

 

一介の隠れ(本人としてはそのつもり)腐女子である大学生「つづ井」さんのオタクライフを綴ったコミックエッセイ。元々はTwitterで無料公開していたものがこの度商業出版された。

 

 

 

「恋愛ソングを脳内で勝手に推しCPのものとして変換する」とか「好きなシーンや人に見せたいシーン があったらそのページに付箋を貼る」とか「友達に話しているオススメアニメの内容が公式だったか自 分の妄想だったかpixivで見た奴だったか思い出せない」とか。まずオタクあるあるとして秀逸で面白い。他にも「ハンガーに推しキャラを書いた厚紙を貼ってそれを膝に挟んで腹筋すると推しキャラに補助してもらってるように感じる」「公式の身長設定から測定した高さの壁面にマスキングテープを貼って、実際にそのキャラが目の前にいたら自分はこれだけ見上げていことになるというのを実感する」とか、後半になるとどんどん「細かすぎて伝わらないオタクあるある選手権」の様相を呈していく。

 

近年はアニメひとつとっても声優のライブだったり聖地巡礼だったりコンビニとのコラボ商品だったり 公式から提供される楽しみ方が多様化しているけれど、それ以上に自分たちで色んな楽しみ方を見つけられるのがすごいなーというか、逆に考えるとこういう人たちの行動力に様々なイベントやグッズは支えられているんだなと思う。自分も見習いたい。

 


 またその行動と結果としての楽しさを分かち合うオタク友達である、「Mちゃん」(アニメ化したらCVはベッタベタと言われようと永遠の女子大生声優花澤香菜さんでお願いします!)や「オカザキさん」とのやり取りも毎回和まずにはいられない。好きなキャラで「学校へいこう!」の未成年の主張コーナーを実演してみたらちゃんと合いの手を入れてくれるMちゃんのくだりは、どの趣味でも、その楽しさを共有できるどころか一緒に作っていく友人というのはありがたいもんだよなあと再認識させられる。

 

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開場時間や交通事情等の問題があるわけでもないのに、家で遊ぶのにAM0930集合というのも、きみらそんなに一緒にいたいのか!感を加速させる。いやだって休日だったら朝アニメ観られないじゃん!

 

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そんな感じで基本的に終始楽しいエッセイなので、普段は温和なオカザキさんが自分の趣味を侮辱されたと感じて「一般人」の友人に激昂するシーンは、「孤独のグルメ」のアームロック回を読んでいるようでなかなか辛いものがある。が、その後ちゃんとその友人と和解していて、オタクにありがちな「一般人」を必要以上に自分たちとは違うものとして描きたがる癖が苦手な人間としてはホッとした。

 

 

「つづ井さん」や「Mちゃん」はこの春に大学を卒業して社会人になるらしい。どうか彼女たちが、環境が変わってもいいオタク友達でいられますように。

 

以下はひとつの出版物としての評価。表紙や画像サンプルを見れば分かる通り画面が全体的に白く一見ラフな線で描かれている、というのは商業化を前提としていなかった作品の常ではあるけど、漫画力が高いので自分は全く気にならなかった。「50ページ以上の書き下ろし」もいつもと違う発表媒体だからと変に気取ることなくいつも通りでいい感じ。不満を挙げるとするなら、実書籍だと外側の余白がなくてやや読みづらい点。

 

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また細かい言い回しが何点か修正されていて、特に「公式設定だったか自分の妄想だったかピクシブで見たやつだったか思い出してる」という初出の文章が、「公式だったか妄想だったか思い出してる」になっている点が気になる。かえって語呂悪くなってませんか……?

 

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