周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

石川博品「メロディ・リリック・アイドル・マジック」 国民的アイドル VS 野良アイドル

子供があくまで子供のまま大人の世界にコミットすることを求められ、しかし「仕事」をしていく中で否応なしに成長する/させられる*1。これを、アイドルが描かれた物語の一つの類型だと考える。その場合、子供の世界の狭さ、大人の世界の広さを強調したほう…

猫に説教される底辺ラノベ作家(33)~心にしみる私小説「先生とそのお布団」、カクヨムで公開中

角川が小説投稿サイト「カクヨム」を立ち上げて、約二ヶ月が経過した。オープン初日にプロ作家であるろくごまるにが、角川(富士見書房)の編集上の不手際を糾弾する文章をあげてから*1、一時はすっかりそういった作品の発表の場として人気を得てしまった感…

野球が全てのアラビア風ファンタジーハレム 石川博品『後宮楽園球場』

2013年、新潮社の日本ファンタジーノベル大賞が惜しまれつつも休止を発表した。 www.shinchosha.co.jp 本作を読んでその第1回大賞受賞作である酒見賢一『後宮小説』を連想したのは、恐らくはそんなタイミングと、わたし自身の知見不足もあってのことだろう。…

真面目系クズの心をえぐる甘々学生夫婦生活 石川博品『アクマノツマ』

この「アクマノツマ」は、恐らくは太宰の「ヴィヨンの妻」のオマージュでもあろう*1、駄目人間主人公と天使のような悪魔兼女子高生という夫婦の、8割方甘々な日常を描いた小説だ。商業作家である石川博品が同人作品として発表したものだが、現在はkindleで…

女子校に対する幻想とか現実とかどうでもよくなる一冊 石川博品『四人制姉妹百合物帳』

有名なお嬢様学校――閖村学園高校には“サロン”と呼ばれる友愛組織が存在する。そこに集う生徒たちは姉妹のように睦み合う。 御厨杜理子、佐用島紗智、時岡有希奈ら上級生をメンバーとし、「森」の図書館の一室でひっそりと活動している高踏的サロン「百合種(…