ずっと好きだった原作が掘り起こされて再アニメ化する際に望む三つのこと
過去に一度アニメ化したものの「続編」や「リメイク」じゃなくて、「再アニメ化」の話です。過去のアニメとは無関係のやつです。
無理に全部やろうとしなくていい
以前のアニメはオリジナル要素が多かったから、今度は原作に忠実に……というパターンをよく見かける。じゃあなんで前回そうなったかというと、その時点では原作の分量が足りなかったとか、原作が完結してなかったけどアニメはアニメで一度終わらせる必要があったとか、そんな理由っぽい。
しかし、10年、20年経って再アニメされるような作品は、その後も巻数を重ねて大長編になっていることが多い。そうなると、今度はアニメの方が十分な尺を用意できない。ただでさえ1クールが基本のご時世だ。最盛期を過ぎた原作をアニメ化するっていうだけでも既に大博打だろう。
そういう時、もうこんな機会二度とないだろうからと、多少無理してでも今ある原作を全部やるのか。あくまで作品としての出来を重視してやれるところまでやって、二期に繋ぐのか。私は後者を支持する。最初から最後まで映像化することそれ自体がアニメの目的と化して、ダイジェストにはなってほしくはない。どこまでが無理な端折り方になるのかは意見が別れるところだろうけど……
断腸の思いでエピソードを厳選するのも一つの手ではある。劇場版「攻殻機動隊GITS」や「スプリガン」みたいに特定の話だけ映画にしてもいい。ただ、いきなり劇場版というのは新規ファンも期待できなさそうだし、それはそれでハードルが高そうだ。
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TVシリーズなら、今やってる「ブギーポップ」は全18話で4冊分5エピソード。このくらいがギリギリだと思う*1。16巻を2クールできれいにまとめあげた「魔法陣グルグル」は奇跡のバランス過ぎた*2。ほんとどうやったらあんな芸当が成立するのか。ギャグは多少ちょっぱやでやるくらいのほうがケツカッチンにならないとはいえ……
声優は基本的に全取っ替えしてほしい
これは以前のアニメが気に入ったかどうか、声優が役にハマってたかに関係なく、そうしてほしいと思っている。
漫画やラノベのキャラクターには、元々声優は設定されていない。仮に作者が「アニメ化したらナントカさんに演じてもらいたいな……」と妄想してたとして、それはあくまで作者だけのものだ。あとがき辺りでそれを公言したところで、実際の発声はそれとは違ってくるものだし、読者の想像と一致するとも限らない。
アニメやドラマCDになって初めて、ジッサイの声帯が移植される。アニメ化に当たっての声優起用は、あくまでそのアニメのためのキャスティングだ、というのが私の考えだ。原作キャラは原作キャラ、アニメキャラはアニメキャラ。両者は全く別の存在だ*3。
これはもうアニメがどんだけ原作に忠実にやったとしても、メディアが違う時点でそうなるのは避けられない。このキャラにはこの声優しか考えられない、というのは音声つきメディア本位の主張だと思う。あ、そのアニメ準拠の派生作品とかは別にしてね。
メディアによってアフレコの仕方も異なる。例えばアニメではスケジュールの都合がつく限り同じエピソードに出演する声優が一同に介するが、ゲームでは別録りが基本だ。他の演者と実際に顔をつっつき合わせての芝居を得意とする人とそうでない人の違いは出てくる。同じ作品でもアニメで活き活きとした演技をする人が、ゲームだと虚無芝居を披露したりする。
だから、アニメ化以前のドラマCDから声優の交代があってもそういうもんかと受け入れる。
同じアニメでも「再アニメ化」の場合、旧作と新作は本質的に関係ない。というかそうでなきゃ意味がない*4。ただ原作を同じくしているだけだ。
そういう点では、再アニメ化に当たり原作者自ら「もう一度最初からアニメ化するなら同じことやったってしゃーないじゃん」とスタッフ・キャストを一新させた「フルーツバスケット」を私は支持している。高屋奈月先生ありがとう。
ですので、一番最初にいくつかの要望をだしました。
その中のひとつは、すべて新しいメンバーで作ってください。です。
すべて。すべてをです。
閉じた幕をもう一度開けたいというのならば、
新しく、新しいすべてで世界を再構築してくださいと。
そういえば今度再アニメ化される「オーフェン」は、主演の森久保祥太郎については再起用が決定している。アニメの前に原作「はぐれ旅」を全編氏による朗読劇として配信するというが、これは以前の原作とはかけ離れたアニオーフェンを吹っ切って、原作に忠実に生まれ変わったネオ主人公を演じるための予習みたいなものだろうか。

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あと声優全取っ替えを積極的に望むのには全く自分勝手な理由もあって。キャリアがまだ浅い声優が年経た作品のキャラクターに声を当てるという現象に為す術もなくウオーって喝采上げちゃうタチなんですよね。今でもアニメや漫画の中でブルマが現役なのってそういう理由もあると思う。その人が生まれた時には既にこの世にあって同じ年月を経てきたもの、あるいは亡びつつあったものを着る。演じる。歌う。それ自体がエモいんだと。
アッでも「沢山の人に愛されてる歴史ある作品に関わることができて光栄です」みたいなコメントは別にいいです。口を揃えてそう言ってる人らがそれまで誰一人として読んでなかったりすると、う、うう……ってなるので*5。
広報やグッズ展開はどれだけはっちゃけてもよい
もし仮にアニメ化されたら、どういうグッズが出るのだろう。ソシャゲは出るのか。やっぱりあのキャラはSSRになるのか。抱き枕になるのか。コラボカフェは開催されるのか。完結or人気の最盛期が過ぎて公式の供給が途絶えたファンは、そうした妄想をすることで糊口をしのぐ。
10年、20年をそうしてやり過ごしてきた私たちにとって、アニメ化はそうした妄想が実現する、もう二度と来ないかもしれないお祭りである。乗るしかねえこのビッグウェーブにとばかり各種の展開に食らいつく。多少キャラが崩壊してるくらいのグッズ展開や広報もご愛嬌。もちろん本編は真面目に作ってもらいたいが、これらに関しては、多少原作の雰囲気から外れたものであろうと許容できる。というかいっそ的外れくらいに現代ナイズされてるほうが、ああ、確かに2019年にアニメ化されてるんだ――というギャップで泣きながらゲラゲラ笑える。
ブギーポップがCMで「竹田くん、ブギーポップは笑わないのブルーレイが出るよ」と宣伝してもいい。これは私が望んだ未来だ。