周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

マジカルユミナ(花守ゆみり)と声優が名前を出してvtuberすること

マジカルユミナは、「LoveR」というギャルゲー(PS4)の販促のために生まれた。ゲーム本編に登場する主人公の妹「優美菜」を元にした、バーチャルシスターだ。彼女はお兄ちゃんの理想の芸人妹になるべく、制作サイドの無茶ぶりに応え、バーチャルyoutuberとして視聴者と交流することで、日々研鑽を積んでいる。「マジカル」要素は衣装以外にはない。


www.onsen.ag


声優としてモーション担当として優美菜/ユミナを「演じて」いるのは、若手人気声優・花守ゆみり。代表作に「ゆるキャン△各務原なでしこ、「かぐや様は告らせたい」早坂などがある。

優美菜orユミナorゆみりの今日もお兄ちゃんねる♪


ユミナ:ゆみりは公然の秘密ですらなく、動画内でも、右上に「CV&ACT:花守ゆみり」とテロップが表示されている。でもお便りで花守さんこんばんはって書くと花守さん? 誰かな~? って返してくれるし、一応花守ゆみりユミナに声と動きがよく似てる人、ということになってるような、でもガバガバ設定のような……その辺の茶番も楽しみの一つだ。


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https://www.youtube.com/watch?v=K4jJ1x2iaWw


そもそもゲーム内の「優美菜」は15歳だけど、彼女を元にした「ユミナ」はなぜか9歳の姿。ユミナはこの設定をいいことに、ゲームとは違った立ち位置を獲得している。


性格も、優美菜は兄に対してぐいぐい迫る、ギャルゲーらしい肉食系妹だけど、ユミナの方はプレゼントに欲しいものって言われて「土地」って答えたり、やたらと足癖が悪くてすぐにお兄ちゃんに蹴りをかましたり、フォークで刺したり、他のヒロインとのフォトセッション実況*1でキモオタムーヴかましたり。やりたい放題の悪ガキ感あるいはおっさん感はある。


オタクの間では、「中にゆみりちゃんが入ってない本編の優美菜を私たちは愛せるのか*2」「ユミナの方を攻略したい」、というのは喫緊の課題であった。それほどにユミナのキャラは強かった。


ユミナのキャラについては、ラジオなどでも垣間見られるゆみりちゃんの素が出ているのだと言われるけれど、さてどうだろう。それもまた演じているのではないかという気がする。声優に限らず人間は誰でも他人の前では様々なペルソナを使い分け云々……。


マジカルユミナ会心の動画は、「LoveR」の優美菜ルートをユミナとしてプレイしてみるものだろう。自分の似姿が攻略されるギャルゲーをプレイして奇声を上げるユミナ。画面上ではユミナと、優美菜と、ゆみりとがそれぞれの存在をかけて押し合いへし合い殴り合い。三人がごっちゃになったカオスが現出している。


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https://www.youtube.com/watch?v=yBKaXN0jF6o


それでも、大元は花守ゆみりという一人の声優だ。動画冒頭のクレジットがそれを再認識させてくれる。……このVtuberの演者の名前が公表されている」という事実に、心のどこかで気楽さを感じている自分がいる

Vtuberの魂とガワの問題


Vtuberは、アニメやゲームのキャラクター以上に演者もとい魂とアバターもといガワの境界が曖昧だ。そのキャラクターが実在すること前提で、「中の人などいない」を地でいっている……というのはよく言われるところ。


とはいえ、特にこれといった決まりがあるわけではないので、その辺りの距離感はそれぞれバラバラだ。

  • キズナアイはインテリジェントなスーパーAIである。
  • 月ノ美兎はキャラ設定を守れという声に対して「これがバーチャルyoutuberなんだよなあ」と返し、以降はどんどん魂を前面に押し出して、ガワを自分色に染め上げた。
  • コンビニ店員から技術者に転職したのじゃロリおじさんことねこますは、動画配信の際のアバターであるみここさんとは別の存在である。
  • 複数の候補者が同じガワで配信スタートしてその中から一人魂を選ぶvtuberオーディションは、バーチャル蟲毒と称された。


こういった事例以外に、サポートする運営がいる為企業勢と個人勢でもまた立場は違ってくるだろう。そして演者同様、視聴者の姿勢も異なる。

Vのオタクのめんどうな内面


私は……私も、基本的には中の人などいない、という立場を取りたい。彼ら彼女らが交換不可能な実在する人だと認識することで、親近感が強まる。アイマスのオタクなんかは時々「アイマスPはアイマス声優にアイマスキャラ以外をやってほしくないからコンテンツに囲いたがる」と揶揄されることがあるけれど、正直それに近い気持ちは持ってると思う。


しかし、私は生来、他人との距離感を図るのが得意な方ではない。そうやって彼彼女という一個人にどんどん入れ込んでいって、応援して……それは紛れもなく楽しいことなのだけれど……その先は、色々とこじらせてしまいそうになる。推しが一人ならまだいい。二人、三人……と増えていくともう収拾がつかない。


他方、マジカルユミナは、「LoveR」の販促の手段だ。こういう言い方をするとアレだが、花守ゆみりにとっては、この作品自体――声優としては少々特殊なものの――数ある仕事の一つに過ぎないだろう。


panora.tokyo

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「CV&ACT:花守ゆみり」という文字列を見る度、私はそれを思い出し、ユミナと適切な距離感を保つことができる。youtubeチャンネルの登録数*3や再生数が多少増減しても、ゆみりちゃんの人生は大きく変わらないだろうと思えるから。


実名を出してないVtuberでもそうかもしれない。趣味でやってる人、仕事でやってる人、暇つぶしでやってる人、人生かけてる人。数字にガチな人とそうでもない人。色々いるだろう。ただ、私たちが魂と直接的に接することはほとんどないもんだから、そういった事情を想像はできても、実感することが難しい。結果、私たちの目の前の、Vtuber戦国時代において必死でバズろうとする姿に、共感し過ぎ、前のめりになり過ぎてしまう。当然、これは全く私個人の問題ではある。


その点、ゆみりちゃんは以前から知っていたしあっちこっちで他の仕事を目にするので、ユミナとゆみりを切り離して考えることができる。できている、と思う。


そういうことでグダグダ言うなら最初から普通のアニメ観ればいいじゃんて? でもやっぱり楽しいんだよV。だからVの疲れはVで癒やしてまたVを観るんだ。


あと声優って元々俳優から枝分かれした職業なわけで。声優の身体性問題っていうのは、声オタならば当たり前に思いの馳せるところではあります。そういう意味で、声だけでなく身体全体でキャラクターを表現し、その成果をオタクが視聴することのできるvtuberは声オタとしても見逃せません*4。関係ないけど声優実写コンテンツとしては内田真礼の「まあやお姉さんの今日もがんばれ!」が好きでした。

まとまらない


現在、vtuberの活動範囲はyoutubeに留まらず他の配信サイトやテレビ番組、リアルライブなど多岐にわたる。バズろうとするためにはtwitter芸も欠かせない。必ずしもバーチャルyoutuberと呼ぶのが相応しくない、こうした流れに対して、海外の事例を持ってきて「virtual being」と呼んだらどうかという声が挙がったのを見かけた。ギーク受けしそうなキレのある表現だ。


一方では、ジャニーズ事務所vtuber秋元康のプロデュースしているアイドルグループ「22/7」は、ユミナ同様最初から中の人を公開している。芸能関係が最近流行りのvuberという形を自分のところで使ってみようと思えば、こういう風にもなるだろう。彼らにとってバーチャルとはあくまで手段であって目的ではないのだろう。こういったパターンには「virtual being」という表現はそぐわないような気もする。


一視聴者としては前者はより深く、後者はより気楽に。私としてはどっちの流れもありだと思うし、声優の名前出してるマジカルユミナ花守ゆみり)でもいつか他の名前出してないVとコラボしたりしてくれないかなって思う。もっとわがまま言うと販促期間が終わっても続いてほしいです。具体的には、私のお便りが採用されるまで。角川ゲームスさん何卒よろしくおねがいします。


*1:「LoveR」はヒロインの写真を撮って楽しむゲームです

*2:声のみ花守

*3:そもそもユミナは発売元であるカドカワのチャンネルで配信しているので彼女自身のチャンネルは持ってないのだけど

*4:声優がやってる舞台とかに行かないのは単に趣味とタイミングの問題