「本好きの下剋上」第一部(書籍版)を読んだ
ビブリオマニアの女子大生が本のない異世界に転生したことで絶望し、自分で本を生み出そうとする。この物語の面白さの一つはもちろん、紙を作るところからスタートする本作りの描写だ。この小説を読んでいると、日頃何気なく手に取っている本が途方も無い技術の結晶であることを実感できる。
しかしそれだけではない。異世界に転生した主人公マインが最初にしたことは何だったか。紙の原料となる木の選定? 違う。彼女が最初に直面せざるをえなかった問題は、現代日本では考えられない現地の衛生観念の欠如だった。一体、一巻だけでどれだけ「臭い」という言葉が連呼されただろうか。この世界の一般市民は風呂にも滅多に入らない。転生先の家族は悪い人ではないが、これでは端的に言って近寄り難い。だから彼女はシャンプーを発明するなどして、せめて自分の周囲の住環境だけでも整えようとする。それがいつしか莫大な商業的価値を産むことに気づき、手作りの髪飾りやお菓子などにも手を広げることで、彼女の糧となっていく。これもまた第一部の主軸ではある。
続きを読むアニメ化記念公式グッズ・ダイキャスト武器「オーフェンの魔剣」の謎
二〇年ぶりの再アニメ化に、ラノベ「魔術士オーフェン」が盛り上がっている。……少なくとも盛り上げようという気概は感じられる。
放送開始は二〇二〇年一月だが、池袋となんばでは、公式グッズを扱う期間限定ショップがいち早くオープン。アニメ名物「絵の中の状況がいまいち掴めない謎版権イラスト」を使ったグッズが発売されて、「本当にアニメ化するんだなあ」という実感がようやく湧いてくるなどした。中でも注目すべきは、ショップ公式アカウントが「オーフェンの魔剣」と呼ぶ「ダイキャスト武器」¥5,500(税別)。なにせこのグッズ、原作読者の誰一人としてその由来が分からず、「オーフェンの魔剣ってなんだ……?」と困惑している代物なのだ。
寸法はW40mm×H140mm。せっかくだからと思ってアニメ試写会の物販で購入してみたが、やはりその正体は謎のまま。刀身に彫られた文字列は魔術文字かと思ったらただの版権表記だった。放送に先んじて*1商品化されたアニメオリジナルの魔剣、というのが無難な落とし所だろうが、サクッと無視して色んな可能性を考えてみたい。
*1:というかアニメの放送が遅れたために本来同時進行だったはずの周辺展開が核のアニメに先行してるともっぱらの噂。私の中で
ラブコメ漫画の二極化 恋のシーソーゲームとヒロインレースの競技性
男性向けラブコメ漫画の楽しみ方って、ここ数年で二極化してると思うんですよね。自分の中で。
一対一のレクリエーションラブコメ
一つは「からかい上手の高木さん」や「僕の心のヤバいやつ」「かぐや様は告らせたい(初期」「保安官エヴァンスの嘘」など、付き合ってない男女が、日常に溢れるちょっとした遊びやらなんやらの中で恋のシーソーゲームを繰り広げるやつ。主導権をどっちが握ってるのか、両想いなのかなどは作品にもよる。勝ち負けはさして重要ではない。レクリエーションラブコメ、シチュエーションラブコメとでも言おうか。これにSF (すこしふしぎ)要素を足すと「上野さんは不器用」になる。なるか? なるんだよ。
登場人物が増えても、メインの男女cpが対称関係であることは変わらず。二人の間に余人が入り込む余地はない。それは読者も同じだ。私達は延々続く遊びと書いてイチャイチャと読むやつを見せつけられ、最終的には砂糖の柱になって死ぬ。
私がこの手の作品を最初に意識したのは、入間人間のラノベ「多摩湖さんと黄鶏くん」だった。これが2010年なんで、もう随分長いブームだなと感じてる。
女の子たちが主人公をめぐって切磋琢磨するヒロインレース
そしてもう一つは、ルール無用のヒロインレースを楽しむハーレムラブコメ。「ぼくたちは勉強ができない」の中盤くらいまでは、一、二週替わりで各ヒロインの渾身のエピソードが続く。読者はどのヒロインにベットするかで毎週掌を返してると言われるくらい、予測不能のヒロインレースだった。
ぼくたちは勉強ができない 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
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今は人気投票で桐須先生がぶっちぎりだったこともあり誰が一着か分からない混線模様からは抜け出してる(と思う)けど、途中参戦の教師ヒロインが勝てるのか? といった懸念も根強く、状況はまだまだ予断を許さない。私の一推しは妹の水希ちゃんです。
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