周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

2019年台風19号一日避難所生活記 in 東京都某市小学校体育館

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10月12日10時から翌5時30分くらいまで、一人で避難所にいた記録です。備忘録代わりに。避難所によって状況はいくらでも変わってくると思います。

避難するまで


カナスピカ (講談社文庫)

カナスピカ (講談社文庫)


  • 今回、避難所に逃げることは前もってほぼ決めていた。ボロアパート住まいで、いつ屋根が飛ぶか分からないという具体的な危険、そしてその不安に台風が通り過ぎるまでまんじりとせず耐えなきゃいけないという状況から逃れたかった。人のいるところで安心を得たかった。怖かろう……悔しかろう……たとえ窓を補強しようとも、心の弱さは守れないのだ! 基本的に孤独には強いつもりだったんだけどなー……
  • 群馬の実家に帰省するという選択肢もあるにはあった。でも、いざという時、アパートから荷物を引っ張り出せなくなるのが怖かった。
  • なので、上陸予想の前日までにそれなり準備もしていた。窓のダンボール貼り、トイレは逆流に備えて45リットルのゴミ袋で覆っておく、テレビは台から下ろして布団サイズの収納袋で覆う。自転車は無理やり玄関に入れたけど、完全に出入りを阻害してたので緊急時にはよくないかも。
  • 避難所に持っていったのは食料、水、着替え、常備薬、ウェットティッシュなど。ろうそくも100均で購入したけど燭台は置いてなかったので無意味。電子機器としてはスマホタブレット、モバイルバッテリー。メインPCのノートは15インチサイズで雨の中徒歩で持っていくにはちょっと辛いので、各種データが詰まったポータブルHDDも。これは現地で何に使うわけでもないけど。他にPC持ってきてる人はいたので、避難生活が長期化したら男性陣にエロ動画提供ワンチャンあったか……?
  • 災害としての台風は、地震などと比べればいつ頃風雨が強くなるかなど予測がつくのが不幸中の幸い。避難所も前もって上陸当日午前中の開設が予告されていた。朝起きて、その先いつ水道と電気が駄目になるか分からなかったので、まずは朝シャン。次いで朝食を摂る。アイカツオンパレード!」(1030-)を観てから出発しようとも思ったが、避難所開設が一時間早まり警戒レベル3:高齢者などの避難勧告が出たこともあり、早めに出発。冷蔵庫以外の電源は切ってから家を出たので、残念ながら録画もできず。youtubeの放送直後無料配信は助かった。
  • 私が住んでるのは氾濫の可能性ある河川の近くなので(アパート自体は比較的高台に建ってるけど)、最寄りの目をつけてた避難所は、今回浸水の恐れアリとして開設されず。それ以外では15-20分徒歩圏内に二つ。どちらも行ったことはない――というかその位置に学校があることすら今回初めて知ったという条件は同じなので、単純に高台にあるほうを選んだ。
  • 秋田禎信の小説『カナスピカ』で、「学校が高台にあると普段通う子どもたちからは不満ばかりだけど、河川の氾濫被害から子どもたちを守るために高台に建てられている」と言われていたのを思い出す。

避難所の様子



  • 自転車用のヘルメットをかぶっていざ出発。途中ちょっと迷いつつ学校にたどり着いて、門が開いてないのを見たときは焦った。「あれ、避難所間違えた!? それともまだ開設されてないだけ!?」とりあえず周囲をぐるりと回ってみると、グラウンドから入る門を開放してないだけで、駐車場と体育館の入り口に面した門は開いていた。こういうことがあるから初めて行く場所は怖い……
  • 体育館に入ってみると、いるのは市役所の若い男性職員が二名(後で五名くらいに増えた)と、壇上の小さなテレビを観てるご高齢の女性が一名。どうやら気合い入りすぎてさいまえをゲットしてしまったようだ。床に敷く段ボールをもらって、壁際に陣取る。後で毛布と乾パンが配布された。夕食時には少ないながらカップ麺のためのお湯も。ラーメンのスープの残りとか湯切りが必要なカップ焼きそばとかは後処理に困っていた。体育館なので、大量のパイプ椅子もあった。
  • 10時時点では私とその女性含めて二名だったのが、三時間後には100名、最終的には夜までに200名超えたのかな? 土地柄大学生も多いと思うのだけど、全体的に私のような独身者は少なかった気がする。人といないと避難しようという気が薄れるのだろうか。カップルが抱き合って寝てるのは目に毒だった。終始二人の世界を作ってたけど、大学サークルの名前入ったTシャツ着てあれは剛毅すぎんか……。お隣は最初赤ちゃん含めた三世代のご家族五名だったのだけど、やがて校舎(こっちは基本的に立入禁止だった)の方に赤ちゃん連れのためのスペースを用意してもらって去っていった。男子トイレは小便器一つに大便器一つで女子トイレも似たようなものだろうから、さすがに女子の方は混んでた。
  • うちの地区では15時過ぎで収容人数いっぱいで受け入れ困難な避難所が出始めてたので、もし避難するなら出発する前に行政の公式サイトやTwitterを確認したほうがいいです。あるいはその時点での収容人数が掲載されてるかも。
  • 館内のスペースはまず壁際のぐるり、それから演壇に近い方つまり入り口から見て奥のほうが埋まっていった。台風の場合、外に近い壁際はかえって危険だと思うのだけど……最初に壁際に腰おろした自分が言うことでもないけど……周囲360度のうちせめて半分くらいは他人の目線を受けたくないみたいな心理かな。
  • 結構みんなバラバラにスペース作ってたので、もう少し人が増えたら区画整理が必要だっただろう。きちんと列作って同じ向きで寝るとかね。都市計画って大事。
  • 避難所での過ごし方は人それぞれ。ここで知り合って話してる女性陣、壇上でバランスボールで遊んでる子どもたち、『五等分の花嫁』のコミックス全巻(多分)を持ち込んで読んでる人……。意外にテレビを観てる人が少なかったのは台風関連の番組ばかりで飽きたのか、ディスプレイが小さかったからか。一番多かったのはやっぱりスマホ観てる人かな。
  • 私はというと、主に家から持ってきた二冊の文庫本を読んでいた。「オーフェン」シリーズの、11月に舞台化される巻だ。基本的に自分は外では周囲の雑音とかが気になってイヤホンなしに本を読めない人間なんだけど(スマホは買い替えたばっかりだったので通信容量気にせずオフラインで聴ける音楽が入ってなかった)、何度も読んでいる本は容易に内容に没入できるので助かる。で、感想メモをfire HD 8につけたりしていた。このタブはwi-fiオンリーの機種で、避難所ではスタンドアロンの板きれに過ぎないので、かえって電源の心配なく使える。文章を書いていれば気を紛らせられるオタクでよかった。
  • スマホはバッテリー温存のためになるべく使わないつもりだったんだけど、結局いつも通りFGOの周回をこなしてしまった。さすがにイベントは走らなかったけれど。平常時と同じことしてると落ち着くねん……。
  • 避難所の居心地は、体育館は唯一の出入り口以外窓も締め切ってるし10月にしては気温も高いので蒸し暑かった。学校の備品だろう冷風扇(給水しようとしたら水漏れしてた)を使ってたけど、人が多いのでなかなか。来る時にずぶ濡れになったジーンズやシャツ、レインコートは最後まで乾かなかった。同様の理由で空気の循環もよくない。のど飴やマスク持ってくればよかった。子供がドタバタ遊んでほこりを立てるのも本音を言えば勘弁してほしかったけど、体育館で走り回るなというのもおかしな話ではあるし、それで雰囲気が明るくなるなら空気くらい我慢しよう。
  • 緊急速報メールが何度も一斉に鳴ってたけど、避難所にみんなでいる以上はあまり意味ないよね。途中で設定でオフにしたけど、周囲で鳴ってたらこれもあまり意味なかった。
  • 段ボール一枚の上に座ると当然ケツは痛くなるけど、パイプ椅子があれば起きてる内はまあ。それよりずっとひとところにいるのが苦痛だったので、2、3時間ごとにロビーまで出ていってラジオ体操したり。何度か役所の人に荷物運びなどを頼まれたのは渡りに船だったので、私以外の人も嬉々として参加していた
  • 消灯は22時。さすがに体育館の床は段ボール一枚敷いて寝るにはきつい。毛布でミイラみたいに体をぐるぐる巻きにして少しでも固さ対策を施して、いい香りの柔軟剤を使ったタオルをアイマスク代わりに顔にかけることで緊張を和らげたが、どうにも寝つけず。一時間置きくらいに目を覚ましてしまった。体育館だと誰かがトイレに行くだけでも結構音が響くしな……。
  • 一度短い停電があった以外は、避難所への被害は特にありませんでした。

一夜明けて

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  • 台風自体は日付が変わる頃には通り過ぎ、雨もやんでいた。近所の人なんかはその時点で帰る姿もちらほら。私は暗い時間に帰ると足元が怖いのと、家で何か被害があったり停電してたりする場合暗い中で作業したくないので、日の出を待ってから避難所を出た。既に地面は乾きつつあり、水はけのよさを認識した。
  • 家に帰り着いてから、台所側の窓の鍵を締め忘れてたことに気づいた。エアコンや換気扇に目張りまでしてたのに意外なところを忘れていた……。特に被害らしい被害はなく、氾濫の恐れ大だった川もギリギリで持ちこたえてくれた。
  • 一夜避難所にいて。当たり前だけど小中学校って本来、市役所の人が働いてる職場じゃないんだよなー。日頃から色々想定はしてるだろうしこういう見方はかえって失礼かもしれないけど、彼らも不慣れな場所で事に当たってくれてるというのを考えて接するということは、まああってもいい。そんなことを考えました。今回対応に当たってくれた方々には深く感謝します。避難者にはATフィールド強めの人もいたけど、職員が話してるときくらいはスマホから目をあげよう。今まで自分がいたスペースの近くで何らかの作業を始めたときは場所をちょっと空けてあげよう。