Vtuberドラマ「四月一日さん家の」Wプロデューサー講演会のメモ
4月11日、GREEによる「VRSionUp」というVR技術の研究会? で「バーチャルYouTuberドラマ『#四月一日さん家の』誕生秘話~色々あって、ここまで来ました。」という講演の場が持たれた。
これはテレビ東京初のVtuberドラマ「四月一日さん家の」に関するもので、テレ東のプロデューサー:五箇公貴と、VR技術を担当した株式会社ハローのP:赤津慧の二名を招いたもの。
「四月一日さん家の」の主演はときのそら、響木アオ、そしてVtuberとしては新人の猿楽町双葉。キャストだけのあるいはキャストを交えてのトークというのはこれまでもあったしこれからもあるだろうけど、この組み合わせは結構稀じゃなかろうか。
当日の講演の様子はyoutube liveでも配信されていた。全くの門外漢の私も視聴することができた。アーカイヴもあるが結構長いので、メモを残しておく。なお私は技術的なことに関しては全く無知です。
製作経緯
- テレ東の五箇Pが、電脳少女シロちゃんの番組「サイキ道」(テレビ朝日)に関わっている構成作家の酒井健作さん(「四月一日さん家の」にも参加)と話していて、何かVtuberの企画をやりたいということになった。
- テレ東の上層部もVを認識しだした頃だったので、軽く企画を出したらすぐやれと言われた。普通もうちょっと予算とか聞くだろ! テレ東ってすげえざくっとしてんなと思った。
- ただしテレ東はVのノウハウがないので、株式会社ハローの赤津Pに話を持っていった。赤津Pの方は、当時Vでストーリー性のある何かをやりたいと思っていたので思惑が合致した。
- 予算は普通の1クール深夜ドラマくらいはかかっている。
- 企画が動き出してから放送までは10ヶ月ほど。3Dなどを扱ってる方には分かると思うが、この期間で1クール30分12本の映像制作はかなりタイト。その限られた期間で何をやるかが鍵だった。
- Vtuberのいる「空間」を大切にしたい、と考える中で、外に出て色んな所でロケして、背景を作り込んで……となっていくと普通の3DCGアニメと変わらなくなってしまうのではないか。そう考えて舞台が家の中に限定されるシチュエーションコメディにした。コスト的にもそれが向いていた。
- 具体的な事例としては「やっぱり猫が好き」「フルハウス」。若い人的には「みなみけ」を連想するかも。
森見登美彦をつくった100作
『文藝別冊:森見登美彦』より。一人の小説家、監督につき一作品のみ挙げています。
本誌では本人のコメントつき。
- 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』(岩崎書店)
- 佐藤さとる『だれも知らない小さな国』(講談社)
- 舟崎克彦『ぽっぺん先生と帰らずの沼』(筑摩書房)
- 那須正幹『あやうしズッコケ探検隊』(ポプラ社)
- A・A・ミルン 石井桃子:訳『くまのプーさん』(岩波少年文庫)
- ルイス・キャロル 生野幸吉:訳『鏡の国のアリス』(福音館書店)
- オトフリート・プロイスラー 中村浩三訳『大どろぼうホッツェンプロッツ』(偕成社)
- ミヒャエル・エンデ 上田真而子・佐藤真理子:訳『はてしない物語』(岩波書店)
- トーベ・ヤンソン 山室静:訳『楽しいムーミン一家』(青い鳥文庫)
- アーサー・コナン・ドイル 小林司・東山あかね:訳『シャーロック・ホームズの冒険』(河出書房新社)
- イエルク・シュタイナー イエルク・ミューラー おおしまかおり:訳『ぼくはくまのままでいたかったのに……』(ぽるぷ出版)
- ペーター・ニクル ピネッテ・シュレーダー 矢川澄子訳『ラ・タ・タ・タム』(岩波書店)
- ダニエル・デフォー 坂井晴彦:訳『ロビンソン・クルーソー』(福音館書店)
- ヒュー・ロフティング 井伏鱒二:訳『ドリトル先生アフリカゆき』(岩波少年文庫)
- ゆでたまご『キン肉マン』(集英社)
- 鳥山明『ドラゴンボール』(集英社)
- 『シャーロック・ホームズの冒険』
- 『名探偵ポワロ』
- 『ドラえもん のび太の魔界大冒険』
- 杉井ギザブロー『銀河鉄道の夜』
- 宮崎駿『天空の城ラピュタ』
- リチャード・ドナー『グーニーズ』
- ロバート・ゼメギス『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
- スティーブン・スピルバーグ『インディ・ジョーンズ』シリーズ
- ジョージ・ルーカス『スター・ウォーズ』シリーズ
- いとうせいこう『ノーライフキング』(新潮文庫)
- 椎名誠『哀愁の町に霧が降るのだ』(新潮文庫)
- 村上春樹『羊をめぐる冒険』(講談社文庫)
- 島田荘司『暗闇坂の人喰いの木』(講談社文庫)
- 京極夏彦『魍魎の匣』(講談社ノベルス)
- 綾辻行人『迷路館の殺人』(講談社文庫)
- 夢野久作『ドグラ・マグラ』(角川文庫)
- 横溝正史『獄門島』(角川文庫)
- 泉鏡花『高野聖』(角川文庫)
- ピーター・ラヴゼイ 山本やよい:訳『苦い林檎酒』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 星新一『進化した猿たち』(新潮文庫)
- H・P・ラヴクラフト 大西尹明:訳『インスマウスの影』(創元推理文庫『ラヴクラフト全集1』)
- スティーヴン・キング 小原美佐:訳『IT』(文藝春秋)
- チャールズ・ディケンズ 小池滋 石原裕子:訳『信号手』(岩波文庫『ディケンズ短編集』)
- 高橋留美子『めぞん一刻』(小学館)
- 山岸凉子『日出処の天子』(白泉社文庫)
- 山本直樹『フラグメンツ』(小学館『山本直樹著作集』)
- うすた京介『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(集英社)
- 押井守『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』アニメ映画
- 『こちらブルームーン探偵社』海外ドラマ
- 『やっぱり猫が好き』(テレビドラマ)
- テリー・ギリアム『バロン』
- デイビット・リンチ『ツイン・ピークス』
- ティム・バートン『バットマン・リターンズ』
- アレックス・プロヤス『スピリッツ・オブ・ジ・エア』
- 夏目漱石『吾輩は猫である』(新潮文庫)
- 太宰治『お伽草子』(新潮文庫)
- 織田作之助『郷愁』(ちくま文庫『聴雨・蛍 織田作之助短編集』)
- 中島敦『山月記』(ちくま文庫『中島敦全集1』)
- 内田百閒『冥途・旅順入城式』(岩波文庫)
- 梶井基次郎『闇の絵巻』(ちくま文庫『梶井基次郎全集』)
- 筒井康隆『敵』(新潮文庫)
- 恩田陸『六番目の小夜子』(新潮文庫)
- 伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』(新潮社)
- 岡本綺堂『青蛙堂鬼談』(ちくま文庫『岡本綺堂集 青蛙堂鬼談 怪奇探偵小説傑作集1』)
- 山田風太郎『人間臨終絵巻』(徳間書店)
- 森銃三『明治人物夜話』(講談社文庫)
- 佐藤哲也『イラハイ』(新潮文庫)
- 酒見賢一『後宮小説』(新潮文庫)
- 出久根達郎『古本奇譚』(新泉社)
- ジュール・ベルヌ 清水正和:訳『神秘の島』(福音館書店)
- フョードル・ドストエフスキー 工藤清一郎:訳『罪と罰』(新潮文庫)
- フィリップ・K・ディック 浅倉久志訳『高い城の男』(ハヤカワ文庫)
- 有栖川有栖『双頭の悪魔』(創元推理文庫)
- ウィリアム・フォークナー 藤平育子:訳『アブロサム、アブロサム!』(岩波文庫)
- 黒田硫黄『茄子』(講談社)
- 杉浦日向子『百物語』(新潮文庫)
- 萩尾望都『トーマの心臓』(小学館)
- 竹宮恵子『風と木の詩』(小学館)
- 庵野秀明『新世紀エヴァンゲリオン』
- 谷崎潤一郎『細雪』(中公文庫)
- 尾崎翠『第七官界彷徨』(河出文庫)
- 鶴見俊輔『日本の百年』(ちくま学芸文庫)
- 吉田健一『文学の楽しみ』(講談社文芸文庫)
- 伴 蒿蹊『近世畸人伝』(岩波文庫)
- 堀米庸三『正統と異端』(中公新書)
- 山口昌男『文化と両義性』(岩波現代文庫)
- 佐藤信夫『レトリック感覚』(講談社学術文庫)
- 幸田露伴『観画談』(ちくま文庫『幸田露伴集 怪談』)
- 井伏鱒二『山椒魚』(新潮文庫)
- 興津要:編『古典落語』(講談社文庫)
- アレクサンドル・デュマ 山内義雄:訳『モンテ・クリスト伯』(岩波文庫)
- スタニスワフ・レム 飯田規和:訳『ソラリスの陽のもとに』(ハヤカワ文庫)
- ジョセフ・コンラッド 黒原敏行『闇の奥』(光文社古典新訳文庫)
- フランツ・カフカ 池内紀:訳『城』(白水Uブックス)
- デイヴィッド・リンゼイ 中村保男:訳『憑かれた女』(サンリオSF文庫)
- G・K・チェスタトン 南條竹則:訳『木曜日だった男』(光文社古典新訳文庫『木曜日だった男 一つの悪夢』)
- 増田歩・松枝茂夫・常石茂:訳『中国怪異譚 聊斎志異』(平凡社)
- 豊島与志雄・佐藤正影・渡辺一夫・岡部正孝:訳『千一夜物語』(岩波文庫)
- 増田こうすけ『ギャグ漫画日和』(集英社)
- あずまきよひこ『よつばと!』(KADOKAWA)
- デビッド・フィンチャー『セブン』
- ピーター・ウィアー『トゥルーマン・ショー』
- サム・メンデス『アメリカン・ビューティー』
- ジョン・マッデン『恋に落ちたシェイクスピア』
- 終わりに
小学生時代
佐藤さとる『だれも知らない小さな国』(講談社)
だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1 (講談社文庫)
- 作者: 佐藤さとる,村上勉
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那須正幹『あやうしズッコケ探検隊』(ポプラ社)
あやうしズッコケ探険隊 それいけズッコケ三人組 (ズッコケ文庫)
- 作者: 那須正幹
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2018/04/27
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A・A・ミルン 石井桃子:訳『くまのプーさん』(岩波少年文庫)
- 作者: A.A.ミルン,E.H.シェパード,Alan Alexander Milne,Ernest Howard Shepard,石井桃子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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ルイス・キャロル 生野幸吉:訳『鏡の国のアリス』(福音館書店)
- 作者: ルイス・キャロル,ジョン・テニエル,Lewis Carroll,John Tenniel,生野幸吉
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オトフリート・プロイスラー 中村浩三訳『大どろぼうホッツェンプロッツ』(偕成社)
- 作者: オトフリート=プロイスラー,トリップ,中村浩三
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トーベ・ヤンソン 山室静:訳『楽しいムーミン一家』(青い鳥文庫)
- 作者: トーベ・ヤンソン,Tove Jansson,山室静
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アーサー・コナン・ドイル 小林司・東山あかね:訳『シャーロック・ホームズの冒険』(河出書房新社)
シャーロック・ホームズ全集3 シャーロック・ホームズの冒険 (河出文庫)
- 作者: アーサー・コナン・ドイル
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イエルク・シュタイナー イエルク・ミューラー おおしまかおり:訳『ぼくはくまのままでいたかったのに……』(ぽるぷ出版)
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ラ・タ・タ・タム―ちいさな機関車のふしぎな物語 (大型絵本)
- 作者: ペーター・ニクル,ビネッテ・シュレーダー,矢川澄子
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ダニエル・デフォー 坂井晴彦:訳『ロビンソン・クルーソー』(福音館書店)
- 作者: D.デフォー,B.ピカール,Daniel Defoe,Bernard Picart,坂井晴彦
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マジカルユミナ(花守ゆみり)と声優が名前を出してvtuberすること
マジカルユミナは、「LoveR」というギャルゲー(PS4)の販促のために生まれた。ゲーム本編に登場する主人公の妹「優美菜」を元にした、バーチャルシスターだ。彼女はお兄ちゃんの理想の芸人妹になるべく、制作サイドの無茶ぶりに応え、バーチャルyoutuberとして視聴者と交流することで、日々研鑽を積んでいる。「マジカル」要素は衣装以外にはない。
声優としてモーション担当として優美菜/ユミナを「演じて」いるのは、若手人気声優・花守ゆみり。代表作に「ゆるキャン△」各務原なでしこ、「かぐや様は告らせたい」早坂などがある。
優美菜orユミナorゆみりの今日もお兄ちゃんねる♪
ユミナ:ゆみりは公然の秘密ですらなく、動画内でも、右上に「CV&ACT:花守ゆみり」とテロップが表示されている。でもお便りで花守さんこんばんはって書くと花守さん? 誰かな~? って返してくれるし、一応花守ゆみりはユミナに声と動きがよく似てる人、ということになってるような、でもガバガバ設定のような……その辺の茶番も楽しみの一つだ。
そもそもゲーム内の「優美菜」は15歳だけど、彼女を元にした「ユミナ」はなぜか9歳の姿。ユミナはこの設定をいいことに、ゲームとは違った立ち位置を獲得している。
性格も、優美菜は兄に対してぐいぐい迫る、ギャルゲーらしい肉食系妹だけど、ユミナの方はプレゼントに欲しいものって言われて「土地」って答えたり、やたらと足癖が悪くてすぐにお兄ちゃんに蹴りをかましたり、フォークで刺したり、他のヒロインとのフォトセッション実況*1でキモオタムーヴかましたり。やりたい放題の悪ガキ感あるいはおっさん感はある。
オタクの間では、「中にゆみりちゃんが入ってない本編の優美菜を私たちは愛せるのか*2」「ユミナの方を攻略したい」、というのは喫緊の課題であった。それほどにユミナのキャラは強かった。
ユミナのキャラについては、ラジオなどでも垣間見られるゆみりちゃんの素が出ているのだと言われるけれど、さてどうだろう。それもまた演じているのではないかという気がする。声優に限らず人間は誰でも他人の前では様々なペルソナを使い分け云々……。
マジカルユミナの会心の動画は、「LoveR」の優美菜ルートをユミナとしてプレイしてみるものだろう。自分の似姿が攻略されるギャルゲーをプレイして奇声を上げるユミナ。画面上ではユミナと、優美菜と、ゆみりとがそれぞれの存在をかけて押し合いへし合い殴り合い。三人がごっちゃになったカオスが現出している。
それでも、大元は花守ゆみりという一人の声優だ。動画冒頭のクレジットがそれを再認識させてくれる。……この「Vtuberの演者の名前が公表されている」という事実に、心のどこかで気楽さを感じている自分がいる。
ずっと好きだった原作が掘り起こされて再アニメ化する際に望む三つのこと
過去に一度アニメ化したものの「続編」や「リメイク」じゃなくて、「再アニメ化」の話です。過去のアニメとは無関係のやつです。
- 無理に全部やろうとしなくていい
- 声優は基本的に全取っ替えしてほしい
- 広報やグッズ展開はどれだけはっちゃけてもよい
無理に全部やろうとしなくていい
以前のアニメはオリジナル要素が多かったから、今度は原作に忠実に……というパターンをよく見かける。じゃあなんで前回そうなったかというと、その時点では原作の分量が足りなかったとか、原作が完結してなかったけどアニメはアニメで一度終わらせる必要があったとか、そんな理由っぽい。
しかし、10年、20年経って再アニメされるような作品は、その後も巻数を重ねて大長編になっていることが多い。そうなると、今度はアニメの方が十分な尺を用意できない。ただでさえ1クールが基本のご時世だ。最盛期を過ぎた原作をアニメ化するっていうだけでも既に大博打だろう。
そういう時、もうこんな機会二度とないだろうからと、多少無理してでも今ある原作を全部やるのか。あくまで作品としての出来を重視してやれるところまでやって、二期に繋ぐのか。私は後者を支持する。最初から最後まで映像化することそれ自体がアニメの目的と化して、ダイジェストにはなってほしくはない。どこまでが無理な端折り方になるのかは意見が別れるところだろうけど……
断腸の思いでエピソードを厳選するのも一つの手ではある。劇場版「攻殻機動隊GITS」や「スプリガン」みたいに特定の話だけ映画にしてもいい。ただ、いきなり劇場版というのは新規ファンも期待できなさそうだし、それはそれでハードルが高そうだ。
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TVシリーズなら、今やってる「ブギーポップ」は全18話で4冊分5エピソード。このくらいがギリギリだと思う*1。16巻を2クールできれいにまとめあげた「魔法陣グルグル」は奇跡のバランス過ぎた*2。ほんとどうやったらあんな芸当が成立するのか。ギャグは多少ちょっぱやでやるくらいのほうがケツカッチンにならないとはいえ……
原作通りアニメ化してもファンに伝わらないことがある
上遠野浩平原作「ブギーポップは笑わない」(2019年版)の話です。「ブギーポップ」シリーズは現在新装版が何冊か出ててこれらは加筆修正されたものですが、以下の文章における引用は旧版を出典としています。
- もう長いこと原作小説を読んでない読者は記憶があやふやである/原作のどこの段階に忠実なのか
- 原作本文と原作イラストの矛盾
- 他作品とのクロスオーバー
- 大ヒットしたアニメはそれ自体が原作だと勘違いされる
- じゃあ2019年版は全部原作に忠実なのか?
もう長いこと原作小説を読んでない読者は記憶があやふやである/原作のどこの段階に忠実なのか
まず、「ブギーポップ」は20年前に刊行を開始した。現在もシリーズは続いているが、これだけ長いと途中で振り落とされたファンも多い。既刊22冊の内、12冊目『ジンクス・ショップへようこそ』(2003)か13冊目の『ロスト・メビウス』(2005)辺りが契機だったのではないか、と言われる。そういう状態で当時の情報を更新することなく、既に原作本も手放した状態でアニメを視聴すると、原作準拠でも、あれっ記憶の中の原作と違う、となってしまう。もっとも、そこらへんを確かめようと新装版を買ったりするのだから、悪いことばかりではないのだが……。
具体的に取り違えやすいのは、キャラクターに関することだろう。例えばこの小説は分かりやすい勧善懲悪の物語ではなく、ブギーポップも正義のヒーローなんかではないという思い込みが見受けられる。確かにブギーさんは何かというと小難しいことを口にするし、善悪という枠に留まらないところはある。シリーズが進むにつれてそういう傾向はますます強くなっていく。
ブギーポップというのがなんなのか、本作でも身も蓋もない解説があるし、推測もされるし、結論さえ出ているのだろうが、しかしどうにもそれが収まりが悪い。どの説明も微妙にそこからはみ出す。さっき“その人”とかいったが、いわゆる“人”なのかどうかも不鮮明である。己の周囲はフィクションの中の出来事だと自覚しているメタ的キャラクターのようでもあるし、逆に全然自分の立場をわきまえていない下手くそな役者のようでもある。それまで書いてあったことと、次に書いてあることが矛盾する。
名前の由来も(…)イギー・ポップというアーティスト名がもうそのものじゃないのかと思うが、ブギー・バップという言葉もあったような気がするし、ブギー・ウギーというオバケもいる。その辺の結合なのだろうが、付けた瞬間にその辺の根拠が全部消し飛んでしまったような感じである。
一方で、少なくとも初期は「変身ヒーロー」そのものであったし(彼氏視点)、街なかで倒れてる「サイコさん」に手を差し伸べて、彼を遠巻きに見て助けようとしない連中に向け「君たちは泣いている人を見て何とも思わないのかね!」から始まる演説をぶつ、熱血漢めいたところもあった。
ブギーポップは、タイトル通り笑わない。しかし彼氏の竹田くん視点では「目深に被った帽子の下で左眼を細めて、口元の右側を吊り上げた。藤花では絶対にしない左右非対称の表情だった」「あの表情は苦笑いだったのかも知れないと気づいたが、そのときはわからなかった。ただ、妙に皮肉っぽい、悪魔的な感じのする表情だなと思っただけだ。」と言われている。この表情の映像での再現はなかなか難しいだろうが、これらを踏まえれば今回のアニメブギーも「まあこういう風になるのもしょうがないかな」程度には思えるはずだ。思えない? そう……
「ストーリーは忘れても個性的なキャラクターはいつまでも記憶に残る」という。有象無象の登場人物の中にあって、【不気味な泡】ブギーポップは私達に強烈な印象を与え、今も忘れられていない。しかし、当時の記憶を更新しない限り、読者が覚えているのは諸々の例外が削ぎ落とされた、記号的なイメージでしかなかったりする。「厨二キャラの権化」みたいなね。
なお私は一応最新刊までずーっと追い続けてますが、鳥頭なので三日経ったら全体のストーリーもキャラクターも忘れちゃってますねヤッター。だからこの文章もびくびくしながら書いてます。