周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

Vtuberドラマ「四月一日さん家の」Wプロデューサー講演会のメモ

4月11日、GREEによる「VRSionUp」というVR技術の研究会? で「バーチャルYouTuberドラマ『#四月一日さん家の』誕生秘話~色々あって、ここまで来ました。」という講演の場が持たれた。
これはテレビ東京初のVtuberドラマ「四月一日さん家の」に関するもので、テレ東のプロデューサー:五箇公貴と、VR技術を担当した株式会社ハローのP:赤津慧の二名を招いたもの。


www.youtube.com


四月一日さん家の」の主演はときのそら響木アオ、そしてVtuberとしては新人の猿楽町双葉。キャストだけのあるいはキャストを交えてのトークというのはこれまでもあったしこれからもあるだろうけど、この組み合わせは結構稀じゃなかろうか。


当日の講演の様子はyoutube liveでも配信されていた。全くの門外漢の私も視聴することができた。アーカイヴもあるが結構長いので、メモを残しておく。なお私は技術的なことに関しては全く無知です。


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 https://www.youtube.com/watch?v=u23h46mkvlE&feature=youtu.be&t=3395

製作経緯

  • テレ東の五箇Pが、電脳少女シロちゃんの番組「サイキ道」(テレビ朝日)に関わっている構成作家酒井健さん(「四月一日さん家の」にも参加)と話していて、何かVtuberの企画をやりたいということになった。
  • テレ東の上層部もVを認識しだした頃だったので、軽く企画を出したらすぐやれと言われた。普通もうちょっと予算とか聞くだろ! テレ東ってすげえざくっとしてんなと思った。
  • ただしテレ東はVのノウハウがないので、株式会社ハローの赤津Pに話を持っていった。赤津Pの方は、当時Vでストーリー性のある何かをやりたいと思っていたので思惑が合致した。
  • 予算は普通の1クール深夜ドラマくらいはかかっている。
  • 企画が動き出してから放送までは10ヶ月ほど。3Dなどを扱ってる方には分かると思うが、この期間で1クール30分12本の映像制作はかなりタイト。その限られた期間で何をやるかが鍵だった。
  • Vtuberのいる「空間」を大切にしたい、と考える中で、外に出て色んな所でロケして、背景を作り込んで……となっていくと普通の3DCGアニメと変わらなくなってしまうのではないか。そう考えて舞台が家の中に限定されるシチュエーションコメディにした。コスト的にもそれが向いていた。
  • 具体的な事例としては「やっぱり猫が好き」「フルハウス」。若い人的には「みなみけ」を連想するかも。

キャストについて

  • キャストの選定に当たっては何人かのVと会い、オーディションも行った。最終的に三人を選んだ決め手は「同じ空間にいてなじむこと」。
  • 三人の衣装は、細田守作品などにも参加しているスタイリスト・伊賀大介さんによるもの。彼が提示した実物の服を2Dイラストに起こしてから3Dモデルを制作した。家具などもそう。この辺りから技術サイド(unityエンジニアと3Dモデラー)とドラマ制作サイドの「あれはできる」「これはできない」というすり合わせが始まった。
  • 双葉のボーダーシャツなどは技術的に難しかった
    • 特定のアパレルブランドがスポンサーになっていて、一種の広告として衣装にもそれが反映されている……という普通のドラマみたいなプロダクト・プレイスメントは今回はやっていないが、Vtuberのマネタイズの手段としては面白いかも。
  • 三人のキャストによる身振り手振りも含めたアドリブも結構入っている。Vtuberは普身振り手振りに発声にコメントを見てそれを反映して時間を意識して……と普段の配信からマルチタスクをこなしているすごい人が多い。アドリブもたくさん出てきた。ただしその辺りの自由度は、各話の監督によっても異なる。表現の幅を広げるために台本でアドリブを促しているところもある。そういったライブ感を楽しんでほしい。
  • 現場では三人のことはアオちゃん双葉ちゃんそらちゃんで呼んでいた。役に入った時は役名で呼ぶ。「一花さん、入りまーす」みたいな。

撮影段階の話

  • 絵コンテではないが、カット割りは作っている。
  • 撮影方法としては複数のカメラを3Dのスタジオに持ち込んで俳優の動きを監督がカメラで見てディレクションしながら収録し、後から絵を選んで編集するというドラマ撮影のやり方に近いことをやっている。
  • 演者同士の立ち位置がカメラの角度からかぶるとか、室内がどれくらいの面積があってどこまで歩いたら壁にぶつかるかとかといった調整が大変だった。
  • 本棚には持ち主(この場合、三姉妹の亡父)の人柄が出るということで、背景の本棚に並んでる本はいろいろ考えて作ってるので是非見てほしい。
  • 撮影中にどんどんバグが出てきりした。三人別の物を持ってなきゃいけないはずの画面で、三人共何故か掃除機を持ってたりとか。
  • 技術的な限界というか、普段Vtuberを観ている人ならお約束として自然に流せてしまうようなことーー髪があってはいけない位置にあるとか、話してるときに目線が若干ずれてるとかーーも、Vを知らない視聴者からすると自然に処理できないかも。なのでその辺りは厳しく見た。しかし本当に100%直していったら納期に間に合わない。そこは予算及び納期との戦い。
  • 製作期間の最後の三ヶ月は編集、MA(音響効果づけ)、再撮影を繰り返した。撮影しながらもシステム開発は続いていた。
  • 双葉ちゃんは「やっぱり猫が好き」で言うところの室井滋枠。パイロット版では足を組んだり技術やってる人間からするとやめてくれ! と言ってしまうような演技もあったが(笑)そこはカメラワークで誤魔化したり。できればフレーム毎に観るのは勘弁してほしい(笑)
  • モーションキャプチャーにはHTC VIVE系を使用した
  • Vtuberはまだ他の俳優と比べて表情が固い。笑いどころでも、Vに慣れない視聴者によってはそうと伝わらないかもしれない。シチュエーションコメディではお決まりの「観客の笑い声」を入れることによって、「ここは笑いどころです」というニュアンスを提示しようとしている。

その他

  • VRの方を担当したハローは20人位の会社。完全リモートオフィス化していて、社員には基本的に出社するなと言ってる(笑) 小規模な会社だが、仕事によってパートナーの会社、エンジニアを変えて色々やってる。
  • モーションキャプチャー現場ではたくさんの男性エンジニアの中にモーションアクター担当の女性が一人、ということが結構ある。このドラマの制作陣の男女比は8:2か7:3くらい。やはり男性が多いので、女優に気持ちよく演技してもらうために色々配慮というかケアした。REALITYなんかでもそういうケアはしっかりされているらしい。
  • 五箇Pは今季「電影少女」というドラマも担当している。私はこれの原作が大好きだけど、ビデオテープの中にいる女の子がテレビ画面から出てくる話とVtuberドラマを同時にやってるというのはなんか面白いと思いました*1

今後

  • 人気が出れば円盤化したり2期が制作できたりするかも。お蔵入りした映像も結構あるので、ビデオグラムが発売される際にNG集を収録するのもいいかも。なお人気の基準については、ハッシュタグつけてたくさんtweetいただければ
  • またVtuberドラマをやるなら他のVtuberも出演してもらいたいなとも考えている。
  • Vtuberは色んな才能を持ってる人が多いので、テレ東が活躍の場を広げていければ。
  • 今後は映像とのコミュニケーションをより一層求める時代。「四月一日さん家の」の空間に視聴者がアバターとしてまではいかなくとも傍観者として入っていってお話を観る。2020年後半にはそういう時代になっているのではないか。


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*1:ここだけは講演でこういう話をしてたわけではなく、あくまで筆者の感想です