周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「スレイヤーズ」おさらい6 短編全作品リストと、全35冊を読んだ雑感

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スレイヤーズ」の短編「すぺしゃる」「すまっしゅ。」は、1989年から2011年にかけて発表され、現在単行本が全35巻が発売されています。これらを全て網羅したリストを見たいと思い、以下のような表を作ってみました。作成に当たっては電子版がめっちゃ役に立ちました。スマホだと思いっきりテーブルが崩れると思うので、画像版も一応用意してあります。でもそれなりに横幅のあるディスプレイでhtml版を閲覧してもらったほうが確実に見栄えはいいです。

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おさらい「スレイヤーズ」5 短編は結局終わったのか終わってないのか

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スレイヤーズすぺしゃる」の第1回「白魔術都市の王子」は、1989年にドラゴンマガジンに掲載された。ファンタジア大賞準入選を果たした長編第1巻「スレイヤーズ!」発売に先んじて掲載されているので、実質的に神坂のデビュー作と言える。

スレイヤーズすぺしゃる/すまっしゅ。とは


作中時間は長編開始以前。内容は、一人旅を続けていたリナが、毎回ゲストキャラの奇人変人を振り回したり振り回されたりするドタバタコメディとなっている。「スレイヤーズ」全体を評する言葉として「既存のファンタジー小説RPGのパロディ」といったことがよく言われる。

  • 王子様は実はむさいおっさん
  • 若年性痴呆健忘症のエルフ
  • ちょっと小粋でアドリブの効くゾンビ
  • 乙女ちっくなリビングメイル
  • ハイソなふるまいを勉強する吸血鬼
  • 村おこし広報課長のアサシン
  • モンスターを対象とする動物愛護団体
  • 最弱のゴブリンだけを狙うハンター


これらをネタにして笑いを取るのは、何度も述べてきた通り、主に短編のほうだ。ただし、短編初期の「リトル・プリンセス2」なんかもわりとシリアスだし、心臓の発作で事切れた「ロバーズ・キラー」とか、死人も出たりする。これは単に方向性が固まっていないためなのかとも思ったが、後期の作品でも油断すると後味の悪いオチが待ってたりするので、シリアスとコメディの境目はそこまで厳密なものではないのかもしれない。

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ハロウィンの夜、仮想Youtuberを探して渋谷をさまよった話

オタクの皆さん、ハロウィンはいかがお過ごしでしたでしょうか。ソシャゲのハロウィンイベントや限定ガチャに参加したり、アニメのハロウィン回を観たり、オタクなりのハロウィンの楽しみ方をしたっていう人もいらっしゃるのではないでしょうか。私はというと、推してるバーチャルyoutuberが大混雑の渋谷の様子を生中継するというので、観に行ってきました。推しの名前は響木アオちゃんといいます。


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「ハロウィンの渋谷に繰り出すので自己責任で観に来てほしい」。そうアオちゃんが告知したのは、10月30日。ハロウィン本番前日のこと。毎週水曜21時からYoutubeでやってる生放送の一環のようですが、この時点でそれ以外の詳細は不明でした。


アオちゃんはリアルイベントに積極的な子です。人一人がようやく映るくらいのリアル受肉用のディスプレイを抱えてどこへなりと駆けつけます。だからこの時点では、そんな風にいつもと同じような感じでゲリラライブでもやるのかと思ってました。渋谷のヤバそうな様子はニュースで観て知ってたので、どんな形式でやるのか分からないけど、いやだからこそアオちゃんが危ない目に遭ったりしないか、楽しみよりも不安のほうが大きかったですね。私の頭の中を、何故かプロ野球優勝チームのビールかけを現地レポートするアオちゃんの姿がよぎりました。

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おさらい「スレイヤーズ」4 限りない欲望(メディアミックス)の中に

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ここでは、「スレイヤーズ」の関連作品の中で印象に残ったものを紹介していく。

あらいずみるいによる漫画版「スレイヤーズ


スレイヤーズ」のメディアミックスは、1992年、原作イラストレーター:あらいずみるいによるコミカライズからスタートした。本人によると、「アニメ化に当たってビジュアルイメージを確定させるためにコミカライズの企画が成立した」*1そうだ。


漫画版では、リナとガウリイによる「すぺしゃる」的なノリのお話が6話描かれた。長編時空だけどゼルガディス、アメリアといったキャラは登場せず、最初から最後までガウリナ二人旅。それだけに二人のイチャイチャがアニメにも増して目立ち、リナのバストトップを見せるような入浴シーンも当然のように挿入される。神坂先生はお便りをくれた人全員に年賀状を返すなどファン思いな人ではあるけど、原作本編に関してはファンが望んだとしても自分の道を貫き通してきた人でもあり*2、特に短編の連載が終了してからはあらいずみ先生のファンサービスがありがたかった。

*1:甘詰留太『いちきゅーきゅーぺけ 2』収録インタビュー

*2:だから今まで書かないと言ってた本編続編が発売されてみんな驚いた

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「スレイヤーズ」おさらい 3 アニメとの比較~林原めぐみ、竜破斬(ドラグ・スレイブ)、卵は産まない、正義の仲良し四人組

第1回で、「スレイヤーズ」の特徴として取り上げられようなものが実は当時それほど新しいものでもなかったんじゃないか、という話をした。


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そういう場で挙げられる「新しさ」がおおむね陽性の、笑える「スレイヤーズ」にしか繋がらないことに個人的な不満を持っていたからだ。短編だけならまだしも、長編の基調はシリアスである。なのに、話者は短編を想定して話しているようには見えない。そういう不満だ。また、新しい=ファンが感じる面白さとは限らないんじゃないか、とも思っていた。


スレイヤーズ」(長編)は、何が新しいかとかは置いといて、剣と魔法の冒険活劇として面白いものだった。リナ=インバースは物語開始当初から人類としてはトップクラスに強い力を持つ魔道士だけど、それでも中級魔族にすら遠く及ばない。作中では人間やドラゴンやあらゆる生きとし生けるものと魔族との間には、絶望的な力の差がある。リナは野盗共相手には無双する一方で、魔族に対しては知恵と勇気と咄嗟の機転と――そんなようなもので立ち向かう。案外、王道の人間賛歌。それが私の「スレイヤーズ」(長編)観だ。

  • アニメで読者層が変わった?
  • アニメ全シリーズの概要
  • リナ=インバースは神坂一に似ている。林原めぐみはリナ=インバースに似ている。つまり神坂一林原めぐみに似ている(?
  • 竜破斬(ドラグスレイブ)はリナの「必殺」技ではない
  • お色気は薄れラブコメが残った
  • 正義の仲良し四人組
  • まとめると

アニメで読者層が変わった?


しかし、私以外の読者の、「スレイヤーズ」の面白さはRPGネタこそあった、というインプレッションまでは否定できない。神坂一公認ファンクラブ【めが・ぶらんど】(1991年開設!)会長の民木唯さんは、「アニメ化によりメジャー化を果たして以降、そういったRPG的な部分のおもしろさよりも、リナ達の魅力的なキャラクター性などアニメ向きな部分にスポットが当てられるようになっていく」「アニメ化前とアニメ化後ではFCの男女比が9:1くらいだったのが、5:5くらいまで女性が増えた」このコラムや同人誌での神坂との対談などで語っている。私も読者サイドはその辺りが転機かな、と思う。原作が刊行開始した翌年には同人誌が出てたというから当初から人気はあったのだろうけど、シリーズの初版部数はTVアニメ第二期放映中に発売された長編11巻『クリムゾンの妄執』で最高を記録した。これは以降14年間『涼宮ハルヒの驚愕』に破られるまでラノベトップだったそうだ*1。当然、この頃入ってきた新規ファンは多かっただろう。


オーフェン」のファンとしてお隣さんであるスレイヤーズクラスタを横目に見てると、2000年に本編完結してからも今までずーっとファン活動を続けてきたような方はこの世代が多いような気がするが、それも道理だ。


私も含めアニメから入った人間が原作に入っていった時、既に本編は第一部が完結済みで、ストーリーやキャラクターで推す「スレイヤーズ」の形はできあがっていて。それを読者は真綿のように吸収していった。これが『スレイヤーズ!』『白魔術都市の王子』から、「正調ユーモア・ファンタジー」としての作品をリアルタイムで追っていたような人とイメージの齟齬を生んだんじゃないかとも思っている。

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