周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

中村繪里子・響木アオ・石川英郎出演 「びばりば!! 井戸端会議 EP4」レポ

声優・中村繪里子さんによるラジオ番組「びばりば!」のイベントが開催されるということで、ちょっとお邪魔してきた。ところはお台場TFTホール。お目当てはゲストのバーチャルアイドル・響木アオちゃん。「びばりば」と同じ、ラジオ関西の「アニたま」枠に番組を持っているという繋がりでのお呼ばれだ。他に同じくアニたまで「ロンハールーム」を10年以上続けてる、声優の石川英郎さんもゲストに名前を連ねている*1。逆に言えばそれくらいしか共通点がない三人が、一体何を話すのか……? 不安と期待で胸膨らませた私を出迎えてくれたのは、この曲だった。


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アオちゃんの現場に通う人にはすっかりおなじみとなった「物販の歌」が、エンドレスで流れてた。会場入口では繪里子さんの物販と並んで、アオちゃんのグッズも発売されていた。……いや、他人様のイベントで単独物販コーナー設けるに飽き足らず物販の歌流すとかアオちゃんどんだけ強心臓なの!? 以前「物販の歌を権利フリーにして色んなアイドルや声優の現場で流れるようになったら面白いんじゃないかな~」みたいなこと主張したけど、これはなんか違うよ!? 大丈夫? 怒られない? コミケ以来、三週間ぶりのお台場は波乱の予感に満ちあふれていた。

*1:ラジオの相方は同じく声優の諏訪部順一さん。今回は別のイベントに行ってたため不参加

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「オーフェン」新シリーズの発端「あいつがそいつでこいつがそれで」10周年に寄せて

以下の文章は、筆者がコミックマーケット94で発行した同人誌「秋田禎信1992-2018」のために執筆したものです。ブログ掲載に当たり一部加筆修正をしています。


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秋田禎信全著作レビューを書こうと思い立った時、ふと、「全」とはどこからどこまでを指すのか悩んだ。商業ラインに載ったものだけか、特典の類いはどうするのか、シリーズものは何冊出てても一作としてまとめるのか。結果的には、商業出版物オンリーで、シリーズものについてはこれはここまでで区切れるだろうというような、筆者の恣意的な区分けになってしまったわけだけど……例外的に、このレビューだけはどうしても書いておきたかった。  


「あそこそ」は、「魔術士オーフェンはぐれ旅」新シリーズ一作目「キエサルヒマの終端」の、初出時のタイトルである。作者のサイトでひっそりと始まった本作は書籍化され、TOブックスでの新展開に繋がり、やがては再アニメ化までたどり着く。この新シリーズについてはまた別に書いているので、レビューの対象範囲が一部被ることになる。だからこれは作品自体というより、それを私たち読者がどう受け止めたかというような体験談だ。


この小説の構想自体は第二部のエピローグとして、旧シリーズの完結当時――2003年時点から存在したという。結局書かれずじまいだったそれは、富士見書房二十周年企画として執筆され、でも今度は企画の方が流れてしまい、原稿がお蔵入りになってしまう。紆余曲折を経て、2008年、秋田が公式サイト「モツ鍋の悲願」の雑記で無料公開することになったのは、最近あんまり雑記を更新できてなかったのでその穴埋めに、ということだそうだ。「モツ鍋」自体は更新されなくなって久しいが、現在も「あそこそ」は当時の形のまま読むことができる。


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 http://www.motsunabenohigan.jp/oldnote/oldnote.htm (2008.09~2009.04)


キエサルヒマ大陸を覆う結界を魔王の力によって取り払ったオーフェンは、大陸の外に出ることを決意する。目的は、借り物のの力を本来の持ち主である魔王スウェーデンボリーに返すこと。旧シリーズのラスト、病院でオーフェンの旅立ちを見送ったクリーオウは彼を追い、他にも何やら懐かしい面子がたくさん彼の周囲に集まってくる。次々に明らかになる新事実、クリーオウのネオ相棒としての覚醒、無謀編のヒロイン・コギーやキースまでがはぐれ旅の流れに合流するなど、見処満載の作品になっている。

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「文学少女」シリーズの野村美月は、エロゲ「仰せのままに☆ご主人様」のシナリオライター村中志帆だった

エロゲのシナリオライターラノベ作家はそこまで遠い関係ではない、と思う。だから、自分が好きな作家が別名義でシナリオを担当したエロゲを知らず知らずのうちにプレイしてた、なんてこともまああるかもしれない。でも、そっち方面の数をさしてこなしてるわけでもない自分が、あの野村美月の数少ない担当作をプレイする確率ってのはどれほどのものなんだろう。   



野村美月は2001年に『赤城山卓球場に歌声は響く』で第3回ファミ通エンタテインメント大賞*1小説部門〈最優秀賞〉を受賞してデビュー。その受賞作に始まり、初手からいきなり3ヶ月連続刊行(それも全部別のシリーズ)と彼女の船出は華々しく、売り出す側の期待の高さが伺われた。しかし、それに反して売り上げは伸びず……2006年、ガラリと作風を変えた*2文学少女」シリーズでようやくブレイクする。著者曰くどのシリーズも1巻は売れるんだけど2巻目以降がダメだったのが、「文学少女」は逆に右肩上がりに伸びていったそうだ。このシリーズはタイトル通り古典文学への入門ラノベとして唯一無二の地位を築いている。公共図書館学校図書館が率先して購入するラノベは本作かキノかってくらい。多分*3


今回、野村がシナリオ担当作として挙げたのは【桜月】というレーベルの「仰せのままにご主人様」。エロゲー批評空間のデータベースによるとシナリオライターとしてクレジットされているのは【村中志帆】のみなので、これが野村の別名義ということで間違いないのだろう。村中のキャリアは以下の通り。

発売年月 レーベル タイトル 備考
200611 Princess Soft 保健室へようこそ(PS2) コンシューマ移植版。牧ひろあきと共同
200609 桜月 SilveryWhite ~君と出逢った理由~ 御子石大郁、織田濃子と共同
200605 BunBun 保健室~マジカルピュアレッスン♪~ -
200511 桜月 仰せのままに★ご主人様! -
200407 Princess Soft 3LDK ~幸せになろうよ~(PS2) 御子石大郁と共同
200403 DEEPBLUE DEEPBLUEファンディスク 11人の胸キュンLOVE! 同レーベルの二作のゲームの外伝を収録。御子石大郁と共同
200312 ソフガレノベルズ 3LDK(1) 日菜&のえる編 ノベライズ
200306 DEEPBLUE 3LDK 御子石大郁と共同


デビューから二年後~「文学少女」で人気が出てブレイクする直前くらいまでに集中している。この間、表名義での仕事が殊更に減ってたってわけでもないのだが*4、糊口をしのぐというか別の業界で活路を見出すみたいなところはあっただろうか。

*1:現・えんため大賞

*2:でも根っこは変わってない

*3:少女向け含めると「ジャパネスク」とかもあるだろうけど

*4:野村の執筆ペースを考えると少ないかもしれないけど、それでも年三冊は出してる

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森見登美彦原作「ペンギン・ハイウェイ」 負けるなハマモトさん

なんといっても、原作は森見作品の中で一番好きなのである。初めて読んだとき「これはぜひ映像化してほしい」と思った。それから7年か、8年か。森見氏の人気を考えると随分長くかかってしまったように思う。待望のアニメ化であった。


小説家・森見登美彦といえば「四畳半神話大系」「夜は短し恋せよ乙女」など、やたら古風でもってまわった言い回しを駆使する腐れ京大生というイメージが一般的だ。彼らは星野源のようなインテリ愛され非モテキャラとして、女性ファンにも可愛がられている。


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本作の主人公アオヤマくんは小学四年生だけど、大学生主人公のミニチュア版のような喋り方をする。アオヤマくんのような子供を見かけると、大人は決まってある種の評価を下す。曰く「こしゃまっくれている」「ひねくれてる」「頭でっかち」「生意気」……。しかし、腐れ京大生どもと違いアオヤマくんの性根はどこまでもまっすぐだ。本作の舞台―――小高い丘に造成された、小綺麗なニュータウンらしき町*1でペンギンが大量発生する。この異変に遭遇した時、彼がその謎を解明しようと思ったのは、全くの知的好奇心からだった。ペンギンと、森のなかに人知れず佇むSF的構造物【海】の研究に、アオヤマくんは夏休みの全てを費やす。志を共にするウチダくんは泣き虫だけどなかなかに根気に満ちている。クラスメイトのハマモトさんは以前から【海】の存在を知っていて、二人が信頼に足ると分かるや、協力を申し出てくれた。【ペンギン】と【海】にはなんらかの相関があるはずだと。彼らは様々な条件であらゆる実験を繰り返し、どんな些細な情報でもノートに書き込み、時間があればそれをためすがめつ眺め、もちろん実地にフィールドワークにも出かける。彼らの研究は理路整然としていて、それでいて楽しげだ。勉強ができるというだけでなく、勉強のために創意工夫を凝らすのが面白いのだろう。私もそんな子供でありたかった。

*1:原作はニュータウンの人気のない、どこか浮世離れした風景描写がまた見事であった

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「秋田禎信1992-2018」BOOTHで通販開始しました! 第二版です。紙版購入者は無料でpdf版DL可

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  https://sube4.booth.pm/items/981386


オーフェン」「エンジェル・ハウリング」「小説版血界戦線」などの代表作を持つ小説家の四半世紀を辿った評論? 本です。全著作レビュー、コラム、各種リストなどB5コピー本52ページ。本体価格350円、匿名配送料310円。夏コミでも無料配布した「秋田禎信作品総選挙」結果発表のペーパーがついてきます。

通販分からは第二版となります


夏コミではご好評いただき、家から持っていった分は無事完売。通販は、当初はC会場製本分の在庫を売り切ってそれから……と考えていました。ですが、イベント終了後の冷静な目で読み返してみると誤字脱字や抜け落ちた情報が目についたので、各種修正を反映した再版発行ということになりました。会場で初版をお買い上げたいただいた方は本当に申し訳ないです。あと会場製本してくれた友人知人も。さすがにこれはあかんやろというミスについては、下記リンク先にまとめてあります。


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紙版購入者は無料でDLできるpdf版をご用意しましたので(下記参照)、もしこの同人誌の情報をソースに秋田作品に言及することがありましたら、そちらから引用していただければ……。レビューは初版からでもそこまで問題ないとは思うんですが、著作リストやインタビュー・対談等リストなんかの基礎データは間違いがあるとダメージが大きいだろうと思われるので……。

初版第二版ともに紙版を購入いただくと無料の簡易pdf版がダウンロードできます

送料込だと通販が結構高くなってしまったので何か付加価値が欲しいなというのと、初版を購入いただいた方に申し訳ないということで、紙版の購入者の方は無料でダウンロードできるpdf版をご用意しました。


https://drive.google.com/open?id=176OqmHLiYNdxseAWc9707ujkQ0-lAPlE


「簡易」っていうのは電子版として読みやすいように紙版からレイアウトなどをいじったりしていないということです。本文は全て収録されています。


ただし、「全著作リスト」「インタビュー・対談などリスト」は紙版では見開き横書きで左ページから読む形式(20Pと21Pにわたって掲載されてる場合21Pから読む)だったんですが、pdfでは1ページずつ読む方が多いだろということで、通用のページ構成となっています。逆に言うとそれ以外はほぼ紙版まんまです。あくまでおまけということでご了承ください。あ、でも、ここは読みにくかったとかこうしてほしいといった感想をくださるならむしろありがたいです。


pdf版はパスワード付きのzipファイルとして提供されています。まず上記リンク先から「秋田禎信1992-2018pdf.zip」をダウンロードしてください。解凍時にはパスワードが要求されます。これから通販で購入される方は目次にパスが書いてありますのでそちらを参照してください。夏コミで初版を購入いただいた方は、4ページの上から三段目に、合計八個の数字が記載してあると思います。その内「9」を「Q」(大文字)に変えた、八桁の文字列がパスワードです。

「初版購入者だけどどうしても紙の第二版が欲しい」という方へ

冬コミに受かったらそちらで安価もしくは無料で交換……とかそういうことも考えています。価格のこととか、わざわざ初版を持ってきてもらのかとか、まだ何もかも未知数ですが……。そもそも当落がどうなるか分からないし。お手数おかけしますが、その時はまたよろしくお願いします。

電子書籍としての単品DL販売

は、どうなのかなあ……。需要があるのかどうかがまず分からないし、やるとなったらあちこちいじらないとだろうしなあ。レビューとコラムとリストでレイアウトとか全部バラバラだしなあ。epubへの対応とかなあ。うーんという感じです。


しかし、イベントが終了してからミスを修正した増刷だpdf版だと当初の予定にないことをやりだして計画性のなさがどどどっと露呈する、この俺クオリティよ……。