周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

僕たちの好きな魔術士オーフェンを他作品にこじつけて語る

ハイブリッド・ファンタジー」。これは、旧シリーズ刊行当時公式で使われてた「オーフェン」のアオリ文句だ。多分、蒸気機関やガス灯が実用化されてる一方で「ドラゴン種族」が依然として存在するような世界設定のことを指して言ってるんだろう。それ以外にも「オーフェン」は、色んな要素を掛け合わせた作品だった。


  • 目つきが悪く暴力的で皮肉っぽく、でもナイーブな主人公
  • アクが強く人間くさいキャラクターたちと、生っぽい女性像
  • 妄想を刺激してやまない、拡張し続ける世界設定
  • ハッタリ満載の泥臭いアクションシーン
  • 翻訳小説に影響を受けた、アフォリズムを多用する文章
  • ガンダム」のような思想と思想のぶつかり合い
  • 日常系残念ラブコメドタバタギャグな外伝
  • 学園FTな前日譚
  • アナログな塗りの質感がたまらない、躍動感のあるイラスト
  • 終わりに

目つきが悪く暴力的で皮肉っぽく、でもナイーブな主人公



まず、主人公であるオーフェンは金貸しを営んでいる青年だ。目つきが悪く、行動は暴力的、物言いは皮肉げ。はっきり言ってヤクザそのもので、人生の裏街道を爆進中。作者の秋田が「血界戦線」の小説を手がけた際、ザップを主人公に採用したと聞いてみんな納得してしまうのは、オーフェンがそういうキャラだから。


そんな彼も、かつては魔術士養成学校《牙の塔》で将来を嘱望された凄腕の魔術士だった。今でもその辺りを突かれると意外に脆いという、ナイーヴな一面も。作者曰く、すごくキツく絞られたエルメスのスカーフイラストレーターの草河遊也からは「女々しい奴」とまで言われる始末。


上条さんよろしく性差廃絶主義者(フェミニストを自称し女相手でも容赦なく殴り蹴ると公言するものの、女難のケがあり、年上の女にはいいように利用され、年下には振り回されている。作中のみならず現実にも女性人気は高く、恋愛めいた話は本編ではほとんどやらないのに彼とくっつくのは誰かカップリング論争も盛んだった。エリート街道から脱落したのも姉のように慕っていた女性が原因だ。秋田はハードボイルド小説が好きで、何人かの登場人物の名前ロス・マクドナルドマーガレット・ミラーといった作家の著作の登場人物から取られている。そんなハードボイルドな中年探偵のような過去とは裏腹に、年相応に青くさいところも残っていて、はぐれ旅の第一部は彼が過去と対峙する青春小説という読み方もあった。


暗殺者としての過去を持ち殺人を忌避するヒーローとして同時代の「るろうに剣心」や「スプリガン」、少年少女がオーフェンという保護者を見上げるパーティー構成には「銀魂」「DTB」なんかとも相似を見いだす人もいるようだ。自分が20歳という年齢を超えた時、オーフェンがあまりに大人であることに驚く人もいる。初期のキャラクター造形は「ドラゴンランス戦記」のレイストリンをモデルにしているという。


作者のモットー(?)を体現し、話のラストには血まみれで佇んでいることが多い。第二部以降は精神的に揺らぐことが少なくなり、作品のテーゼを体現した存在となっていく。

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桂正和「電影少女」が性の目覚めでした

80年代後半~90年代前半に小学生だった私は、「週刊少年ジャンプ」に対してちょっと大人向けというイメージを持ってた。


不良物の「ろくでなしBLUES」、不気味な絵柄の「ジョジョ」、サスペンスホラーの「アウターゾーン」……。いずれも、まだ自分には早いような気がして、ドキドキしながらページをめくるか、怖くて読み飛ばしたりしてた。それ以外にも「幽遊白書」とか「スラムダンク」とか大メジャーな作品でも、一つ上の男を感じたり……。まあ小学生にとって中高生ってだけで大人~! って感じがするので、そんなもんかもしれない。


大人向けというと欠かせないのがエロ。エロといえばジャンプ連載作品で忘れがたい漫画が二つある。その一つが、桂正和の「電影少女」だ。

時代背景

恋愛に臆病な高校生・弄内洋太(もてうちようた)。片想いの相手が自分の親友を好きなことを知り落ち込む洋太は、その帰り道に奇妙なレンタルビデオ店“GOKURAKU”に入った。彼がそこで借りたビデオを再生すると突然、実物の女の子がテレビから飛び出してきた!!


連載開始は1989年。当時爆発的に普及し始めていたVHS対応のビデオデッキというガジェットが時代を感じさせる。一人暮らししてるのも、当時のトレンディドラマに出てきそうなリビング吹き抜けのデザイナーズハウスだった。後半登場する男性のダンサーはtrfにいそう。


集英社文庫版。ビデオテープだけをどーんと配置して看板の美少女が影も形もない思い切った装丁


……それ以外は、荒唐無稽かつありきたりなあらすじだ。これだけではちっとも惹かれない。当時の目で見ても、設定に新奇性があったわけではなかった。

女の子にかけるこだわり


桂のリアリティ溢れる絵のタッチは、しかしその荒唐無稽な導入を、ひょっとしたら高校に入学すれば、東京に行けば自分にも起こるかもしれない、そんな目と鼻の出来事として私達の前に描き出す。単行本2巻の折込部分では、次のように語っている。

読み切りのビデオガールの頃から、絵を壊すことを、始めました。自分のキャラクターのルックスにあきたからです。マンガの女の子より実際の女の子のほうがカワイイと感じてるボクは、できるだけ人間の顔に近づけたくなったんです。壊したばかりでぜんぜん満足いく顔が描けずに四苦八苦です。


ヒロインのあいちゃんが画面から飛び出してくるシーンは、まさに二次元から三次元の世界に飛び出してきたみたいだった……と言ったら言いすぎかもしれない。「リアル」なだけならば大友克洋がいる。リアルな女体というと、山本直樹なんかも思い浮かぶ。むしろ桂正和の描くキャラクターは、三次元の良さを抽出してうまく二次元に落とし込んでいるところに魅力があるように思う。特に女の子のお尻については、定評がある。


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初期の代表作「ウィングマン」最終回(85年)と「電影少女」第一回(89年)


肉と骨と皮があって、そこにいるのはどうしようもなく二次元の存在なんだけど、偏執的に描き込まれた女の子からは、それが絵であっても体温、肌触りが伝わってくる。まだまだ「女性」を知らない小学生だった読者にとっては((今も知らない)、ある意味、三次元以上のリアリティが感じられた。


三次元の良さ、と言ったけれど、必要であれば三次元の「悪さ」を描くことに対しても桂は躊躇しない。終盤、あいちゃんが街の路地裏で野宿している場面では、都会におけるそういった場所の汚さ、何日もお風呂に入ってない人間の臭さが漂ってくるようだ。同じ恋愛物の「D.N.A2」はかなりギャグに寄せてるんだけど、それでも、緊張するとおならしてしまうヒロインなんていうのを「色物」としてではなく、そういう悩みを持った一人の女の子として描いてる。そこがジャンプの美少女漫画家として桂とともに名前が上がる、「ToLOVEる」の矢吹健太朗との違いだろう。

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なつかしの異世界転生・召喚もの:「ゼロの使い魔」完結と、ヤマグチノボルという作家について

ヤマグチノボルゼロの使い魔」が、このほど完結した。本作は、ライトノベルにおける異世界トリップ物の中興の祖である。が、20巻出たところで著者がガンを患っていることが判明、2013年に逝去。遺されたプロットを元に21巻、最終22巻は書き上げられたそうだ。


代筆した作家の名前は当初公表されていなかった……が、後に「精霊使いの剣舞」などを代表作に持つ志瑞祐であることが明らかになっている。2004年のシリーズ開始から、実に13年を経ての終幕となった。



ちょっとおバカな高校生・平賀才人は、ある日、中世~近世ヨーロッパ風の異世界に召喚される。彼を召喚したのは、魔法学園の生徒・ルイズだった。日本にも帰れない才人は冒険に、戦いに、恋に身を投じていくことになる。高飛車だけど可愛いルイズというご主人様の「使い魔」として。


少年漫画的な熱さと、女の子の可愛さ。この男子が大好きなもの二つを掛けて二で割らない、プリミティブな楽しさがこの小説の魅力だ。


この連載の第2回で取り上げた「日昌晶「覇壊の宴」で、2000年頃、お約束をいじるタイプのライトファンタジーにどん詰まりを感じていた、と書いた。そんな私が改めて、もしかしたら初めて「王道っていいな」と思ったのが、「ゼロ魔」だった。最初は、当時流行していた「ハリポタ」風の魔法学園物の亜種という印象が強かったのだけど……。


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「アレがアニメ化とか今何年だっけ?」って聞かれたら「うるせえ俺が生きてる間は90年代だ」って答えたい

ある一定の年代以上に特に有名な漫画やラノベの(再)アニメ化・リメイクが相次いで発表されています。既に「たくさん発表されすぎて食傷気味になってきた」という人もいるくらい。……でも、「懐かしい」「今何年だっけ」と言いたいがためだけに一切合切同じ箱に入れるのはちょっと……と思う毎日です。

作品ごとの現在に至る経緯はそれぞれに違う

今も続いているシリーズ


近年の再アニメ化ブームの発端かと言われる荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」(1987-)は、各部によって主人公も舞台も年代も違う漫画です。連載開始から、途中何回か期間を置きつつ、掲載誌を変え、現在まで続いています。


主人公が一貫して同じ時雨沢恵一キノの旅」(2000-)や上遠野浩平ブギーポップ」(1998-)も現在進行中のシリーズです。浅井ラボの「されど罪人は竜と踊る」(2003-)は、最初の版元である角川スニーカー文庫との間にトラブルが起こったため袂を分かち、2008年からは小学館ガガガ文庫から刊行されています。

完結以降特に原作に動きがないシリーズ


田中芳樹スペースオペラ銀河英雄伝説」(1982-1989)は約30年前に完結しました。とはいえ既にオタクの基礎教養みたいなポジションに就いててその地位が揺らぐことはなく、徳間書店のノベルス版に始まって、徳間文庫版、愛蔵版、徳間デュアル文庫版、創元SF文庫、らいとすたっふ*1の電子版、そして今回のアニメ化を記念したマッグガーデンノベルスなど多数のバーションが刊行されています。


藤崎竜封神演義」(1996-2000)や藤田和日郎うしおととら」(1990-1996)、「からくりサーカス」(1997-2006)も、完結済みの作品です。一度きりの読み切りなどを挟みつつも、基本的に原作は長いこと供給されませんでした。

近年*2続編がスタートしたシリーズ


CLAMPの「カードキャプターさくら」(1996-2000)は、2016年から続編の連載が開始。今回のアニメもこの続編の方の映像化となっています。衛藤ヒロユキ魔法陣グルグル」(1992-2003)は、2008-2012年にかけて「魔法陣グルグル外伝 舞勇伝キタキタ」が連載され、その最終回で原作の正式な続編連載が発表、現在も続いています。2017年版のアニメは原作をイチから映像化しつつ、1994年版の旧アニメに対する目配せも利かせるというニクい作りでありました。

続編がスタートしたけどそれも無事完結したシリーズ


秋田禎信魔術士オーフェン」(1994-2003)みたいに、一度完結したけど2008年*3から新シリーズがスタートして2015年にそれも既に完結してる、というパターンも。新シリーズは版元が富士見書房からTOブックスに変わっていて、だから今回のアニメ化も基本的には富士見は関係ないはず。


オーフェン」は旧シリーズが刊行されてた期間より、新シリーズが開始してから今に至るまでのほうが既に長かったりします。その中で、版元が何度か「重大発表あります!」と煽って「これはアニメ化か!?」とファンが期待するも別の企画だった……ということが繰り返されてきたこともあり、今も追ってる人的には今回の発表は既定路線とまではいかないまでも、「ようやくか」といった感はありました。

原作者以外の続編が始まって終わったシリーズ


続編が必ず原作者の手によるものとは限りません。賀東招二フルメタル・パニック!」(1998-2011)は、原作完結と同時に、続編であり外伝でもある「フルメタル・パニック!アナザー」が開始。原作者が原案・監修に回り執筆は新人の大黒尚人に任せたこのシリーズも、2016年には完結しています。「フルメタ」は、今春から始まるアニメがリメイクや再アニメ化の類ではなく、2002年の最初のやつから今回の四作目「Invisible Victory」まで原作を映像化するという意味ではずーっと一貫してる続き物なのがすごいなーって思います。

一時中断して再開したかと思ったら……なシリーズ


まあこれは再アニメ化とか関係ないんですけど。星野亮の「ザ・サード」とか、倉田英之の「R.O.D」とかもそうですね。

*1:田中のマネジメントをしている会社

*2:近年とはゆってない

*3:本格的に再始動したのは2011年

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アニメ「サンリオ男子」が思春期のイタいリア充コンプレックスを生々しく抉ってくる怪作だった

サンリオキャラ大好きな五人の男子高校生。彼らこそが「サンリオ男子」である。サンリオ原作のこの企画は、ハローキティマイメロディボムポムプリンなど各自に「推し」キャラがいるのが特徴だ。最初はtwitterでのキャラクターアカウント同士のやり取りから始まり、今年1月からTVアニメが放映開始。先日、最終回を迎えた。


私自身、「おねがいマイメロディ」「ジュエルペット」「リルリルフェアリル」とサンリオ作品とは10年以上付き合ってきて――ラインナップを見れば分かる通り、私の場合はアニメ視聴が基本なんで、サンリオアニメ男子っていうのが正しいけれど――近いようで遠い存在の「サンリオ男子」には興味があった。アニメが放映されると聞いて、入っていきやすい媒体が来たぞとちょっと期待していた。


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……全話観た今の感想は、面白いつまらない以前に、なんかすごいものを観た、というのが正直なところだ。


メインビジュアルとtwitterから垣間見える雰囲気を見る限り、きらびやかなイケメンたちが愉快な日常を過ごす楽しいアニメだと思ってた。でも、全然違った。このコンテンツには「イケメン」「恋愛」「青春」という三つのコンセプトがあるそうだけど、TVアニメはその内「青春」がクローズアップされている。

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