「アイカツ!」いちあか編完結 全178話中160話過ぎてリアルタイムの放映に追いついた人の雑感
わたしが「アイカツ!」を観始めたのは2015年の夏。3期の終盤も迫った頃なので、随分と遅い。最初は好きそうな話だけ当てずっぽうで観てたのだけど、1年目終えた後結局巻き戻って全話観る羽目に。大体1日1話消化して、ようやく最新話に追いついたのは年が明けてから。リアルタイムでは全178話中1割も観てないことになる*1。そのため他の人と比べると思い入れは薄いのだけれど、それでもこれだけの話数を積み重ねてきた上での完結となると感慨深いものがありました。
- アイカツシステムが生み出すうねり
- シリーズ全体の流れ~大河ものとしてのアイカツ
- アイドルたちの肖像
- 推しカプ
- 子どもの「好き」を先導する者としてのホビーアニメの大人たち
- お前もCGにしてやろうか
- キャスティング
- これからのアイカツ
アイカツシステムが生み出すうねり
男の子が好きなもの。美少女。メカ。バトル。そして大掛かりな嘘を発端にした、厚みのある歴史を感じさせる大きな物語的なものも勿論大好きだよなあとアイカツおじさんがあの世界に対して妄想を捗らせているのを観てて思った。それが、わたしがアイカツを観るきっかけになった。「マリみて」なんかもそういう読みをしてるいた気がする。「咲」や「ガルパン」なんかの、男児アニメホビーアニメにも似た、世界が我々の好きなもので満たされた、架空の競技ものとしての楽しさ*2もある。アイカツ最強議論スレとかがぐぐっても出てこないのが信じられない。アイカツシステムのファジーな設定によって、
五芒星の中でアイドル達から吸い上げたオーラが、アイカツシステムにステージ上で奇跡を顕現する力として流れ込んでいく。しかし数多のアイドルのオーラを貯め込みライブパフォーマンスを学習したシステムはやがて、自らトップアイドルのゴーストを作り出す。いちご達はシステム抜きでそれに立ち向かおうとするが、あの世界ではスターライト学園の外に出ても、アイカツシステムの影響はついて回る。そこで掃除のお兄さんは、例外的にユビキタス社会の外にいるかのんさんに曲を依頼することに……!
とかなんとか、そんな妄想のはかどることはかどること。
上記のようにアイカツシステムは絶対的なんだけど、アイカツランキングがあって、フレッシュガールズカップがあって、スターライトクイーンカップがあって、そして勿論通常のオーディションがあって、というアイドルを評価する機会の多さがあの世界の広さに繋がっている。美月さんがユニットを組む相手として選んだのはかえで蘭ユリカ様あとみくるさんだし、スターライトクイーンはおとめちゃんとさくらちゃんだし、未来の学園長候補はぁおい姐さんだし、でも美月さんを超えたのはいちごちゃんだけ。
しかしこうして見ると美月さんの下の世代ってトップアイドルが親しみやすい人多すぎ問題なので、かつてのアイドルのような神秘性を売りにして云々と誰かがスミレちゃんを担ぎ上げそう。ぽわぷりが隙間産業狙いみたいなことよくゆわれるけど、この世界におけるアイドルの王道とは、ってちょっと考えてしまうな。
それと、世界の広さの割にアイドルが主人公周辺に固まっちゃってた感はあった。なので終盤美月とアイカツしてこれてよかった、っていう同級生の人たちが出てきて嬉しかった。あとはアイカツなんてだいっきらいだーみたいなキャラがいたら完璧。4年目のアイカツワゴンには期待してたんだけど……
シリーズ全体の流れ~大河ものとしてのアイカツ
現代日本を舞台にした1年ものキッズアニメって現実と作中の時間経過をかぶらせてくることが多くて、4月放映開始なら何かと環境が変わるタイミングである入学進学の時期からお話が始められるのがおいしいのだけど、アイカツは10月スタートで。でも、半分終わったタイミングで新世代を自然に登場させられるこの構成も悪くないなって思った。というか後輩としての主人公、先輩としての主人公を1年で同時に味わえるという点で一粒で二度美味しい感すらある。
- 1話:いちあお、スターライトに編入(一年目10月)
- 26話:さくら入学(一年目4月)
- 51話:いちご、アメリカから帰還(二年目10月。作中では一年目最終話から1年経過)
- 76話:あかり入学(二年目4月)
- 102話:あかり、スミレと出会う(三年目10月)
- 127話:まど凛入学(三年目4月)
- 153話:ノノリサ登場→入学(四年目10月)
新シリーズは4月開始になるけど――四年目が2クールなのはこの調整のためかしら――どうなることやら。
なおアイカツ1年目が4月スタートだったら、さくらちゃんはこのタイミング(つまり年度初め)で登場していたかどうか疑問。いや名前が「さくら」だからとかじゃなくて、正規の(というのもおかしいけど)入学っていうのがキャラ的に相応しいから。まど凛も同様。あかりちゃんも4月だけどこっちは一回正規の試験落ちてるのよね。
世代交代とゆえば、学生主人公の部活モノではどんなに強い奴でも数年経てばいなくなるっていうのがストーリー上の縛りになってるけど、アイカツの場合みんな学生であり且つプロであるというのが世代交代がゆるやかなことの一因かしらとは思った。おかげで? さくらちゃんは「次世代主人公と目されていたキャラがいざ次世代編になった時は年月が経過して師匠ポジに落ち着いちゃってる」という法則をモロに……。
2年目はほぼ1クールかけて旧キャラのおさらいと新キャラの紹介やってて、これも長期作品だからこそできる贅沢な話数の使い方だなと。
アイドルたちの肖像
ここからより徒然とした語りになっていきます。
推しアイドルはユウちゃんとノエルちゃん(めんくい!)。ユウちゃんはあのクールなルックスにこどもっぽい八重歯という意外性が最高。ノエルちゃんは世間にはまだまだ知られていない在野のトップアイドル候補がいて、功夫(アイカツ)を怠っているアイドルの前に出てきてあっという間にポジションを奪われっちまう、みたいな都市伝説を担いそう……と思ったけど正式にドリアカに入学しましたね。こうなるとその役目はユウちゃんのほうが似合うか。
いちごちゃんは、困ったことがあったら開けてねって親友に渡された手紙を困ったことがなかったから50話近く開けなくて、後輩をどう導いていくかという他人のために初めてそれが必要になる辺りで怖いって思いました。料理上手なのは、身近な誰かのために何かをしたいという象徴ってのは勿論なんだけど、日々の糧であるご飯を自分で作れなくちゃトップアイドルになんてなれるはずがない! みたいな考えがあるのかなーとか。
美月さんは、 散々人を振り回しておいて後になってそれにはこれこれこういう深い理由があってとかお前の為をおもってどうこうみたい説教しだすトリックスター的なキャラって嫌いなんだけど、彼女はその逆を行った感じ。トップアイドルとしての彼女の覚悟を見せられてから風雲美月城で「こんなものなの!?」してくる。そりゃもう憎めませんわ。……彼女にのみマネージャーがついてるのってスターライトクイーンの証とかじゃなくて、一人にしたらやりたい放題し始めるからその重しだよなー。基本的にみんなセルフプロデュース/マネジメント意識強いのでマネージャーとか要らなさそうアイカツキャラ*3。そこがアイマスとの違いか。
あかりちゃんは、釣った魚を必要最低限の餌で生かしとく、インファイトのタツジンって感じ。ハーレム物主人公の鑑。ラス1で、失敗したスミレちゃんの手を一瞬だけギュッと握って去っていくのとか、ずるい。
ユリカ様は、 キャラクターとしてはプライマリではないんだけど、彼女のファンの統制の高さの秘訣がよく分かる89話「あこがれは永遠に」は全178話中ベストエピソード。なんというか、ロリ(衣装)って「かわいい」より「かっこいい」、憧憬の眼差しで見られるものでもあるんだよなあって。これは「下妻物語」で学んだことだけど。
推しカプ
可愛い女の子がたくさん登場して鎬を削る話だから、当然百合作品としても観られます。好きなCPはいちあお前提のあお蘭。1年目と2年目の狭間のほんの1話だけで許されたあの好きなあの雰囲気がたまらないんスよ……! その後も度々刃モードの蘭ちゃんがあおい姐さんの肩を抱いたりしてるけど。ののりさのビジュアルもグッド。
またノマカプも可で、四葉シェフと世界の中心はくっついてほしいな。ここねちゃんが押し切る形でも四葉シェフがのめりこんでくのでもどっちもおいしい。でもぁおレイは不可。なんでかは自分でも分からないけどあおい姐さんのノマカプは受け付けない。初見だと特になんとも思わなかった初恋話が、2週目だとぁおい姐さんの初恋話を聞かされたライチンゲールさんの顔になったりするので思い入れって大切。
ノマカプといえばあかりちゃんは瀬名さんとの間に淡い恋愛模様が見え隠れしていたけれど、あんなに盛んだったアイカツ男子会も瀬名あかを機に、ジョニーは学園長と、四葉さんはここねママとくっついたため自然に足が遠ざかるようになり今はもう涼川さん一人になって、そんな彼が将来のことで悩む瀬名ウィングの肩を押すとかそんな話でなくてもいいので涼川さん回が欲しかったです。
子どもの「好き」を先導する者としてのホビーアニメの大人たち
2年目のドリアカ編は、織姫学園長とティアラ学園長の対比がすごい好き。学園内の生徒をメール一本で自室に呼びつける前者は大物感あってかっこいいし*4、後者は自分からアイドルたちのところに会いに行くフレンドリーさに惹かれる。アイドル物の特徴として、2、3歳差くらいなら先輩であっても最初は尊敬の念より友達感覚のほうが勝っててちゃんづけしちゃう、ってのはあって、でもそんな中でそんな中で学園マザーの名字呼びが作品を締める。ティアラ学園シスターはシスターとして下の名前呼びなので締めない。あの日ヒメに憧れた女の子がそのまま大人になったような、アイドルたちとの距離感。
子供が夢中になっているものを作る大人は子供なのか大人なのか、とかそんなことを考えた。
ところでIT企業の社長を経て娯楽産業に参入っていう経歴、ライブドアの創業メンバーの一人で、怪作「ミラクルトレイン」を製作した有馬あきこさんがモデルじゃないかしら。アニメのシリーズ構成がアイカツと同じ加藤陽一で他の脚本家も全員アイカツで仕事してたり。あの「ゆゆ式」に勝るとも劣らないナンセンスな会話*5が楽しいなら観て損はないですよミラトレ。
久しぶりにミラトレ淑女の皆様への裏話ですが、アイカツ!の新年の放送分からはミラクル☆トレインを一緒にやっていただいた脚本家陣が勢揃いするのです。ミラトレとの共通点は表面的には斜めっぽい個性を入れつつ中身はきちんと、ということ。なのでミラトレ淑女の皆様もよかったらご覧くださいね☆
— 加藤 陽一 (@yoichi_kato) 2012年12月23日
お前もCGにしてやろうか
ステージで時折見せるお人形さんっぽい? 動きが好きだった。ボカロが人間の歌とは違う方向に活路を見出したように、アイカツのCGもあえて通常の2D作画とは乖離したものを見せてくれている。気がする。
劇場版2作目の「ミュージックアワード」は、うまくやれば「延々戦車戦やってるだけなのに面白い」ガルパンに対して「延々ライブやってるだけなのに面白い」というポジションを確立できたんじゃないかと思うと惜しいことをした。それとライブ中にあんまし観客の視点とか演者の内面とか見せないのはライブに集中してくれってことなのかなって思ってたら、ライブとそれ以外のパートで製作が違うからってゆわれた。なるほど。
キャスティング
黒沢凛ちゃん役の高田憂希のかすれ気味の声がセクシーでこれは次くるで……!と思ってたらNEW GAME!の主人公に抜擢。監督はGJ部の藤原佳幸。さすが!
キラキラした世界の主人公に似合わぬ下地紫野(あかりちゃん)のややこもってる? 感じの声も印象的だったんだけど、あれは序盤の泥くさい展開を見越してのものだったのかなあとか。
おとめちゃん役の黒沢ともよは、さすがの強キャラ感でした。
これからのアイカツ
ハマったのが遅かったというのもあって、アイカツ熱は収まりそうにないどころかまだまだ高まっていきそう。フォトカツは継続中だし、アイカツスターズ!は勿論楽しみなんだけど、夏の劇場版で女児アニメ映画デビューすることになってどきどきです。大友隔離興行みたいなのやってるところないのかしら……。