周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

魔女っ子、魔法少女、変身ヒロインの使い魔キャラについて

魔(法少)女といえば使い魔、という連想だったのか。1982年の『魔法のプリンセスミンキーモモ』以来*1、かわいいマスコットキャラみたいなのがくっついてくるのがその手の作品の定番だけど、この魔法少女百花繚乱の時代、彼らもバリエーションに富んでるよなあと。

  • 人間の言葉を操れないタイプ
  • お子様タイプ
  • 知性派タイプ
  • 腹黒タイプ
  • スケベタイプ
  • 元は人間だったタイプ
  • 普通に人間タイプ
  • 終わりに

人間の言葉を操れないタイプ

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 flyingwitch.jpより。


画像は「ふらいんぐうぃっち(AA)」のチト。場合によっては特殊な能力を持っていて、人間の言葉を理解はできても喋ることはできない。小動物か、あるいは小型のロボットとかもいた気がする。設定上、非日常へ主人公を誘う役割は難しい、というのがポイントだろうか。主人公は説明を理解できても視聴者ができなきゃ意味がないし。「天地無用!」の魎皇鬼は原作では喋らないんだけど、スピンオフ「プリティサミー」では当たり前のように人語を操るようになっていた。

*1:wikipedia調べ

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「放課後のプレアデス」 桑島法子が高森奈津美に幸せにされちゃう運命線

放課後のプレアデス」というTVアニメは、女子中学生のごく日常的な悩みの解決とキャッキャウフフとガール・ミーツ・ボーイとハードSFを合体させたジュヴナイル作品だ。同じガイナックス制作作品では、「トップをねらえ2!」が一番近いだろうか。あるいは叙情性という意味では「プリンセスチュチュ」? 佐伯昭志監督が脚本・絵コンテを担当した「ストライクウィッチーズ」第6話「いっしょだよ」、同2期「空より高く」といったエイラーニャ回の匂いを感じる人もいる。あと自分的には佐伯監督は「フリクリ」のニナモリ回の人。

星が大好きな中学生、すばるはある日の放課後、宇宙からやって来たプレアデス星人と遭遇した。
地球の惑星軌道上で遭難した宇宙移民船を直すため、プレアデス星人は地球人の中からエンジンのカケラをあつめる協力者を召還したという。
ところが集まったのは1人のはずが何故か5人!
「魔法使い」に任命された5人の少女たちはそれぞれ何かが足りていなくて、力を合わせようにもいつもちぐはぐで失敗ばかり。おまけに謎の少年まで現れて、こんなことでエンジンのカケラを回収して宇宙船を直すことはできるのか??


かわいそうな宇宙人を助けようと、未熟さゆえの無限の可能性の力を武器に、
友情を培いつつ、カケラあつめに飛びまわるすばるたち5人。
宇宙と時を翔る、希望の物語。


「会長」と呼ばれるプレアデス星人が、それぞれ別の運命線(≒平行世界)から呼び寄せた5人の女の子+αが主人公。彼女たちはカケラ集めのため、魔女のほうきを模したドライブシャフト*1に乗って学校を飛び出し、深海から成層圏、月、土星と飛び回り、最終的には銀河の果てまでたどり着く。すばるたちを遠くへと導くその技術はきわめて科学的でありながら、映像はとてもメルヘンなものに仕上がっている。海だったから水着、で、カケラが飛んでったのでそれを追いかけて宇宙に飛び出す第3話「5人のシンデレラ」に始まり、ファンタジーで且つえっちな見どころも。この話数に関する監督の「最初の宇宙だからやっぱり肌で直接感じてほしかった」というのもなかなかぶっとんでる。


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私が好きなのは第2話「星めぐりの歌」冒頭の、まだ部室がない中、教室のカーテンの中とか廊下とか階段の踊り場とかで宇宙規模の話しているところ。地球を出ても銀河系を脱出しても、彼女たちはエピソードの最後には学校に帰ってくる。冒険は、あくまで放課後だけ。意図的なストーリーの反復の中で、でも、回を重ねる毎に遠くへ、より遠くへと飛んでいく。そのリズムに乗って、視聴者は次回への期待をますます高めていく。


すばるたちはいずれも聡い少女だ。とはいえそれとは別に彼女たちの抱く悩みは13歳(中1)だからこそのもので、ストーリーも同様。これが14歳になるとなかなかこうも綺麗な話に収まっただろうかむつかしかったんじゃないかと思うのは、これもおおむねガイナというかエヴァが撒いた種なんだけど。


さて。すばるたちのカケラ集めを事あるごとに邪魔してくるのが「角マント」。その姿は、すばるが不思議な温室で会う「みなと」というミステリアスな少年と酷似していて、彼の正体というのがこのアニメの一つの鍵となってくる。このみなとくん(角マント)を演じているのが桑島法子。6人のレギュラーの中では一番のベテランだ。


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桑島法子が演じるキャラはよく死ぬ、と言われ始めたのは「機動戦士ガンダムSEED」とその続編「SEED DESTINY」から。これ自体は、まあ長く声優やってればそういうこともあるかもね、という都市伝説以上の何物でもない。ただ彼女の内にこもった声の、ある種の「重さ」がそのような連想をさせてしまうというのはある気がする。デビュー間もない「スレイヤーズTRY」の頃から、彼女の声の有する悲劇性は、当時の林原めぐみを喰いかねないほどのものがあった。


*1:逆?

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秋田禎信『血界戦線 オンリー・ア・ペイパームーン』 映像化も望まれる良ノベライズ

www.adventar.org


※この文章は、秋田禎信関連アドベントカレンダーの一日目の記事です。


内藤泰弘原作「血界戦線」のTVアニメ2期が、2017年に放送されることが決定した。ストーリーなど詳細はまだ明らかにされていないが、ノベライズでありながら一部の人から映像化を望まれているのが、「魔術士オーフェン」などで知られる秋田禎信による小説版血界戦線「オンリー・ア・ペイパームーン」だ。


元々秋田と内藤は趣味の洋物トイなどを通じて「血界」連載以前から交流があったのだけど、仕事で組んだのはこれが初となる。

「それで、どっちが私のパパ?」レオとザップの前に現れた少女。彼女の一言が、この世界の未来を賭けた戦いのはじまりだった。秘密結社ライブラの語られざる物語、ノベライズ!!


この小説ではレオナルドの視点を通して、未来からやってきたという自称ザップの娘・バレリーが引き起こす騒動が語られる。ザップという男はどういった人間であるのか、ひいてはレオとザップの関係は……といった辺りが話の肝。副題は「あなたが私を信じてくれるなら、紙で作られたお月さまでも関係ない」と謳ったジャズのスタンダードナンバー「It's Only a Paper Moon」と、それをフィーチャーした1970年代の映画「ペイパー・ムーン」からの二重のオマージュ。後者は詐欺師の中年と母親を亡くした9歳の女の子の旅を描くロードムービーだ。



It's Onlly A Paper Moon/Nat King Cole

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「ライトノベル傑作短編アンソロジー」をちょっと本気出して編んでみた

一般にライトノベルは短編が少ないとされている。書き下ろし長編のシリーズ物がメインというのがその主な理由だろう。ドラゴンマガジン電撃文庫magazineに掲載されるのも、シリーズ物の外伝短編が多い。でも、たまにミステリのアンソロジーとか読むと結構シリーズ物の1作品が収録されてたりするし、よほどそのシリーズの根幹を成す作品で他の奴も読んでないと分からないとかじゃなければ、別に問題ない気がする。ということで、自分がシリーズ、ノン・シリーズ物問わず好きな短編を挙げてみる*1。シリーズ物でも基本的に1話完結のやつを選んだつもり。

野村美月「鑑賞部の不埒な倫理」

美術室の窓から見える音楽室でいつも練習している、吹奏楽部のあの人を好きなだけ眺めるたに。真田大輝と藍本ルチアは、今日も今日とて絵を描きもせず美術室に居座っていた。見ているだけで満足で、決して告白はしない。自らの決めたルールを遵守する二人の間には、次第に奇妙な友情が芽生えていき……。


野村美月にとって、恋愛とは理不尽を受け入れることである。この短編では、端的にそれが示されていて、端的だからこそ破壊力がある。『部活アンソロジー2「春」』に収録。後にこの短編を第1話とするシリーズ「SとSの不埒な同盟」なる長編も生まれた。


田中ロミオ人類は衰退しました 妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ」

現人類の文明が衰退し、摩訶不思議な力を持つ新たな人類「妖精さん」が台頭している世界。両者の仲を取り持つ調停官の「わたし」は、増えすぎた妖精さんと共に移民した新天地で一から国を作り始める。


文明の誕生から国家としての急速な発展、衰退から滅亡までをコミカルに描く。『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンドも絶賛したとかしないとか。F先生の「すこしふしぎ」な作品群が好きなら。『人類は衰退しました 4』に収録。


*1:中篇くらいの長さのやつも混じってるけど気にしちゃだめよ

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上遠野浩平『パンゲアの零兆遊戯』 強靭な意志と固い信念が試されるジェンガ

上遠野浩平の新作は、ノン・シリーズ物のゲーム小説。講談社ミステリーランドの一作として刊行された『酸素は鏡に映らない』以来のハードカバー単行本となる*1。同じく祥伝社の、これはノベルスとして出ている「ソウルドロップ」シリーズと僅かながら繋がりがあるようだけど、そちらをちゃんと追っかけてない私でも楽しめた。今年初めに出た『無傷姫事件』や『恥知らずのパープルヘイズ』と並んで上遠野入門あるいは再入門に最適なのでは。

特別感受性保持者―Especially Sensitivity Totally Bringerの頭文字から“エスタブ”と呼ばれる超人たちによって争われ、その勝者の“予言”が世界経済の流れを決定すると言われる“パンゲア・ゲーム”。タワーの如く卓上に積み上げられた777個のピースを移動させ、誰が崩すかで勝敗を決する一見単純な遊戯だが、“未来視”ができる者たちが戦うとどうなるのか?この究極の戦いの場に、かつて前人未踏の連勝記録を打ち立てたあと消息を絶っていた伝説のプレイヤーが復帰、息詰まる死闘の幕がいま上がった!『ブギーポップは笑わない』の著者が贈る、究極の頭脳&心理戦!


この手のゲームを取り扱ったフィクションの醍醐味の一つは、それぞれのプレイヤーの人間性がむき出しになることだろう。そして、強靭な意思を持ち、固い信念を貫き通した奴が何よりも強い。しかし、本作ではピースをひとつ引き抜く度、その信念は本当にお前を強くしているのか? 慢心の元になってるだけじゃないのか? と問いかけてくる。

*1:ノベライズの『恥知らずのパープルヘイズ』もだけど

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