周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「魔法陣グルグル」を語り尽くせ メルヘンとRPGギャグとおっさんの狭間で

なんと言っても、ククリがめっちゃ可愛い。あ、無事に全24話の放映が終了したアニメ「魔法陣グルグル(2017)」の話です。

【ククリが初恋】系三十代男子の今


一本目のアニメは当時単行本が三巻しか出てない原作で四五話持たせるために、オリジナルストーリーを交えて展開した。それでも間延びして感じられることがなかったのは、スタッフの力量故か。所々「甘いものな~んだ?」なチョコレートのエピソード、ククリ悪魔化、かっこいいポーズ、風の谷がギップルの故郷等、微妙にその後の原作とかぶる展開が。これは原作者がアイディア出してたらしい。二本目はその続編だけど、これも完結までは行かなかった。


今回はスタッフ・キャストを一新して、原作の1話から改めてスタート。旧シリーズ完結までの映像化を目指す。旧作の、吉田古奈美さんのククリは小動物的な可愛さがあったけど*1、今回の小原好美さんのククリは等身大というか、あの頃僕たちの隣にいてほしかった女の子感が、とても、すごく、好き。周囲の【ククリが初恋】系三十代男子の「ククリkawaii」大合唱が、Twitterでの毎週の恒例行事になってる。ていうか基本的にキャスティングが神がかってる。彼女がヒロインを演じた「月がきれい」もそうだけど、アニメ的な過剰さがない日常物、青春物のおかげで、こういう演技の需要も増えたなあって思う。最近は「ウェヘヘヘヘ」みたいな汚い笑い方も板についてきた。2ちゃんねる「漫画板最萌トーナメント」の初代優勝者の称号は伊達じゃない!


……惜しむらくは、原作に比べてちょっと細すぎることかな。ケベスベスがえっちな踊りさせてるシーンとか。栗まんじゅうには程遠い。



一見一枚岩のように見える【ククリが初恋系】三十代男子も、内部では

  • ククリこんなにエロ可愛かったっけ派
  • 当時はいけたけど今は罪悪感が先行して邪な想いを抱くの無理派
  • 昔も今もククリは無垢な少年時代の象徴であってそういう対象じゃないんだよなあ派
  • は? 20年間ずーっとククリのお尻はいっこうに最高ですが?派


に別れて、醜い争いを繰り広げている。「グルグル」がえっち漫画として当時の子供たちの性の目覚めに関与したのは間違いない。特に、レイドが納屋に連れ込んだククリを押し倒すシーンは印象深い。さっき買ったばかりのおもちゃが藁の上に転がってる描写に、作者・衛藤ヒロユキの本気を感じて戦慄した。でも、可愛い絵柄のせいか、男性キャラからは生々しいスケベったらしさはあまり感じられない。ケベスベスですら、女の子にえっちな踊りをさせたがるの画像は性欲より悪戯心のほうが勝ってのことのように読める。エクールちゃん(18)のところに通ってたニケ? ほら、恋心とそういうスケベ心って別物だから……


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エロいとかエロくないとかはさておき、そりゃ俺だってククリに勇者様って呼んでもらいたい。でも俺はニケじゃないんだ。


第1話。会ったばかりの泣いてる女の子に、その女の子の得意分野のことをさらっと聞いて笑顔を引き出すイケメンムーヴ*2。しかも多分本人は意図せず。 ククリはニケのことが勇者様だと最初から信じて疑わないけど、男の子として好きになるのはこういうことが積み重なっていった結果なんだよなあ。ぼくにはとてもできない。

ドラクエ4コマからの連載開始~RPGギャグ漫画として


衛藤ヒロユキの名前が一般的に知られるようになったのは、「ドラクエ」の公式アンソロジーコミック「ドラゴンクエスト4コママンガ劇場」から。特に「Ⅳ」を題材にした4コマを多く発表。ゲームの設定、あるあるネタを活かしたシュールなギャグで人気を得た。キャラクターではミネアがお気に入りだったみたい。この成功を経て、オリジナルのRPG風ファンタジー「魔法陣グルグル」の連載が始まる。


衛藤の「ドラクエ4コマ劇場」が掲載されている『グルグルランド+』


連載誌の「月刊少年ガンガン」は、「ドラクエ」で儲けたエニックス*3が「よっしゃ少年誌でも一発当てたろか!」と意気込んで――かどうかは知らないけど――創刊した漫画雑誌だ。RPG的なものを意識させる連載作品も少なくなかった*4。前述した「ドラクエ4コマ劇場」や公式コミカライズである「ロトの紋章」、「ハーメルンのバイオリン弾き」なんかもそうだろう。


「グルグル」も「ドラクエ4コマ」時代の流れを引き継ぎ、RPGのパロディとして、ひとまずは評価された。


主人公ニケ(13)のオヤジは若い頃勇者に憧れてたけど、魔王がいなかったから冒険の旅には出ず。代わりにニケを勇者として育てることに。「魔王ギリ」が復活した今の時代に生きてるニケは幸せものだという。母親は母親で、「勇者より魔法使いになりたいな。魔法はかっこいいし」という息子を、「勇者は競争率高いけど一発当てれば将来安心」と現実的に(?)説得する。二人に押し切られたニケは旅立つ前のしきたりとして、村外れに住む魔法オババを訪ねる。そこで出会ったのが、ヒロインのククリ(12)。彼女は魔法陣から力を引き出す「グルグル」という魔法を使う、「ミグミグ族」の最後の一人だった……。


出だしからしてこんな感じで、以降も終盤まで事あるごとにRPGネタがぶちこまれる。また、ドラクエ風の黒いメッセージウィンドウに小説で言うところの神視点の語りを入れてく手法は、旧作アニメで横尾まりのナレーションがつくことによって、一種バラエティ番組みたいな面白みを発揮してたと思う。


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3番目、外伝にて、本編ではとうとう辿り着けなかった領域にまでレベルアップしているニケ(LV16)とククリ(LV15)。


私が好きなのは、コミックス7巻「きりなしの塔」編エピローグ。レベル2の勇者がひとつ上がり、レベル3のククリと《おそろい》になったと喜んでたらククリはレベル4になってた、というエピソードだ。「数値化できない魅力を書きたい」のでキャラクターの身長とか年齢を設定するのすら苦手な衛藤ヒロユキが、RPGファンタジーを書いてく中で「好きな男の子とレベルが《おそろい》だとうれしい女の子」を描くことで数値化にロマンを見出したんすよ……。


なお衛藤本人はかなりのゲーマーで、一時期ゲームライターとしても活動してたくらいなので、ゲームが嫌いとかはまったくない。以下は2017年時点の衛藤のオールタイムベスト。


また、実際に「グルグル」連載開始前に「フラグの国のアリス」というゲームを制作している。PCエンジンで稼働するディスクマガジン「ウルトラボックス」収録のRPGである。


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メルヘンファンタジー、少女漫画として

ところで、衛藤は「4コマ漫画劇場」楽屋裏でドラクエについてこんなことを言っている。「ドラクエの最大の特徴は「カワイイ」ことである」。今手許にないから確認できないけど、確か、鳥山明によるモンスターのデザインがおどろおどろしくなくて親しみやすいとか、そんなニュアンスだったと思う。


「グルグル」も、可愛さにおいては引けを取らない。ただし「ドラクエ」とは別種の可愛さだ。女の子は、もちろん可愛い。冒頭で述べたククリを始め、ジュジュ、ミグ、ルンルン、チクリ魔、ミウチャ、クルジェ。衛藤にはサブカルいロリコンのセンスを感じる(褒)。『グルグルランド+』のインタビューによると、ククリは「フランスやイタリアよりは東ヨーロッパにいるような感じ」「赤毛のアン」、雑誌「オリーブ」に出てきそうな感じだとか*5。ジュジュはブルトンの「ナジャ」やエンデの「モモ」、長田弘「サラダの日々」のジュジュなどのイメージ。おっさん含む男性陣も、いい意味で少年(あるいは乙女)の心を残してるキャラばかりで、なんというかマッチョなところがない。ニケククがインピオい所以だ。モンスターもキモかわいいのが揃ってる。後半に登場する連中は「まどか☆マギカ」でブレイクした劇団イヌカレーっぽい雰囲気があるかも。


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ファンタジーとしての「グルグル」は、少女漫画や児童文学由来のメルヘン分も非常に濃い。これは、当時無数に存在したCRPGの影響下にあったFTの中でも、異彩を放ってたように思う。ジュジュのイメージのところで挙げた作家の他に、影響を受けた少女漫画家として、大島弓子岩館真理子陸奥A子、小説家ではブラッドベリジャン・コクトー稲垣足穂などを挙げ、そこからファンタジー観を支える哲学を吸収していったという衛藤。そういえば「綿の国星」に初めて触れた時、「この空気知ってるやつだ!」と感じたなあ。彼の漫画家としてのデビュー作もそういう系統だった。その後、ゲームライターとしての仕事、ドラクエ4コマを経ての「グルグル」で少女趣味を入れたのも、意識してのことだったという。


最初に衛藤のその方面の資質が前面に出たのは、コミックス2巻に収録されている外伝「ククリルク」だ。「夜はあたしの時間でした」。グルグル使いとして世間から秘され昼間は外で遊べない8歳のククリが、夜の外出で出会った初めてのお友達……。


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4つ目の画像はククリが戦闘時に初めて魔法陣を描くシーン。ページ中段のスピード感から一番下で「たん」っていう柔らかい音に収束するのがとても好き。ワンピースなら ど ん ! にすることを た ん にする。少年漫画としてのグルグルの特異な……までいくと言い過ぎだけど、まあそんな


まだニケと出会う以前のこの話は、童話的な優しくポエミィな語りが印象深い。また、「グルグルは子供の願望を実現する、ごっこ遊びの一種である」という本編の重要な伏線として機能してる。


当時の年少ファンにとっても、「魔法陣を描く」というのは呪文詠唱同様に人気のごっこ遊びだった。後半は魔法陣の形がどんどん複雑になっていって、そういう面は薄れたけれど。ごく身近なアイディアを魔法に、ファンタジー世界に投影してしまう手腕には魅了された。私はヨンヨン召喚(トイレへ行くためのUFOみたいな鳥)とミグミグ劇場(続きが妙に気になる寸劇を開始し、敵の動きを止める)と妖精の迷路(暇な時の落書きの意。敵を迷路に閉じ込める)、すてきなおようふくやさん(毛糸玉で敵の動きを封じる。無理やりほどこうと思えば思うほどもつれていく)が好きです。


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「ククリルク」がこの時点の原作の中で特徴的だったのは、その雰囲気に茶々を入れるキャラクターがいなかったという点に尽きる。クサい展開になると「ハァ~ックサ~!」と悶え苦しむギップル。スネ毛丸出しの腰みので踊るキタキタオヤジ。本編で衛藤のメルヘン分が首をもたげてくる度、彼らは身を張って邪魔してきた。グルグルのギャグは、RPGネタ、おっさん、デタラメな言語感覚の三つでできていた。


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オルタナティブ少年漫画としての「日本一熱い少年漫画誌」ガンガン


……邪魔してきた、というと語弊がある。少年漫画としてのバランスを取ったというべきか。


11巻あとがきの「やっぱりグルグルはギャグです。ゲームの合間にトイレでウンコしながら読んでいただければ最高です」というコメントは、本気でゆってたのか照れ隠しなのか。私には、ギャグを同じくらい、メルヘンに溢れたストーリーにも力を入れてるように感じた。


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でも、衛藤はしきりと掲載誌の「少年誌」という冠に対する自分の少女漫画志向を気にするけど、ガンガンってそんなに「少年漫画!」って感じでもないよね。どんどんガチBL色が強くなってく「南国少年パプワくん」があり、ほわほわなショタキャラがかわいい夜麻みゆき刻の大地」があり、後に「ARIA」でブレイクする天野こずえ浪漫倶楽部」がありと。あるいは、看板作家である衛藤がそういった誌面を開拓したのか。


一方ではおっさんくささ全開の久保田まこと「GOGO!ぷりん帝国」や純粋な少年の性の目覚めとなった西川秀明「Z-MAN」、笑いの取り方がある意味ものすごく少年誌らしい「電撃ドクターモアイくん」などが連載されてて、バラエティに富んだ誌面ではあった。それが徐々に女子厨学生路線に寄っていった感はある。そちらの層との住み分けを狙ったんではないかと思われる兄弟誌「Gファンタジー」が創刊されても、流れは止まらなかったように思う。今は読んでないからどうなってるか分からないけど。

アラハビカ編~完結まで 物語は失速したか


衛藤のメルヘン趣味は、「アラハビカ」編でピークを迎える。魔物と人が共存する、楽しくも摩訶不思議な町*6に隠された秘密とは。ストーリーテラーとしての作者の才能が存分に発揮されたエピソードである。ククリのニケへの恋心が暴走して、最後はミュージカル仕立てのバトルが繰り広げられる。彼女の生み出したメルヘンワールドは毎度のごとくギップルがオチをつけるけれど、その様子はえらくアリバイ的というか、こいつが出てこなきゃ終わらないからとりあえず出しとくかみたいな空気すら当時は感じられた。ギャグもメルヘンはストーリーの両輪であり、どちらか片方では進むことはできない、と気づいたのは少し経ってからのことだった。


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乙女マインドを完璧に理解する五十男のデリダさんが素敵


以降はギャグ要素が減ってストーリー路線に傾いてつまらなくなった、というのは多くの人が指摘するところではある。でも読み返してみると案外そうでもない。アラハビカ編の次は「地の王」編、地の王と言えばRPG世界にニケが迷い込む「ゲソックの森」編だ。RPGギャグが好きな読者の望む路線にむしろ戻った感すらある。連載当時この手のネタは本作以外でもあらかたやり尽くされてたと思われたにも関わらず結構読まされたのは、さすがというべきか*7。やりたい放題したアラハビカからの揺り戻しもあったんだろう。前述の「やっぱりグルグルはギャグ」発言もこの巻だし。


リアルタイムで読んでるとき、キャラクターの等身が高くなると同時に芝居が固くなってギャグも精彩を欠くようになったな、とは感じた。それでも以降の「花の国」編、「爺ファンタジー」編、「ジタリの遺跡」編と光るものはあった。なかなかそちらに目が行かないのは、時間の流れが止まっている島「レフ島」編の印象が大きいんだろうか。今回のアニメでも、このレフ島編は全体の陰影の印象をガラッと変えた異色のエピソードとして演出されていた。


2003年、「魔法陣グルグル」は完結する。ギリのいる島にたどり着くと謎のじいさんファンザムが突如現れて、「儂を知らないだと!? これこれこういうイベントをクリアしていれば、あのファンザムだって……!? となっていたはずだったのに、すっぽかしたな!?」とか言い出したのは、打ち切りによる駆け足の展開を暗示していたんだろうか。


終盤の不満点を一つ挙げるなら、魔王ギリのキャラクターが全く掘り下げられなかったということに尽きる。90年代FTの多くは「ドラクエ」などの既存のファンタジーの再構築が見ものだった。「グルグル」も例外ではない。【勇者】は「みんなが寄ってたかってその夢をかなえようとするもの」。「世の中に「おかしい」と言える勇気。すなわちツッコミ=勇者の拳が奇跡を起こす勇者の力」【神様】の仕事は「運命の糸をあやつって奇跡という絵を完成させる」ことであり、それを人は「伝説」という……。


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「地の剣」は大地の力を借りるので有線


【魔王】に関してだけは、衛藤は何故かそういった独自解釈を披露せず、いかにも魔王っぽい魔王を登場させた。他のモンスターやレイドやカヤのような愛嬌は微塵もなく、ニケやククリの可愛さと向こうを張る圧倒的シリアスな魔王かというとそうでもない。まあ二人の恋路に比べれりゃ魔王なんてと言わしめるための存在とゆわれればそうなんだけど……


最初のアニメの最終回では、ラストバトル寸前までいったのに「やっぱや~めた」してお家に帰ってしまう。反則気味だけど、非常に「グルグル」らしく、だからこそ原作のギリにはどんなラスボスなんだろうと想像の余地が残されていたのだけど……。今回のアニメは最終回に限り不完全燃焼だった原作を大幅に改変してて、それに対しては肯定的ではあるんだけど、でも俺の好きだったグルグルならもっともっと踏み込めたんじゃないかっていうまだ満たされない想いが残ってもいる。

そして続編へ


続編「魔法陣グルグル2」では、新たに現れた魔王はククリと同じグルグル使いということで、因縁のある相手となっている。


「おいしいものにはⅡがある」「勇者はⅡが真骨頂」。新たな魔王の出現に、ニケとククリは再び旅立つことに。しかし、旧作の最後で子供である期間が終了しグルグルは使えなくなっていたはずではなかったか……? という当然の疑問を序盤は引きずりながら、読者は読んでいく。「たしかに大人になっても子供として何かを成す人間はいないでもないが、そっちはそっちで道はきびしいぞ! 勉強よりもよっぽどな」 これは、衛藤自身の経験から来る言葉でもあるんだろう。 


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大人になる、といえば旧作の終盤でククリからラッキースケベを受け取ったニケは「胸が大きくなったんじゃないか?」と気づく。同じエピソードで勇者の「毛」がクローズアップされてるのは意図してのことなんだろうか。「毛」は、おっさんのものだ。ニケは男の子であっても男ではない、と思ってた私にはそちらのほうが驚いた。


思えば旧シリーズにおいてククリに比べてニケの成長がはっきりと描かれているとは言い難い。この文章の最初の方で示したようになまじ最初からククリの「勇者様」だったことが、かえって彼の変遷をぼやけさせているような気はする。恋愛についても、最初から最後まで基本的にククリに押されっぱなしであった。でも、ニケには今やせな毛もちち毛も下の方の毛も生えている。一方ククリは、「誰にでも(キス)するなら、あたしにはしないで!」と言えるだけの経験値を手に入れた。続編は、その辺りもクローズアップされそうだ。いや下ネタじゃなくてね。


「グルグル」よりも「男の子」感が強い青春アーバンファンタジー「がじぇっと」。エニックスお家騒動で創刊されたコミックブレイドマッグガーデン)で連載
 

終わりに


「グルグル」は、「ガンガン」は、メジャーな週刊少年漫画誌とは違う、オルタナティブな価値観を私に提示してくれた。妹の「りぼん」を借りて読むようになり、長じては「Girlish comics for Boys and Girls」と銘打った「コミックハイ!」的なものに惹かれ。今では妖精たちがたわむれる未就学児向けのサンリオアニメ「リルリルフェアリル」にハマるようになったのは、間違いなくあの頃の影響がある。


今回のアニメの感想を巡っていて、フェアリルアイコンの人をしばしば見つけてうれしかった。世界は時折こんなふうに、想像もしなかった繋がりを見せてくれる。


*1:旧作は他にも南央美こおろぎさとみかないみか西村ちなみなど動物系声優が多い

*2:まあこの時のグルグルの怖いイメージが後々まで尾を引くわけだけど

*3:この頃はスクウェアとの合併なんてまだ全く予想もしてなかった

*4:とはいってもこの時代のRPG/FTブームはガンガンに限った話ではない

*5:最初は神秘的なエルフの女の子を考えていたという

*6:アラハビカはアキハバラアナグラム、というのは広く知られている。遺跡「パンフォス」はソフマップ

*7:でも尺がキツキツな今回のアニメではストーリーの進行上さして問題がなかったこのエピソードは丸ごと削られてる