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周回遅れの諸々

90年代にオタクとしての青春を過ごした人のブログです

三木一馬が電撃文庫を離れて始めた「出版エージェント」、その先達

とある魔術の禁書目録」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」「ソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生」などを担当した有名編集者で電撃文庫編集長の三木一馬氏がAMWを退職し、新しく会社を立ち上げたそうです。社名を「ストレートエッジ」といい、なんでも「出版エージェント」をやりたいとか。現在契約している作家は上記のシリーズの原作者である鎌池和馬、川原轢、佐島勤伏見つかさイラストレーターのabecなど。

 

 

わたしは全く出版関係の人間ではないけれど、端的に言えば「出版エージェント」「作家エージェント」とは出版社あるいはアニメ製作会社などと作家の間を取り持ったり、作品の著作権管理を行ったり、時には自ら出版物を企画編集刊行したり、という業務を行うところだと認識しています*1。これにより作家は複数の編集者との煩雑なやり取りや版権管理などといった業務から解放され創作活動に集中できる、なんて利点があるようです。

 

著作権エージェント - Wikipedia

 

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T.O.Entertainmentの以前の会社概要から)

 

で、こういった形態というのは、氏も語っている通り、漫画、ラノベ、文芸などを得意とするところに限ってみても前例がいくつかあります。

 

ボイルドエッグズ

www.boiledeggs.com

 

ボイルドエッグズは、欧米では一般的であるらしいけれど日本ではあまり馴染みのなかった「出版エージェント」という言葉を広く世に知らしめた会社です。早川書房の編集者だった村上達朗が1998年に立ち上げ、また自ら「ボイルドエッグズ新人賞」を主催しています。契約したことのある作家には三浦しをん滝本竜彦万城目学などがいます。

 

らいとすたっふ

www.wrightstaff.co.jp

 

らいとすたっふは、1991年、田中芳樹の二次版権管理会社としてスタートした会社です。契約作家は田中を始めあさのますみ、天野頌子、横山信義など。他に梶尾真治赤城毅なども関わったことがあるようです。近年、「銀英伝」の再アニメ化などで名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。「銀英伝」「アルスラーン」などの電子書籍配信も。なお、現在は作家との新規契約は行っていないとのことです。

 

T.O.entertainment

www.toenta.co.jp

 

T.O.entertainmentは角川書店富士見書房)でライトノベルなどの編集者をしていた本田武市が2003年に設立した会社です。エージェント契約したことがある作家として秋田禎信冲方丁榊一郎三田誠大石圭結賀さとるなど。……が、2016年現在、公式サイトの会社概要からは以前に掲出されていた業務内容や取引先などの情報が削除されていて、今もエージェント業務を継続しているのかどうかは分かりません。他にアニメや映画のプロデュースなども行っています。自社の出版レーベルであるTO BOOKSは「魔術士オーフェン」新シリーズで有名で、他にもジャンルに囚われない出版活動を展開してきましたが、現在はなろう小説の書籍化やライト文芸などがメインになっているような気がします。

 

d.hatena.ne.jp

 

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秋田禎信を追っかけてきた人間として色々思うところはなくはないのですが、多分現在の秋田の多様な活動はTOなしには実現できなかったんだろうなあ、というその点においては心から感謝しています。

 

コルク

corkagency.com

 

コルクは、講談社の漫画編集者だった佐渡島庸平が2012年に立ち上げた、まだ新しい会社です。契約作家は阿部和重伊坂幸太郎安野モヨコ小山宙哉曽田正人など。

 

ラクーンエージェンシー(大極宮

大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき 公式ホームページ『大極宮』


それと、1992年に大沢在昌個人の事務所から出発して、後に京極夏彦、宮部みゆきが所属、02年に株式会社化されたラクーンエージェンシー(大極宮)というのもありますが、これは話を聞いていると少々毛色が違うような、そうでもないような……。

 

今後の電撃文庫ラノベ業界

昔に比べ、ライトノベル業界は異なる版元間を作家が自由に行き来してあっちこっちで作品を発表する、ということが多くなりました。単純にレーベルが増え選択肢が広がったということもあるでしょう。ただNO.1レーベルである電撃文庫を看板するような人気作家は、上遠野浩平などの一部例外を除いて他所で書くことがあまりなかった気がします。それほど作家にとって居心地がいいのか、編集部が何か積極的に囲い込みを行っているのか……。特に鎌池和馬のような速筆の作家は、出版枠にも限りがあるだろうに何故ひとつの版元のみに留まっているのか不思議でした。

 

インタビュー中で三木一馬は、この独立によって契約作家が今後電撃で書かなくなるようなことはないと再三強調しています。これは他のエージェント及び契約作家も同じで、出版社から独立しても、引き続きお得意先として付き合っています。一方で出版エージェントというのは、作家がひとつの版元とだけお付き合いするならそもそも必要性が薄い業種であると理解しています。引き続き電撃と仕事をするにしても、新たに他所で書けば必然的に前者の割合は減る。それとも、社外取締役に角川の偉い人が名を連ねてるし、ラノベを出す時は電撃文庫固定だけどそれ以外は……みたいな感じになるのでしょうか。この辺りが電撃の、そして業界全体の今後にどう繋がるのか気になります。

  

 

*1:業界の方、間違ってたら指摘してください

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