周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

エロアニメの新潮流「イノベーティブアニメ」「インモーション技術」

※今回特に知識的な裏付けが皆無で印象だけで物事を語ってるので、いつも以上にガバガバです。

 

一般向けでは、アイドルアニメのダンスシーンなどをフルCGで制作することが当たり前になったように、成年向けでもこの数年で定着した表現技法がある。メーカーの広報は「イノベーティブアニメ」「インモーション技術」なんて呼んでいるらしい。この文章を読んでいる人にも覚えがあるんじゃないだろうか。情報サイトやDVDパッケージの裏に載っているスチールが原作そのままの美麗な絵で、ワクワクしながら視聴してみたら、動きがやたらカクカクしていて、おかしいな……? ってなるアレのことだ。

 

印象としては全編Flash形式のエロアニメ、だろうか。げっちゅ屋emily原作「らぶコロン 1」のPVが公開されてるので、そちらを参照。この手のアニメはカクカクさ加減を隠すためかPVがないことも多いのだけど……。

 

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この手の作品がいつ頃からあったかというと、なんだか2000年前後のセル→デジタルの過渡期でも、「デジタルコミック」とかゆわれるような類の似たやつを見た気もする。

 

けど、現在に至る流れという意味では、MSピクチャーズという製作会社のAnimanレーベル第一弾タイトル「オフサイドガール」(2007年)がこれに当たるんじゃないだろうか。「マンガアニメ化」と銘打たれ、まあ実際には原作の構図そのままに色と音声がついただけという代物で、この時点では漫画を原作にしたアニメというよりはアニメっぽく見せてる漫画というほうが近い。けれどその後何本かタイトルを重ね、2010年の「BUST TO BUST」辺りになると、我々が知っている、ああいった感じのアニメにかなり近くなっている。


その後、2011年にmediabankがQueen beeという専門レーベルを設立。第一弾は井ノ本リカ子原作「放課後にゃんにゃん」。第二弾、師走の翁原作「ピスはめ!」は6巻続くヒット作になり、Queen beeはレーベルとして軌道に乗って、インモーションエロアニメを一躍有名にした。

 

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Queen Beeの公式サイト。タイトル横に原作者の名前がクレジットされている辺り、まず原作のファンに向けて売りたいという意識が見られる

 

これらの二社に加え、2015年には実写AVをメインとしているkm produceが設立したEDGEや、Animanと同じMSピクチャーズのchippaiもラインナップの中にもこの手の作品がある。爆発的に増えているわけでもすごく売れているわけでもないけど、大体毎月何かしら出てるような印象があって。月に10本かそこら新作が出る程度の小規模な業界では一定のポジションを確立している……ように見える、というのが現状だ。

 

 

インモーション技術を使って、コミックでしか味わえなかった世界観をそのままにお届け。」というQueen Beeの決まり文句から伺えるとおり、この手のアニメのウリは、まず原作の絵柄をそのまま再現できていることだろう。

 

……再現というか、漫画をそのままトレスしてるんだろうか。原作漫画をスライドショー形式で表示していく映像と、原作漫画を収録した小冊子が特典としてお約束になりつつあるのは、原作と比較して何恥じることないないという自信の現れなのか、むしろ原作人気に寄りかかっているということなのか…….。例えばピンクパイナップルの「辰美」監督の作品のように、わりとぐりぐり動くけどキャラデザはその人の色が全開、というのとどちらがいいかというのはこれはもう好みの問題でしかないけれど、選択肢が増えるのは悪いことじゃない。

 

また、これは素人考えなので違ってたらゲラゲラ笑ってほしいのだけれど、コストも普通にアニメを作るのに比べれば抑えられているような気がする。というのはスタッフロールを見ると「作画監督」「原画」のクレジットが見られないからだ。比較的近そうなものとして「デジタル動画」があるけど、これはあの直線的なピストン運動を描き出すやつだろうか。この時点で大分経費節減していそうな雰囲気がある。

 

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「くりぃみぃパイ 1」のスタッフクレジット。 原作⇒企画⇒監督⇒コンテ演出⇒デジタル動画⇒色彩設計……と続く。

 

一方で欠点は言うまでもなく、動きの単調さ。Queen Bee設立から既に5年が過ぎた。制作過程での技術的なアレコレは分からないけれど、観ている限りではそこら辺でナニカ・スゴイ・ブレイクスルーが起きたようには感じない。滑らかさというのがほとんどない。画面を三分割してそれぞれのコマで別々の動きをさせ*1、一つ一つの単調さを目立たなくさせる、とかそういった工夫がせいぜいだろうか。

 

わたしは90年代後半から00年代前半にかけての、一般向けでも作画崩壊が連発して、現在の比ではなく省力主義が目に見える時期にアニメファンとして育った。だから動かない事自体にはそんなに文句はないんだけど、あのカクカクさ加減はもうちょっとなんとかならないものかな……と歯がゆい想いをしつつ今日もエロアニメを観ている。今月のピンパイの新作「こいなか」、よかったです。

 

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*1:右でおっぱいタッチ真ん中でキス左で……とか