周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「このすば」のアクア様とカズマさんがオーフェンとコギーだった

数多の異世界転生物がヒット作を飛ばしている。中でも「この素晴らしい世界に祝福を!」は特に、90年代を生きた人たちにある種の郷愁をもって迎えられているみたいだ。


曰く「めぐみんの爆裂魔法はスレイヤーズのリナが使うドラグスレイヴだ」「じゃあめぐみんのライバルであるトモダチいない巨乳のゆんゆんはナーガ?」「めぐゆんはあの日僕らが夢見たリナーガの姿」「直球でファンタジーRPGパロやってるという意味ではフォーチュン・クエストなのでは」「いやグルグルだろう」「クズマさんのクズっぷりはむしろあかほり作品の主人公のそれでしょ」「いやなりきれてないじゃん」云々。


私なんかはアニメだけで言えば、なんだかんだで「これはゾンビですか?」が雰囲気的には一番近いと思うんですけどね。同じ金崎貴臣監督×上江洲誠シリーズ構成の。ラブコメのラブが薄めで疑似家族っぽいところとか。そういえばあっちでもドラスレパロやってたなあ。



さて。私は「オーフェン」が特に好きだったので、そっちと絡めて話すと(平常運転)、カズマさんとアクア様の関係は現代に甦ったオーフェンとコギー(無謀編時代)に見える。

オーコギの話


オーフェンは、90年代に一世を風靡したファンタジー魔術士オーフェン」シリーズの主人公。元はエリート魔術士だったけど落ちぶれて金貸しをやってるチンピラ。一方のコギーはコメディータッチの外伝「オーフェン無謀編」のヒロイン。ペーパーテストはできるので警察のキャリア組として採用されたけど、実務が壊滅的にできない。通称「無能警官」だ。以下は相手に対するお互いの認識。

「任務完遂率は限りなくゼロに近く、根拠のない無意味なミスから発生するトラブルは、どこまでも果てしない。始末書は一枚見かけたら、書き直しも三十枚!なにかにつけて迷惑で、善良な市民の生活を脅かすこと犯罪のごとし!」
「きゃぁぁぁっ! もーやめてぇぇぇっ!」
「今日も今日とて、街の治安を徹底的に挫滅轢断! まさに人災権化! なにゆえ国家はこのよーな竜巻女に給料を払うのか!? 人民は悲痛に叫ぶ―――俺の税金を返せ―――!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ひとしきり彼女の絶叫を聞いてから―――
テーブルの上にうつ伏せになったまま、うぐうぐとのたくっている彼女の耳元にそっと近寄って、ぼそりとささやく。
「俺の税金を返せー」
「いやーっ!}
再びびくんと跳ねるようにして、床に転げ落ちるコンスタンス。

「彼はオーフェン。なんか魔術士らしいですけど、今はおおむね下町の小悪人です。口は悪いですけど、性格は、極めて悪いとまではまあ言わないでおいてあげてもいいんじゃないかと、おいしいものを食べて昼寝している時なんかは夢うつつにそう考えてしまうこともたまにはあります」


「無謀編」はコギーが厄介な仕事を押しつけに来て、なんだかんだ世話焼きのオーフェンがそれに振り回される、というのがひとつのパターンだった。オーフェンはあの世界の魔術士の特徴の一つとして、性差廃絶主義者と書いてフェミニストと読む人なので、黙って振り回されてるばかりではない。気に入らなければ女でも蹴倒し、昼メシをたかり、戦闘時にはバリアーとして使い、困窮が極まると財布からお札を抜く。それでもコギーは「減俸はいやー!」と泣きわめき、すがりつく。

「わたし……明日をも知れない貧苦にあえぎながらも無報酬でわたしの手伝いをしてくれるあなたを見るのが……好・き♥」

「……減棒されちゃうと、新しい日焼け止めのローンが払えないの」
「日焼けだけ止めて飢えて死ね。俺の知ったことか」


オーフェンが一方的に世話を見てるようでも、コギーは曲がりなりにも警察官。その社会的立場と自分で稼いだおぜぜで、オーフェンをいぢめたりもする。年上として時々思い出したようにお姉さんぶるし、実際彼女の姉性が強いところに、根っからの弟気質のオーフェンは頭が上がらないところがあった。


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カズアクの話


「このすば」の主人公カズマさんは、元ひきこもりニート。なんのスキルもない状態で異世界に転生してきたけど、持ち前の幸運とずる賢さでなんとかパーティーを率いてる。俺のようなクズでなければ百戦錬磨の問題児どものリーダーは務まらんって人。


アクア様は、カズマさんを異世界に転生させようとして自分も引きずり込まれちゃった、水の女神。その能力は健在でアークプリーストとしての力量は凄まじいものがあるけど、知力が絶望的に足りない。強い敵に無策で挑んだり、せっかく稼いだ金を一晩で酒に使い切ったり。その度、カズマさんに泣きついている。通称「駄女神」。



アクア様には姉性のようなものはない。けど、なんだかんだゆって善人もとい善神ではある。自分を偽物だと決めつけ石もて追ってきた信者たちを「うちの子」と呼び、絶対に見捨てない。カズマさんもなんだかんだそれが分かってるから、手を貸してしまうんだろう(ほんとか?)。

恋愛未満の男女の腐れ縁


二組のコンビの共通点は、女のほうが物語への導き手であること。男のほうが女の面倒見てるようで、実は力関係はシーソーみたいに揺れ動いてること。男女関係なくどつきあうこと。そして、男女が恋愛で結びついていないこと。まあ最後のに関しては、オーフェンさんは誰に対してもそんなところあるけど。

「ずるいわよ~、オーフェン。自分だけ逃げようなんて」
「なにがずるいんだ!? もともとは、てめえの身内だろうが!?」
「確かにそうだけど! あなただって無関係じゃないでしょう!?」
「ほほう。貴様、義妹(いもうと)と関係を持ったと?」
後ろから無遠慮に顔を出し、言ってくる男に、オーフェンは怒鳴り返した。
「断じて違うわっ! 不名誉なっ!」
「不名誉って……」
複雑な表情で、汗を垂らしてコンスタンスがうめいている。


カズマさんは同じパーティーのめくみんやダクネスには普通にエロい目を向けてるし、二人もカズマさんを憎からず思ってる。でも、アクア様は全くそういうのとは無縁だ。


カズマさんも健康的な男子。一度、納屋の隣で寝てるアクアさんに夜這いを試みようとしたこともあったけど、ピクリとも反応しなかったとか。アクア様もアクア様で、カズマさんが夜な夜な一人ゴソゴソやってるのを見て見ぬ振りをする情けが存在したとか。


そんな二組だからこそ、カップリング妄想が逆にはかどる。別に恋愛的な関係でなくとも、二人が仲良くどつきあういつもの光景を見てるだけで楽しい。カズアクは分からないけど、オーコギは実際男女問わずCP人気もあったみたいだ。


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「このすば」のヒロインレースではめぐみんやエリス様が大人気らしいけど、負けるなアクア様! がんばれアクア様! アクシズ教徒旧オーコギ派が応援してるぞ!

主人公を物語に誘うお姉さんキャラ


考えてみたら、俺って昔から、主人公を物語に誘うちょっと抜けてるお姉さん(と主人公)ただし恋愛的な意味ではくっつかないキャラが好きだったなあと。


幽遊白書」だとぼたんのおばちゃんくさいところ、幽助との相棒感とか好きだったし。「ドラゴンボール」も、そもそもの冒険の発端になったブルマと悟空の組み合わせが好き。結婚した悟空を見たブルマが「あんなにかっこよくなるとは思わなかった」「外した……かな……」(恋人のヤムチャとは喧嘩ばかり)って吐露してみたり、その後にベジータと出会ったブルマが「寂しそうだったから」という理由でくっついたのは、自分の人格形成に多大な影響を与えた、と思う。


オーフェン」と同じ作者が書いた「巡ル結魂者」のメイマスモゴリアも、この手の物語への誘い手のお姉さんポジションだった。


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ところでこれまで恋愛未満の関係がいいってゆってきたんだけど「オーフェン」旧シリーズの約5年後に発表された作品でコギーがぽっと出の新キャラとくっついた時はやっぱりぐえーってなったんですよ人間そんなもんですよどうせアクア様もそこらのぽっと出の男キャラとくっつくんだ作者自ら「カズマと結婚してうまくやっていけそうなのはアクアくらい」とかゆっといてその仕打ちなんだそうだそして散々シコれないだのアクア様? まあ小動物的な可愛さだよねとかゆってた人たちがクリティカルなダメージを受けるんだそうに決まってr