周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「ぼく勉」小林くんに彼女ができて寝込む ラブコメの親友キャラについて

週ジャンで連載中の「ぼくたちは勉強ができない」(筒井大志は、現在単行本が5巻まで発売中。今特に勢いのあるラブコメだ。



主人公の唯我成幸くんは苦学生の高三で、要領の悪さを努力でカバーしてきた秀才。大学進学の費用が免除される特別VIP推薦を餌に、二人の学生への学習指導を仰せつかる。文系の緒方文乃、理系の緒方理珠。彼女たちはテストの度に成幸に苦渋を舐めさせて天才だが、実は文乃は理系の、理珠は文系の進路を歩みたいと考えており、しかも彼女らはそれらの科目に関しては大のポンコツなのだった。途中からは、水泳部の期待の星だけど勉強はからきしの武元うるからも加わる。受験勉強の中で、成幸は彼女たちに好意を抱かれるようになっていく*1

小林陽真くんというキャラクター

小林くんは、成ちゃんの小学校時代からの友人の一人。親友の置かれた境遇――母子家庭で家計が苦しく、長男として頑張らなくてはいけないことを知っていて、何かと気にかけてくれる。


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うるかちゃんがしきりと成ちゃんに授業のノートを写させてもらったり、親友に「たかり」をしているように見えて、よく思ってなかった時期もあったり。ちょっと愛が重いくらい。成幸→小林くんは「小林」呼びなのに、小林くん→成幸は「成ちゃん」呼びなのがもう。そんな彼の献身的な態度に好感を持った。


ヒロインを喰いかねないくらいの美形でもあることも含め、「お、お前女だったのか……!?」からのヒロインレース参加展開では、と読者に噂されることもあった。私はというと、いやあそれは色々台無しでしょうとも思ってたんだけど。成ちゃんのデフォルメ作画が増えてどんどん可愛くなってくので、キリッとした顔立ちの小林くんとはお似合いで、そういう妄想をかきたてられることはかなりあった。夏休みに入ってからは、出番が減って寂しかった。


「ぼく勉」自体は普通のラブコメなんで、親友キャラがそう頻繁に登場するわけではない。とりあえず人気投票では一票を投じ、これで人気があることが分かって一回くらいメイン回が来ないかなー……と思っていたところ、先週号でいきなり熱愛発覚した。


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お相手は、うるかちゃんと同じ水泳部の海原智波さん。うるかちゃんの恋をこれまた水泳部の川瀬さんとともに応援し、「川瀬隊員」「海原隊員」と呼び合ってる。成ちゃん、小林くん、うるかちゃん、海原隊員は全員中学時代からの知り合いでもある。部活の大会で敗退して落ち込んでたところを小林くんが慰めたのが、付き合いだしたきっかけらしい。


この話数は、親友の海原隊員がキスしてるのを見てうるかちゃんが奮起するという回。それぞれの親友のことは、言ってみれば踏み台に過ぎない。にも関わらず、私はそれ自体にえらいショックを受けた。その後のうるかちゃんkawaii! 展開なんて全く入ってこなかった。この記事タイトルにあるように寝込んだのは、多分低気圧のせいだと思いますけど。

男だって男にモテたい

女の子にモテたい。っていうのはそりゃまあ大部分の男に共通する見解だろうけど、男にモテたいという気持ちも当然のようにある。男女別け隔てなくモテたいのと男にモテたいのは別の感情なのか。よく分かんないけど。だから、ハーレムラブコメの主人公も男に好かれてほしい。現実に周囲を見てると、女の子にモテてた――というか真っ当に恋愛できてた奴は大抵男相手にも気を遣えるいいヤツだったというのが経験則で*2、だからハーレム系主人公に男の友人が少ないのは不自然だまである。



一口に男にモテる、親友キャラとゆっても色々ある。

  • ハーレム戦記物「魔弾の王と戦姫」のルーリックは、最初主人公ティグルを見下してたのがその実力を知り180度態度が変わる。言わば舎弟タイプのキャラ。なかなかのイケメンだったのが、主人公を騙そうとしたその「けじめ」と称して主人公の下に着くに当たり剃髪してしまう。ハーレムラブコメの主人公の輪の中に入るに当たって剃髪するというのがなんか去勢させられてるようで、「宦官かお前は」って思った。
  • 舎弟とゆえば。野村美月の「ヒカルが地球にいたころ…」は、「源氏物語」を翻案したラノベなのだけど、主役は原典では光源氏のお付きキャラだった是光。不慮の事故で死んだ光源氏=ヒカルが愛でた女たちの「その後」をお世話したり、また親友の婚約者だった子といい雰囲気になったり。ラブコメの親友キャラ論争に一石を投じる作品だった。
  • ギャルゴ!!!!」「神明解ろーどぐらす」などの比嘉智康作品は、ヒロインたちにイケメンムーブを発揮する主人公に向けられる、モブ男どものヒューさすがギャルゴさんだぜえー! みたいな野次馬ムーヴが楽しかった。
  • 一緒にバカやるタイプの親友では、「ゼロの使い魔」のギーシュが記憶に新しい。
  • MAJOR 2nd」中学編は男女比3:6の野球部を描く。スポーツ推薦で入ってきた仁科は典型的な調子に乗ってる新入生キャラだったけど、頻繁にコメディリリーフにされてたり、可愛げが増してきてる。
  • 新世紀エヴァンゲリオン」の渚カヲルや「涼宮ハルヒ」の小泉一樹はコミュ力めっちゃ高いイケメン。恋愛感情のあるなしに関わらず、男だってイケメンに好かれれば嬉しい。
  • セイバーマリオネットJ」は男しか生まれないので男色が当たり前の世界。花形御剣は主人公の小樽君にべた惚れで、ヒロインの女性型アンドロイドたちを嫌ってるウザキャラなんだけど、不思議と憎めないやつではあった。子安武人の演技のおかげだろうか(アニメ限定)。


小林くんは、この中ではカヲルくんや小泉に近いかなとは思う。この二人ほどにはヒロインとは絡まないけど。


ブコメ、特にハーレム物の親友キャラのポイントは、なんとゆってもヒロインに手を出す可能性があるかどうか、ということに尽きる。良い悪いは別として、そういった展開は、その先どういったお話にしたいのかの分岐点になってしまう。上に挙げた作品も、そういう観点から見てる物が多い。


小林くんは、序盤こそ結構チャラい印象が先行してたものの、登場する度にそういった挙動は息をひそめていった。もう一人の成ちゃんの友人、大森がこの手のラブコメにありがちなトラブルメーカーとしての役割を引き受けたことにより、小林くんは「ちょっと都合良すぎない?」というくらい、いい奴として描かれるようになる。

ショックを受けた理由が自分でもわからない

自分は、小林くんが海原隊員と付き合いだしたことの、一体何がそんなにショックだったのだろう。彼は、成ちゃんのハーレムを侵してはいない。くっついたのも作中で小林くんのことをかっこいいとゆっていた海原隊員で、成ちゃんとは微塵のフラグも立ててなかった。この手の親友キャラがサブキャラ相手であってもくっつくのは許せない! って人もいるかもだけど、自分はわりと許容範囲内だ。


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単に親友が自分*3に黙って恋愛してるっていうのが、置いていかれたようで寂しかったのか。キスの仕方がなんか慣れてる感じだったからか。それとも、こば×なる推しって自分では冗談半分でゆってるとは思ってたんだけど、心の深いところで案外本気だったのか……。


ストーリー構成としては、成ちゃんに「うるか」と下の名前で呼ばれるようになってにへらーってしてるところへ、自分たちと同じように下の名前で呼び合って、しかもキスまで済ませて一歩先まで行ってるところを見せつけられる、っていうきれいな流れだとは思うんですよね。しかも、読者はそれまで知らなかった*4小林【陽真はるま】、海原【智波ちなみ】という下の名前をここで初めて提示されることで、二人の関係がより強く印象づけられ、成ちゃんうるかちゃんの驚きとシンクロさせられる。うるかちゃんは「今はこのままでいいかな……」という台詞が似合いすぎるほど似合う低燃費ヒロインなので、もっと焚きつけるべき。


しかし、それにしても、ああ、小林くんを寝取った海原隊員が憎い……いや寝取ってないけど……浮気した旦那より浮気相手を攻める奥さんの気分だ……もしくは、少年漫画を801目線で読んで推しがヒロインとくっついたら叩くアレそのもの……


*1:うるかちゃんは中学時代から片想いしてるけど

*2:ただし男にモテる奴が必ず女性にもモテてたわけではない

*3:っていうか成ちゃん

*4:よね?