周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

エヴァオタが《第九》を初めて生のオーケストラで聴いた感想

今年2016年は、自分にしてはアクティブにイベントに参加したり映画に観に行ったりした。その締めとして、12月20日(火)、六本木のサントリーホールで行われた《第九》のコンサートに行ってきた。演奏は読売日本交響楽団通称「読響」。指揮者はドイツのマルクス・シュテンツさん。合唱は新国立劇場合唱団。


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エヴァから第九にポロロッカするオタク


そもそも私は、《第九》やパッヘルベルの《カノン》などクラシックをBGMにたくさん使っていることで有名な「新世紀エヴァンゲリオン」で目覚めたオタクだ。あの弐拾四話「最後のシ者」で、カヲルくんが宙に足を踏み出したと同時に弐号機がかっと目を見開いて、そして第4楽章が流れ出した瞬間から、いつか《第九》を生で聴いてみたいという思いはうっすらとあった。ただクラシックには全く詳しくなかったし、コンサートに参加する自分、というのを想像すらできなかった。1998年に行われた「エヴァンゲリオン交響楽」のコンサートは、音源がCDになるまで存在すら知らなかったし……。確か中学か高校の頃に市民会館で行われた市の楽団の演奏会が、最初で最後のクラシックコンサートだったはず。



意識が変わったのは、昨年夏に西武ドームで行われたアイドルマスター」の10thライブに連れてってもらってから。それまでポップスのコンサートって安室奈美恵のやつと坂本真綾のやつくらいしか行ってことなくてしばらくご無沙汰だったけど、意外と楽しめるなって思った。その年の暮れには、日本橋三井ホールで行われたコンサートで、妖精かなんかだと思っていた新居昭乃*1の実在を確認した。で、そういえば今頃は第九の季節だなー来年は行ってみようかなーと思い立った。声優とシンガーソングライターとクラシックのオーケストラ。全く繋がりはないんだけど、どれもアニメが発端、というのが自分らしいとゆえばらしいかなと。基本的にマジカルバナナみたいな思いつきだけで生きてます。声優といえばライブ、ライブと言えば新居昭乃の年末ライブ、年末ライブといえば第九、みたいな。



夏の終わりに本格的に行きたいという気持ちが強くなって、チケットぴあから年末のものを探してみると、たくさんある。会場はサントリーホールNHKホール、Bunkamuraオーチャードホールなどの名前が目立つ。オーケストラは国内ではNHK交響楽団読売日本交響楽団東京都交響楽団新日本フィルハーモニーなどがよく挙がっている。指揮者は重要だそうだけど、会場や楽団以上に分からない。……結局、スケジュールなどを考慮して、サントリーホールでの読響の公演に落ち着いた。一つ、重視したのは基本的に《第九》のみの公演であること。初めてなのに二曲も三曲も聞くと、感想がぼやけそうだったので。チケットは、争奪戦、というほどのものもなく、普通に取れた。開催日が平日だったからだろか。


それから当日までは、ベートーヴェンの曲を作業用BGMに聞いてたらあっという間に過ぎた。ドレスコードは、サンダルとTシャツとかだと流石にアレだけど特に気張る必要はないとのことなので、ノーネクタイ、黒のジャケットにワイシャツ、スラックスと失敗しても大外れしなさなそうな感じに決めた。

師走のサントリーホールに潜入するオタク


当日。18時30分開場と遅めだったので、最寄り駅は東京メトロ南北線六本木一丁目のところ、丸ノ内線赤坂見附駅で降りて、赤坂や東京ミッドタウンなどを散策。会場に着いたのは17時過ぎ。周辺は赤坂・六本木の歓楽街からは少し離れてるけど、会場が入ってる赤坂アークヒルズにはショップやレストラン、喫茶店などもあり、時間を潰すには困らなかった。ホールの中には軽食コーナーもあったけど、混雑時は座席がなくて立食形式を余儀なくされてる人の姿も。


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会場内は、男性はスーツ(ネクタイつき)がなんだかんだ一番多かったかな。時間的、場所的に会社帰りかも。でも近所のイオンにちょっと買い物に来たって体の老夫婦もいたし、彼女連れのジーンズにブルゾンの青年もいたし、学ラン姿の高校生も見かけた(音大志望かな?)。逆に気張りすぎると浮くんじゃなかろうか。


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19時開演。同じベートーヴェンの「エグモント」序曲を約10分演奏した後、何故か15分の休憩。……休憩終了後、いよいよ《第九》に入る。言い忘れてたけど、私の席はリーズナブル(婉曲な表現)な、ステージの裏側だった。元来、ここは音楽を聴くには不向きとされてるらしい、というのは小耳に挟んでいた。それでもこの席を選んだのは価格がお手頃だっていうのはもちろんだけど、「ゆっても素人には分からない程度なんでしょー」とたかをくくっていたからだ。でも、実際聞いてみると、素人の耳にもはっきりと分かるくらい迫力がなくて、そこは素直に後悔した。


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とはいえ、音を聞くばかりがコンサートじゃない。この席のいいところは、指揮者と向かい合わせの形になることだ。指揮者のシュテンツおじさんは笑顔の素敵な人で、演奏中、豊富なイントネーションでオーケストラを時になだめ、時にふるいたたせていた。楽譜をめくる手つきすら何百回、何千回と練習してきたであろうことがはっきりと伺えるもので、見ているだけで楽しかった。また、こちらはオーケストラを見下ろす形になるので、「あっこの人なんか楽器の調子に首をかしげてるな」とか細かいところが丸見えなのも面白かった。


《第九》は全4楽章から成る。ただ一番有名なのは「歓喜の歌」を含む第4楽章で、「エヴァ」で流れたのもその部分だった。でも今回、初めて意識して全体通して聞いて、この曲ってかなり起承転結がはっきりしてて、第4楽章は1章から3章があってこそ活きるんだなあ、という思った。これも、あのステージの背後の席で良かったと感じた一面だ。演奏者最後方、こちらから手が届きそうな位置に歌唱担当の人らが並んでたので、第4楽章で彼らが一斉に立ち上がって例の「Freude~」が始まった時は、自分も一緒に歌ってるようで(ソプラノで)、目標が第二コキュートスを通過してHeaven`s doorが開きそうになった。そりゃカヲルくんも「歌はいいねえ」って言うわ*2


公演終了後は六本木のオイスターバーにでも行きたい気分だったけど、その時点で既に21時近くで翌日も朝から仕事だったので、さっさと帰宅した。

それが唯一の絶対的自由なんだよ

歓喜の歌」はシラーという詩人の「自由賛歌」が元だという。自由意志を司る天使・タブリス=カヲルくんの主役回にBGMとして選ばれたのは、それが理由だろうか。私も今回自由意志であの席を選んだわけだけど、次にまた行く機会があるなら通常の席にしようか。「サントリー1万人の第九」みたいな自分も合唱に参加できる奴に応募してみたい気持ちも少しだけある。どうしたもんか。


*1:アニメやゲームに多く曲を提供している

*2:関係ないけど、「交響曲第9番《合唱付き》」って表記、今ならプリンタもつけちゃう! みたいなお得感アピールしてるように以前から見えている