周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「推し武道」経由でリアル地下アイドルの現場に行くようになって感じたこと

漫画「推しが武道館いってくれたら死ぬ」で地下アイドルの世界に触れてから一年半*1。ご縁に恵まれて、リアル地下アイドルのライブにもぼちぼち足を運ぶようになった……のにコロナの影響で現場がガンガン潰れてつらい


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さておき、実際に行ってみると地下現場は「推し武道」で描かれたものとは違うところもあった。原作者は「現場によって特典会のやり方やルールが違うのがおもしろい」とコメントしている。多分これが真理で、「地下アイドル現場はこういうもの」という正解はない。連載開始が五年前だからその間に変わったこともあるだろうし。でも、あの漫画で描かれる界隈と自分の見てる界隈がどう違うのか、それによってあの漫画がどんな面白さを獲得してるのかを知るために、ここで一度情報を整理してみたい。


なお筆者はアニメ・声優系の現場をほんのちょっとだけかじってから地下現場に来ました。だから、メジャー現場はほぼ未経験です。というか地上と地下の違いもまだいまいち分かってないけど。足を運んでるのは東京の諸現場です。


CDを積む


握手会など「接触」のために応募券がついてくるCDを複数買いする。こういったオタク像は、今や当たり前に浸透している。「ChamJam」はメンバー個別にCDを作ってて、それぞれのオタクは事あるごとにCDを「積んで」いた。買ったCDを頭に積んで帰るえりぴよの姿は修行僧のようで、絵面的にもおいしい。


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この漫画に触れて「CDを積まないオタクは悪*2」とドルオタではない人が思ったのなら、それは作品の世界観に引きずり込むのに成功していると言えるだろう。


私が見てきた地下現場では、新譜発表時やリリイベ以外ではチェキなら紙のチェキ券をそのまま購入するのが主流のようだった。物販でグッズを購入すると、たとえば何千円以上で別の――メンバー全員と写真が撮れるといった特典がついてくるけど、あくまでメインは紙のチェキ券購入。


以前とあるライブに行った時、そこを主現場にしてるオタクの人に「CD買う金あるならその分チェキに行ってくれ。そっちのほうがアイドル個人の収入になるから」と言われたこともあるけど、真偽の程は定かではない。でもこっちのほうが環境に優しくていいとは思う。

特典会のレギュレーションが渋い


ちゃむの現場は1k(CD一枚)の握手が5秒で、積んだ分だけ延長できるっぽい? チェキは2話で披露した新衣装の時のものが5k(CD5枚)。


この手の特典会は値段や時間の面で、おおむねメジャーよりも地下のほうがコスパがいいようだ。舞菜みたいに列が長くないなら、「剥がし」がゆるかったりするところもある。だからといってそれでオタクの出費が安く済むかというと、人によっては一人の推し相手に何周もしたりするから一概には言えないけれど……。


で、ちゃむのレギュは時間的にも金額的にも地下としては安いとは言えないみたい。


ただ、これは意図したもののようだ。きっかけは原作者が以前行った現場。たった5秒のためにオタクが色々試行錯誤してる、はたから見たらコスパ悪い特典会を見て、「ゆとりのある優しい接触よりドラマ性高いな!?」と感じたとのこと。


konomanga.jp


アニメBDの特典コミックではえりぴよがオタクになって初めてのワンマンが描かれている。この時は握手0.5kチェキ1kだったので*3、後にレギュレーションが変更されたのだろうか。外部イベだと無料のことも。

ハコがめちゃデカい


アニメでちゃむが定期公演に使っている会場のモデルは「白金高輪セレネb2」。2017年にグランドオープンしたライブハウスで、キャパは700名。劇中では立派なスクリーンにビームまで飛んでる。ここで定期公演やれるならすぐにでも地上アイドルになれるし武道館も夢ではないのでは、という声も。


原作者の平尾アウリ先生とでんぱ組.inc虹のコンキスタドール)の根本凪さんとの対談でもそこはツッコまれてた。山本裕介監督は、ライブについては「非日常的なオタク祝祭の場にしたい」ということで、ああした空間を構築したようだ。


www.excite.co.jpentamenext.com


私は会場を人気・集客に見合わない規模にすることで「売れない地下アイドル」から「運営は金持ってるけど売れない地下アイドル」にしたいのかと思ってたけど、別にそうでもないみたいですね……


ちなみに外観のモデルは岡山市にある「岡山スマイルホール」。実際にご当地アイドルの専用ホールとして使われているそうだ。こちらの収容人員は100名。

ペンラの有無


私が地下現場を好む理由の一つは、身ひとつでふらっと遊びに行ける点だ。会場が近ければ仕事帰りにふらっと寄ることも可能。


ちゃむのオタクはペンライト必須のようだ。舞菜のメンカラーはサーモンピンクだけど、キンブレでは再現しづらいのをえりぴよが愚痴ってた。けどリアルでは現場によってはペンラすら持参しないところも多い。オタクは代わりに拳を突き上げ、時にはモッシュに飛び込んだりリフトでアピールしたり振りコピしたり


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私はそこまでアクティブなタイプはないけど、ペンラ振ってるといつスッポ抜けるか不安なので、素手のほうが気楽ではあるかな。

前列後列


ちゃむの運営は人気で格差をつけるのが好きらしい。人気投票がその最たるものだし、ダンスでも演者が入れ替わり立ち替わりするフォーメーションを採用せず、後列組は絶対に前列に来られない。


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ここまで厳格に格差をつけてる地下グループってあるんだろうか*4。「センター」という概念すら存在しないところも多いんじゃないか。


格差をつけることで競争意識が、ひいてはドラマが生まれる。応援してる側もあの子を支えてやらなきゃ、となる。それはそうだ。でもそれを公開することで商売の材料にしようとすると、あの規模のグループでは意味を成さない……というかファンの間の対立を生むだけじゃなかろうか。別にはっきり順位をつけずとも、特典会の列の並びを見ていれば大体は把握できるのにね。残酷なことに。やはり運営は悪……(?

対バン・フェス


そういえば、ちゃむは岡山アイドルフェスに出演するまで、長いこと対バンやフェスに参加しなかったらしい。活動は専らワンマンや単独での外部イベント出演が中心。


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普段その現場に縁がない、でもアイドルに興味がある層に見てもらうには、複数のアイドルが出演するイベントに出演するのが早いのだろう。私のフォローしているグループもスケジュールを見ると多くがこの手のライブで埋まっている。入れ替わり立ち替わり登場するアイドルたち。持ち時間20-30分ほどでいかに初見にアピールできるか。これはアイドルにとってもオタクにとっても悩みどころのようだ。


でもちゃむは幸か不幸かこういった他のアイドルと見比べられる機会が今までほとんどなくて、だからグループ内で競っている……これはどちらかというとメタ的な見方かな。

グループ単位で応援する箱推しのオタクがいない


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DD(誰でも大好き)もいない。
つまり俺がいない。

あとは


周辺のオタクはライブの後大体打ち上げしてるイメージあったので*5ちゃむのオタクって酒飲まないなとかは思いました。けどまあそれは別にいいか。それはいいや。


*1:厳密には「推し武道」だけじゃなくて色々後押しはあった

*2:ただし玲奈ちゃんは別

*3:CDに付属ではなく特典券を購入するタイプ

*4:人数が多いと、ライブハウスのマイクの数や序列の関係でマイク無しでダンスのみというパターンはあるらしい

*5:なんならライブ中もドリチケでアルコール入れてる