周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

秋田禎信「エンジェル・ハウリング」フリウ編連載時次回予告集

月刊ドラゴンマガジン富士見書房)の2000年06月号~2004年03月号にかけて連載されていた小説、秋田禎信「エンジェル・ハウリング」(フリウ編)の次回予告集です。このシリーズは文庫書き下ろしのミズー編と連載のフリウ編が交互に進んでいくというのが特徴で、ミズー編の方には予告はありません。またフリウ編も文庫化された際には予告は未収録となっています。

第1部


生あるすべての存在を拒否する硝化の森で、フリウはさらなる邂逅を果たす。大気さえ息を潜める死の寒さの中で出逢ったもの。それは、彼女を楽園へと導く天使か、それとも煉獄へと誘う悪魔なのか……。鈍色に輝く物体が冷気を切り裂くとき、フリウの運命が大きく動き出す! 次回エンジェル・ハウリング第2話「スクウェア・ダンス(森に踊る)」。
胸の鼓動だけが、ただ熱い――


硝化の森で拾った少女を連れて、家に戻ったフリウとべスポルト。だがほんの数日の内間*1に、そこは以前のような安息の場所ではなくなっていた。村に現れた、黒く冷たい死刑執行人たちと赤く気高い炎の獣。明確な意志を持った危険がフリウたちを包み込もうとしていた……。次回エンジェル・ハウリング第3話「レッド・ライオン(真紅の獣)」。彼女の希望とは無関係に世界は動いている――


スポルトを狙う女の殺し屋。逮捕しようとする警衛兵。父に危機が迫っていることは明白だった。だがフリウの問いかけにべスポルトはなにも答えようとはしてくれない。会話は少なくても理解していたと思っていた義父の態度に苛立ち哀しむフリウの下したある決断とは? 次回エンジェル・ハウリング第4話「サリオン・ピニャータ(出会いと再会)」大切な物ほど一瞬で壊れてしまうから……


炎で焼かれた木や小屋。高熱で飴状に解け固まった地面……。村を探索するフリウとサリオンが見たものは黒衣と女精霊使いの戦いが残した生々しい爪痕だった。それは8年前に起きた事件をフリウに思い出させる。眼帯に隠された左目が見つめ続けてきた哀しい記憶とは? 次回第5話「ディスエンチャンテッド・メモリーズ(その昔、あったこと)」。
忘れたい。でも忘れてはいけない。


黙って娘への手紙を書き続けるべスポルト。静かにそれを観察するマリオ。そして音もなく現れた黒衣。沈黙が支配する部屋に、精霊が発動する音が響き渡るとき、新たなる惨劇の幕があがる。そして家路を急ぐフリウの前には、あの女殺し屋が傷だらけの姿で立ちはだかっていた。次回第6話「オーバートーン(広い世界のせまい一点)」。言葉では伝えられない想いを伝えたい――


「私に関わってはいけない」
やっとの思いで辿り着いた我が家。そこでべスポルトからフリウに発せられたのは冷たい一言だった。思いもしなかった義父からの拒絶にフリウは動揺する。しかし感情を整理する暇もなく、彼女の背後には黒衣の凶刃が迫っていた。次回エンジェル・ハウリング第7話「スピットファイア(破壊の精霊)」。分かり合える相手は、たった一人でよかったのに……。


純粋な破壊。そんなものがありえるのだろうか? しかしそれは間違いなくそこにいた――破壊精霊ウルトプライド。フリウの左目から解放されたそれは、原初の響きにも似た叫びをあげると活動を開始した。ただ殴る。ただ壊す。村が瓦礫と化していく様を、フリウはただ見つめるしかなかった……。次回第8話「ジャンピングオフ・プレイス(最果ての出発点)」。
全てを失った後残る物。それが罪。

第2部


書かれたものからは、つねに正しさが失われている――。サリオンは事件の報告書を作成しながら、監獄にいる少女について悩んでいた。フリウが破壊精霊を解放したことで多くの人が死んだ。しかし、彼女に他の選択肢はあったのだろうか? 椅子から立ち上がった時、彼の顔にはある決断が浮かんでいた……。次回「スタンディング・ギィルティ(罪人たちの夜)」。
後悔なんて死ぬ寸前にすればいい


闇の静けさは不思議と人の心を癒してくれる。牢を破り深夜の街中へと飛び出したフリウ。あてもない行動だったが、少なくともそれは彼女に考える時間を与えてくれた。これまでのこと、これからのこと。少しずつフリウが気持ちを固めているとき、同じ闇の中でサリオンもある決意をしていた――。次回「クライベイビー(そこがはじまり)」。初めは偶然。二度目は縁。そして三度目の出会いは絆となる


よい夢であろうと悪夢であろうとそれは関係ない。目が覚めた後にくるのはいつもひとりである。柔らかなベッドでたっぷりと眠り、身体の垢を落とし、服を新しく着替えたフリウとサリオンに襲ってきたのは、金がないという世知辛い現実だった――。次回エンジェル・ハウリング第2部3話「タイト・スクィーズ(旅路の入り口)」。先立つものがないと、シリアスでさえいられない。


早速の失態に、追い出されるように精霊狩りに向かうことになったダメハンターたち一行。だが彼らは、ダメはダメなりにリーダーを決めようと言い出し始める。そんな彼らを見ていると、養父といた昔を思い出してなんだか楽しくなるフリウだった……。次回第2部第4話「モンスター・ハンティング(狩り)」。時には流されるのもいい。じっとしていると生きることの重さに耐えられなくなるから。


マリオとベスポルトは一緒の場所にいる――サリオンの言葉にはやる気持ちを隠せないフリウ。しかし、マリオが隠れ家としていると予想される廃城は深い迷路のような山の中にあった。森の木々が、深い谷が、あざ笑うかのようにフリウたちを惑わしていく……。次回エンジェル・ハウリング第2部第5話「コナンドラム(ひとつの難関)」。草木は、人が思っている以上に騒々しい。


次から次へと異変に襲われるフリウたち。何かがおかしい――疑問をもつサリオン、そしてまったく意に介さない大声親父ハンター。意見がかみ合わないまま、時間だけは確実に過ぎていく……。次回エンジェル・ハウリング第2部第6話「トラシイ・トラップ(罠の道)」。危険――それは人生についてまわるもの。そして突然、降りかかってくるもの。


散り散りになったフリウたち。サリオンは親父ハンターと行動を共に、そしてフリウは黒装束に身を包んだ謎の老人についていく。老人が導く先には、何が待っているのか? 廃城、父べスポルト、あるいはもっと別の何かが? いま、絶望的な確信を込めて、老人が語り出す――。次回エンジェル・ハウリング第2部第7話「ブレスレス・トーキング(誘い)」。怪物は怪物同士、殺し合うがいい


鋼精霊を伴い出撃したマリオだが、半死半生で帰還する。興奮の冷めぬ鋼精霊は、硝化の森で初めてマリオに出会った時のことを、フリウに思いさせる*2。その精霊を沈め、マリオを介抱するリス。精霊は倒せる――静かに語る老人の言葉が、フリウの心にこだまするのだった。次回エンジェル・ハウリング第2部最終話「ストロー・ガール(彼女の決断)」。逃げ続ける人生なんて、つまらないから

第3部


帝都イシィカルリシア・ハイエンド――帝国の中枢、帝国のすべてそして「出来事」の発端の地。帝都の軍属精霊使い筆頭。ノニ・イシュカリスは、信じがたい話を帝から聞いていた。自分よりも強い精霊使いが生まれつつあるというのだ。さらに、帝はその精霊使いについて、ある命をくだす。次号エンジェル・ハウリング第3部第1話「パーフェクト・マン(帝)」。恐るべきは、精霊か、人間か。


フリウを探すため、リゼルは辺境の村にいた。だが、そこで見たのは、村人たちがつくった台に吊された女の死体。辺境は帝都とは何かが違っていた。次号エンジェル・ハウリング第3部第2話「インペリアル・トループス(悪を追う者)」。人は狂気からは逃れられない――近づくことはできても


フリウを追うノニ、リゼル、ミッツォ。だが彼らにもまた、近づく者たちがいた。黒い衣の下に、どんな素顔を隠すのか。超常の力をもつ、執行者・黒衣。辺境の村、その狭い一点に、人知を超えた念糸使いが集まっていた。次号エンジェル・ハウリング第3部第3話。見てはならない素顔もある。


精霊使いになれるのか? その問いに答えられるのは誰もいない。だが、残された時間を数えながら、フリウとリスは特訓を続ける。一方、ミズーの言葉を忘れられないサリオン。彼にもできることは限られていた。次号エンジェル・ハウリング第3部第4話。他人を疑い続けた後、人は自分を疑い始める。


自分にはどの程度、力がついたのか? 確かめたいという欲求を抑えることは難しい。念糸使いとして一歩を踏み出したフリウに、危険な試練の時が訪れる。次号エンジェル・ハウリング第3部第5話「ミドルブロウ(脱落の選択肢)」。気づいたときは、もう引き返せないところに立っている。


突如として目の前に現れた精霊使いの男。これまでに感じたことのない殺気に、フリウは己の立つ場所の危うさと脆さを知る。一方、ミッツォに捕らえられたサリオンにも、危険が忍び寄っていた……。次号エンジェル・ハウリング第3部第6話。力さえあれば、生き抜けると思っていたのに――


ついに精霊アマワと接触したフリウ。まどろみの中で何を思うのか。軍属精霊使いノニ・イシュカリスが処刑を行う時が、刻一刻と近づいている。そして、リゼルを襲った不思議な感覚の正体は? 黒衣の行動の意味が明らかに! 次号エンジェル・ハウリング第3部第7話。答えは記憶の中に在る。


眼帯をはずした左眼をさらけ出したフリウ。その喉の震えが伝えるのは、破壊精霊ウルトプライドを呼び出す「開門式」だった。運命の時、その一瞬が近づいている。次号エンジェル・ハウリング第3部最終話「エンジェルズ・ハウリング(御遣いの言葉)」。その眼には、世界の別の形が映っていた――!


※第3部最終話と第4部1話に半年の休載を挟んでいる関係で、後者の予告はなし。

第4部


この街に求め続けた人がいるのか? ここが旅の終わりなのか? 人目を避けながらフリウは先を急ぐ。たどり着いたのは、この都の裏の世界だった……。次号エンジェル・ハウリング第4部第2話「アナザー・ワン(許されざる鏡像)」。手に入れた力が、幸福をもたらすとは限らない――


帝都――フリウにとって未知の街は、サリオンにとっては8年ぶりの故郷だった。サリオンはそこで過ごした16年という歳月を思いやる。そして、街には“あの男”の姿があった。次回エンジェル・ハウリング第4部第3話「サプライズド・エンカウンター(偶発の働き)」。歳月は多くのものを奪っていく。


黒マントに顔を隠し、フリウは帝都をさまよう。穏やかに見える街並みに、フリウは自分の身の危険を忘れそうになる。だが、彼女は、徐々に、確実に、包囲されつつあった。次回エンジェル・ハウリング第4部第4話「マーチング・イントルーダー(囁く者の壁)」。〈約束〉は唐突に守られる


「既にひとり死んでいる。これからまた一人死ぬ」――夢の中でアマワが告げた〈約束〉は、本当に守られたのか? リスの生命が消えてしまったのか、否か、フリウは、その右眼で確かめなければならなかった。次号エンジェル・ハウリング第4部第5話。〈約束〉は、まだ、始まったばかり――


ついにべスポルトに再会したフリウ。べスポルトはフリウに、〈精霊アマワとの契約〉の内容を告げる。それは、思いもよらないものだった……。次号エンジェル・ハウリング第4部第6話「べスポルトシックルド(契約者の告白)」。君はまだ、迷路の入り口にすら、たどり着いていない――。


スポルトは去った。運命に召喚されて。彼はアマワを倒せるのか? あるいは死んでしまうのか? いてもたってもいられないフリウは、サリオンとともに戦いの場、帝都へと向かうが……。第4部第6話*3トークン・レジスタンス(帝宮の戦い)」。思い通りにいく戦いなんて、どこにもない。


赤い髪の剣士を見据え、フリウは破壊精霊を呼び出す。だが、精霊の攻撃は剣士に軽くかわされてしまう。力の差に愕然とするフリウ。追い打ちをかけるように剣士が告げる「わたしは……アマワではない」。第4部最終話「フェアー・ゲーム(帝都崩壊)」。かなえられる約束は、ただ一つだけ――

第5部


多くの言葉の意味を持ち去って、父・べスポルトは死んでしまった。父がたどり着けなかった運命を探すため、フリウは荒野へと足を踏み出す。かつて父が旅立ったように。第5部第1話「リトル・イマンシペイター(荒野にて再び始まる)」。荒野に吹き荒れる風は、少女を大人に変えていく――


荒野をさまよい辿り着いたそこは、心震える懐かしい場所。けれども二度とは戻れないと思ってい場所。一つの決意を胸に秘めてフリウは今、その場所に立つ。自分に出来ることを探して――。第5部第2話「ホームストレッチ(そこは故郷)」。人間はいつだって優しくなれるわけじゃない――。


二度と戻ってこない、永遠に姿を見せないことが、村人への最初の償い――。故郷での辛い言葉を背負いながら、フリウは硝化の森の奥深くをめざす。その奥に待つのは、果たして何なのか。父と同じものをフリウも見ることがあるのだろうか。――硝子の輝きが映し出すのは、過去か未来か。


森の一番奥に行きたい。そこに何もかも全部の元凶がある――。全ての答えを求めるように硝化の森の最奥を目指すフリウ。そこに何が待っているのか。フリウが求める最強の精霊は本当に存在するのか。父も故郷も喪ったフリウの旅はまだ終わらない。人はどうして一人では生きていけないのだろう


硝化の森――全ての始まりがそこにある。フリウがそこを目指したように、弟帝と謎の黒覆面の老人たちもまた森の最奥を目指している。森の奥に何が隠されているのか。そこに待つのは精霊アマワとの邂逅なのか。それとも――。
人はなぜ臆病なくせに、全てを確かめずにはいられないのだろう。


ついにフリウたちの前に姿を見せた弟帝たち。このまま全面対決は避けられないのか!? 破壊精霊を持つフリウは、このまま大人しく捕まってしまうのか。そして弟帝の思惑はいったい何なのか。兄帝との決着なのか、それともフリウと同じく精霊アマワとの決着なのか。人は運命に抗えないのか!?


いよいよ深くなる硝化の森。フリウが来るのを待っていたかのように姿を見せる精霊アマワ。それはフリウと同じ顔と声で彼女を森の最奥へと誘う。そこは「心の実在が証明される」場所なのか。フリウの旅の終わりに用意されたものは果たして――。振り返らず自分の信じるもののために進めばいい


あたしの知ってる一番強いもの。懸命に祈るフリウの前に姿を表したのは、あの赤い髪の剣士・ミズーだった!! 精霊アマワに翻弄される二人のヒロインの運命の糸は今ここで再び絡み合う! 次回「エンジェル・ハウリング」最終回。
――ヒトは天使の咆哮を聞く。

終わり


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http://sube4.hatenadiary.jp/entry/akitayoshinobu-hyoron-comiket94