周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

キッズアニメを愛する「大きなお友達」はいかに在るべきか

キッズアニメは誰のもの?


キッズアニメは子供に向けて作られている。これは大前提として納得できる。中には、これは「キッズアニメ」に当てはまるのか、放送時間などでは定義できない何かがあるのではないか――「ちっちゃな雪使いシュガー」とかね――という事例もなくはないけど、まあ例外と言っていい。オタクは本来の視聴者層のおこぼれに預かっているだけだ、というと言葉は悪いけど、そんなもんかもしれない。



キッズアニメは子供に向けて作られているから、「大きなお友達」は映画館や家電量販店のゲームコーナーなど、色んなところで本来のファン層「先輩」に、遠慮しなければならない。これも分かる。オタクがどうこう以前に社会的なマナーではあるだろう。


しかし、キッズアニメは子供のためのものだから、大きなお友達に受けたところで何の意味もない。このアニメにお子様人気がないことは関連商品の売上が証明している。現にウチの子は見てない。プラモデルは「大爆死」してるじゃないか……と、ここまで来ると、まあお引取りくださいお帰りはあちらですって感じかなとは思っている。


オタクが該当作品について語ってるところにやってきて、子供の評価を唯一無二のものとばかりぶつけてくる人をたまに見る。果たしてその子供というのは本当にその人の子供なのか。自分の主張のために子供をダシにしてるだけじゃないか……? 断っておくと、子供がこれこれこういう感想を持った、こんな反応をした、と聞くこと自体は面白いんですよ。でもそれは本来の視聴対象者だからオタクの意見より「正しい」というものではない。作品は子供のために作られる。作品を観た感想はしかし、あくまで視聴者一人ひとりのものだ。私というオタクは、別に子供の意見に追従したくてアニメを観てるわけじゃない。


問題は、大きなお友達向け商品展開が子供向けとしてのアレコレとかち合う場合だけれど……そこは正直、イチ視聴者としては難しい問題じゃよね、という他ない。


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初放映から10年20年経ったら大人向けの展開しても可、というのは折衷案としてアリだとは思うけど、「プリキュア」や「ドラゴンボール」みたいにずっと子供向けの前線に立ってる場合もあるわけでな……。自分が大人になっても子供の頃ハマった作品にはそのままでいてほしい、という人も少なくないだろうし……

キッズアニメ特有の文法


逆に、「このアニメは子供向けの枠を超えている」とか「キッズアニメでこんな表現いいのか」「お子様にはこのネタ分からないだろ」「大人でも観られる」といった褒め方もあんまり好きではない。大人にしか分からない「マジキチ」なパロディや毒のあるセリフ、常軌を逸した「カオス」な展開……。具体的にこういった要素に定評がある作品としては、「おねがいマイメロディ」「ジュエルペット」「プリパラ」などが挙げられる。「ひみつのここたま」も妙な方向で人気を得ているし、男児向けでは「遊戯王」なんかも結構すごいと聞く。長期作品なら「クレしん」も侮れない。わたしもこういった作品は好きだ。


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でも、それらは本当にキッズアニメにおいて異端なんだろうか、とふと思うことがあって。むしろ、子どもに向けられているからこそ、変に物語の整合性とか論理性を気にせずぶっ飛んだ展開がやれるんじゃないか。


キッズアニメ特有の文法というのは、果たして存在するのか? するのだろう。ただしそれは視聴者が思うほどには厳密に適用されるものではないと思う。別にキッズアニメで大人社会の世知辛さを描いたっていい。大人が共感できる=子供は共感できない、ではないのだ。座組についても同様だ。別に今をときめく大人気アイドル声優キッズアニメに出演したっていいし、名作女児アニメを制作した監督が深夜帯のスケベアニメを演出するのも珍しいことではない。

キッズアニメを馬鹿にするオタク


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キッズアニメを観ている友達が周囲にいない、キッズアニメなんてと馬鹿にされる。インターネットではこんな風に嘆く意見をよく耳にする。個人の感覚なんだからイチャモンつけてもしょうがないけど、これが私にはよく分からない。私のいたコミュニティでは、葉鍵月でエロゲ全盛の2000年前後でさえエロゲをプレイするやつは少数派で、むしろキッズアニメこそ主流だった。SNS全盛の時代においてちょっと観測範囲を広げてみても、キッズアニメを子供向けなんてと馬鹿にする人間より、キッズアニメを観てる自分を自虐気味に語る人間のほうが多い気さえする。


Web上で馬鹿にされてるのはキッズアニメより年齢層的にはちょっと上。つまり「中高生が好きそうなやつ」だ。私はこれを長らく「インターネット文化は大学生が主翼を担ってきたようなところがあるので自分たちが通り過ぎてきた地点を否定したいんじゃないか」と邪推してたけど――考えてみれば社会人でもこういった傾向はあんまり変わらないな。

終わりに


オタクとしての面白がりポイントはどんなアニメでも見いだせる。むしろ、私には多分そうした態度での視聴しかできない。そういう意味では、私の中でキッズアニメもそれ以外も平等だ。別にキッズアニメだから好きになる、とかいうことはない。大人向けとか子供向けとか関係なく、好きなものを好きなように楽しみたい。それだけのことなんだけど、それだけのことが難しいんだなあ。