周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

ゆるキャン△に影響を受けたオタクの冬キャンはバンガロー泊でもいいじゃない

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 ※今回掲載してる写真には、私以外に同行者が撮影したものも含まれています。


山梨の女子高生たちが冬にキャンプするアニメ「ゆるキャン△」にハマり始めた、1月下旬。大学時代の知人*1から連絡が来た。「2月下旬~3月のどっかでゆるキャンしませんか?」


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普段こういう誘いに対してあんましフットワークが軽い方ではないんだけど。ここ1,2年くらいお外で遊ぶ欲が高いし、ちょっと興味はあった。不安なのはやっぱり寒さ。手慣れてる人も一人しかいない。あと何の道具も持っていないということだった。しかしそこはテントを張るのではなく、バンガローを予定してて、寝袋なども借りられるとか。ならば、ということで、「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。テントを張らなきゃキャンプじゃない? リンちゃんも車中泊でもいいんじゃないってゆってたし!


それからメンバーの予定を調整するなどして、年度末も迫った3月の金曜。天気は快晴。三浦半島横須賀市に、5人の社会人が集まった。


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まずはひと通り横須賀観光。横須賀市は「はいふり」の聖地であり、まだまだ至る所に件のアニメのキャラがいた。昼ごはんは横須賀海軍カレー。ちょっと大人には甘すぎるか? また三笠公園では戦艦【三笠】の見学。VR東郷平八郎を堪能する。そして買い物を済ませてから向かったのは。


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長井海の手公園・ソレイユの丘

最寄り駅は京急三崎口駅で、そこからバスで15分。横浜から車で50分。そんなソレイユの丘は収穫体験、乗馬、温泉、バーベキュー、そしてオートキャンプなどが楽しめる横須賀市の施設だ。相模湾を一望できる臨海施設で、天気がよければ富士山も見える。見えた。


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三浦半島の農と海の体験パーク | 長井海の手公園・ソレイユの丘


キャンプはオフシーズンならデッキ付きオートキャンプが5,500円、フリーサイトが3,000円、バンガローはひと棟9000円*2シュラフのレンタルなどは別途支払い。私達が使ったバンガローは4-6名用のやつだけど、公式サイトを見たら総収容数12-16名となっていて、5人入ってかなり余裕があった。トイレと水場は徒歩1分で、なかなかきれいに掃除されてる。これで一人頭2,000円しないのはお安い。

*1:今回のメンバーの中で唯一既婚

*2:エアコン、電源つき

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【祝サイプラ電子化】フジリュー版「封神演義」の竜吉公主は「PSYCHO+」の水の森ちゃんではない

藤崎竜は代表作の「封神演義」よりも、10週打ち切り*1の初連載「PSYCHO+」のほうに愛着がある。というか、ヒロインの水の森ちゃんが好きでした。

  • 「PSYCHO+」ヘンな美少女とゲームで超能力開発!
  • 「TIGHT ROPE」「SHADOW DISEASE」ダークな短編群
  • 古代中華SFファンタジー「封神演義

「PSYCHO+」ヘンな美少女とゲームで超能力開発!


1992年。RPGブームに続き「ストⅡ」の爆発的ヒットで格ゲーブームが起きつつあり、ゲーム業界がノリにノッていた頃、この漫画は連載を開始した。



高校生の緑丸は生まれつき髪と瞳が緑色の突然変異体(ミュータント)で、周囲からは気味悪がられている。取り柄は、ゲームがめちゃくちゃうまいことだけ。彼は冬のある日、夜の公園で、自分の「緑」を「きれいね」と褒めてくれる人に初めて出会う。彼女の名前は水の森雪乃。優しい美少女はしかし、機械に負けるのが何よりも嫌で、自分よりゲームが強い奴じゃなきゃ付き合わないという変わり者だった。なんとかそれをやめさせたい緑丸だが、うまい方法が思い浮かばない。そんな時、放課後に立ち寄った中古ゲームショップで、妙に気になるソフトを見つける。「PSYCHO+」というそのゲームは、実は超能力を開発するゲームで――。


これは、ちょっと未来の話です、ということを示すために「FF7」や「ストⅢ」が絶賛発売中ということになってる、そんな時代に書かれた話だ*2。ゲーセンというとまだ不良の溜まり場みたいなイメージも生き残ってて。だから、好きな子がゲーマーで趣味が合って、っていうのはとても魅力的に思えた。ゲーマーヒロインとしては同時代に「ヤマモトヨーコ」がいたけどアレはラブコメ色が薄かったし、「ハイスコアガール」が連載開始するのは15年以上先という時代だった。作りとしてはちょっとラブコメラノベっぽいかも。


愛だ恋だというのは「封神」なんかの代表作だけ読んでると異質のように思えるかもしれないけど、短編に触れてるとそうでもない。



水の森ちゃんはゲームは好きだけど、ゲームが強い男と付き合いたいわけではない、と思う。言い寄ってくる奴がウザいからそれを口実にしてただけだ。だから緑くんは、「俺とゲームで勝負して勝ったら付き合って」とは言い出せない。あなたも私と付き合いたいの? と尋ねられて、一度否定してしまってるから。趣味の合う友達として遊んでるのは心地いい。クールな外見とは裏腹に自然に対して意外に優しいところや、ぶっ飛んだ姿、無防備な一面を見せてくれる。でも時々そのポジションに甘んじてることが歯がゆい。そんな関係。水の森ちゃんがなんだかんだで緑くんの本当の気持ちを知ってるような仕草を時折見せるのがまたズル可愛い。


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1巻の終わりでは、水の森ちゃんの元カレの一太郎(!)が登場する。ひと月付き合ったけど、ゲームのヒロインに夢中になってすぐに別れたという。実はそのゲームは、プレイヤーが次々と自殺してしまう呪いのゲームだった。事実を知った水の森ちゃんは、一緒に一太郎を助けてほしいと緑くんに懇願する。ひょっとしたらこれを機に寄りを戻してしまうかもしれない。そう思いながらも、彼女の弱気な表情を初めて見た緑くんは手を貸すことに。この切なさ。


一太郎編の後、物語のスケールがいきなり地球規模にでかくなる。「PSYCHO+」というゲームに秘められた謎とは。緑くんに課せられた使命とは。そして水の森ちゃんの本当の気持ちは。水の森ちゃんがここで見せる地球規模の博愛は、「封神」終盤の妲己ちゃんを思わせる。……新展開はしかし、たった3週で収束し、完結してしまう。いや、まあ、水の森ちゃんというキャラクターを形成してる重要な要素である元カレを4話目で出す時点で、んんん? なんか描き急いでる? とは当時思ったけれども。


……自分にとっては、10週打ち切りというものを初めてリアルタイムで味わった漫画かもしれない。もっと水の森ちゃんに振り回されたかった。

*1:正確には11週

*2:つまり連載期間中はまだどっちも出てない

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アイカツおじさん武道館への道~JOYSOUNDでアイカツ! 曲を歌ってはいけない

アイドルアニメ「アイカツ」シリーズの楽曲は、女児アニメとは思えないクオリティだという。音楽に疎い私には他の作品と比べてどうっていうのはよく分からないのだけど、自分が好きな曲に可愛いものより大人っぽいかっこいいものが多いという実感はある、かな。巷でゆわれてるところのクオリティの高さってそういうものではないとは思うけど。

私が好きなアイカツ

まあ大体聞いてもらえば分かると思うし、音楽的素養皆無なので、それぞれについての音楽評論的な文章は先人の文章がたくさんあるのでそっちを読んでもらうとして。


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「アイドル活動!2013」はこのアニメの代名詞とも言える曲のロックアレンジ。アイカツで好きな曲、大体「かっこいい」「ファンタジー」「かわいい」とカテゴライズできるのだけど、これはわからん……いちごちゃんのスイングロック衣装が可愛いから? アニメでの颯爽とした登場がかっこよかったから?


「Pretty Pretty」は、下地紫野の演技によってどっちかというとカタい印象のある二代目主人公の・大空あかりの、「もう嫌い! 泣いちゃうから!」とか、本編では聞いたことのない甘い声がたまらなかった。


あとは香澄姉妹補正で「Summer Tears Diary」とかアニメのMV込みなら*1Du-Du-Wa DO IT!!」や「Lucky Train」なんかも譲れない。

*1:アイカツデータカードダスと呼ばれるアーケードゲームとアニメでMVが異なる

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なつかしの異世界転生・召喚:不由美とロジャーの「魔性の子」 異世界は遠きにありて思ふもの

アメリカのSF作家ロジャー・ゼラズニィの著作に、Changering(1980)というファンタジー小説がある。赤子の頃、神話的な異世界と20世紀の地球で互いに「取り替え」られた、二人の男をめぐる物語である。邦題を『魔性の子』という。

強大な魔力を持ち、長年に渡ってロンドヴァルに君臨した魔王デットが、不意討にたおれた。魔王の血を継ぐただひとりの赤児は、すんでのところで命を助けられ、老妖術使いモーの手で、遠い昔に魔法が忘れ去られた世界、すなわち地球の技術者の赤子と取り替えられた。ふたりの子供は何も知らず、すくすくと育ったが、運命の影は密かに忍び寄っていた。


魔王の息子であるポールは地球で、技術者の息子であるマークは異世界で、それぞれ義理の両親に育てられた。彼らは魔力と科学技術という、自分たちの育った世界では異質な力を持っていて、それは一種の才能だったが、うまく周囲に適応できない要因ともなっていた。やがてマークの科学技術は異世界に災厄を及ぼすようなものへと変わり、彼を止めるためポールは生まれ故郷へと誘われる。


お話の構造は、ヨーロッパの伝承「取り替え子」に貴種流離譚を絡めたようなものだ。主人公とは別に異世界に召喚された人物を配置することで、主人公のオルタナティヴな可能性を示唆する。これは例えば渡瀬悠宇の「ふしぎ遊戯(1992)でも見られたものだけど、本作では別の世界に流されるという状況自体で対比を生み出す。



マークははっきり言って貧乏くじを引かされたキャラである。ポールの代わりに異世界に連れてこられ、村人たちの生活を便利にするために自動車を開発してもその技術は理解されず。神話的な世界に科学技術の粋を凝らした天を衝くような摩天楼を建て、機械の兵士たちに武装させて孤独な王と成り果ててしまう。唯一の理解者であった幼なじみの声も届かない。


ポールは、物心つく前に「取り替えられた」男として、それでもマークと分かり合えたかもしれなかった。マークの幼なじみは異邦人としての二人の共通点を指摘し、また恐れてもいる。しかし結局は実父ゆずりの魔法を、マークの帝国に向けることになってしまう。



ゼラズニィの『魔性の子』からタイトルを取ったと思われるのが、小野不由美魔性の子(1991)だ。タイトルと異世界トリップものというだけならまだ偶然かなとも思ったけど、小野自身が影響を受けた作家としてゼラズニィの名前を挙げてるし本文中に「取り替えっ子」への言及もあるので、まあ確定なのかなと。自分の著作と同じタイトルの小説があるので読んでみようってなった可能性もあるけど。以下は海外でのインタビューから。

私は本を書き始めたすぐ後に、C・S・ルイスのナルニア国ものがたりロジャー・ゼラズニイのアンバーの九王子を知り、その中に私がたどり着きたいと努力している種類の理想的なファンタジー小説のシリーズを見出した事もありますね。


http://shirouto.seesaa.net/article/124576955.html


小野の『魔性の子』は、和製ファンタジーの代表作十二国記の序章的な位置付けにある。現在刊行中の完全版でははっきりとシリーズの中に組み込まれているけど、元々は独立した一冊として刊行されたものなので、片方を知らなくとももう片方を楽しむのに支障はない。

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なつかしの異世界転生・召喚:異世界トリップもののどん詰まり 『幻夢戦記レダ』から『覇壊の宴』へ 

異世界自衛隊が活躍する」
「『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』だ……」
「エルフが奴隷にされたりする」
「『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』だ……」
「政治、経済、軍事、その他社会的な風刺もたくさん盛り込まれてる」
「『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』だ……」
「主人公は異世界の支社に左遷された、しがないサラリーマン」
「『覇壊の宴』じゃねえか!」


ということで、連載第2回は日昌晶「覇壊の宴」(全2巻)を取り上げたい。


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上記した通り、自衛隊FTの人気作「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」を、2000年時点で先取りしていた小説でもある。



あらすじはこうだ。原油を始め地下資源は枯渇寸前で、環境汚染も進んでいた地球。そこに降って湧いたように、「新世界」と呼ばれる異世界へのゲートが発見される。地球側の企業はこぞって人員を送り込み、原油、鉄鋼、ウランなどを採掘しまくった。また東京都を含む自治体は、大規模なごみ処理施設を異世界の各地に完成させもした。一方で、地球人類と酷似した知的生命体が築いていた中世ヨーロッパ風の文明は、観光地としても人気を博した。


……だが、それも長くは続かなかった。元々の政情不安に加え、地球側のやり口は現地住民との間に当然の軋轢を生んだ。地球側でも現地の文明を一顧だにしない侵略には批判が高まったのか、新世界への自動車などの輸出を規制する高度文明化抑制条項、二酸化炭素排出規制条項などが結ばれたが、抜け道はいくらでも存在する。国連は治安維持のためPKFを派遣したものの、これはかえって逆効果になっている節もあった。他にも地球側の原油価格が大幅に下落したことによる中東の過激派の流入絶滅危惧種のクジラやマグロを元々の生態系を無視して新世界の海に放流しようとする政府を批判する環境保護団体、長寿命からその身体を医薬品として売買されるエルフ、新世界からやってきて歌舞伎町で立ちんぼする亜人の女性などなど、問題は山積みである。


主人公鈴木和夫は、新世界の王国「デロナト」の言語検定準一級を取得していることだけが取り柄の、食品会社に勤めるサラリーマン。上司の愛人に手を出したことで、新世界にある社の有害廃棄物処理場に左遷されてしまう。国境を超えて有害廃棄物を移動及び処分させてはならない、でも異世界ならいいんでしょ! というグレーゾーンの商売で、社の本業ではないが莫大な利益をあげている。鈴木がいるのは、あくまで常駐社員を置かなければならないと法で定められているためで、社員は彼一人だけ。体のいい? リストラである。彼に目をつけたのが、ラースター王女。彼女は鈴木という現地邦人の保護を名目に、PKOで派遣されてきた自衛隊を他国との戦争に駆り出そうとする。当然、憲法九条を盾に一旦は断られるのだが……。


長々と説明したのは、この小説の最大の面白みは舞台設定と無数に散りばめられた小ネタにあるからだ。また鈴木くんは平凡なリーマンであるものの、この物語は群像劇の色が濃く、戦車の砲弾と魔法が飛び交い、血湧き肉踊る、楽しい楽しい戦記物だったりもする。地球側の技術を借りたラースターの切り札が、現地人には免疫のないインフルエンザウィルスを搭載したミサイルというのも気が利いている。一方では、地球側を接待するために、現地住民がランパブもどき(ただし接待されるのは女性でする方は男性)を開催したり、ゴルフ接待の代わりにドラゴン狩りを行ったり。

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