周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

小笠原流の流鏑馬を観た in 立川立飛みどり地区

流鏑馬を初めて見た。11月19日に立川にある立飛ホールディング図所有の空き地、通称「みどり地区」*1小笠原流の方々を招いて行われたものだ。


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神事としてやってるところもあるし、もっと厳かな感じだと思ってたけど。解説の宗家の人が配慮してくれたのか、的を吹っ飛ばさなかったからといって外れではないけど、そうはいってももののふたるものやっぱり吹っ飛ばすところを見たいですよねって観客の意を汲んだことをゆってくれたり*2。アンコールというか、「もう一人射手が残ってました」を三回天丼したり、楽しいイベントだった。


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動く被写体を撮ること自体はそう難しくはないけど、躍動感のある絵に収めることは難しい……

*1:除草のため夏などはヤギが草を食べているあそこ

*2:とはいえ観覧席も本来外したからため息とかあんましよろしくないんだろうけどね

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三十代のオタク「「「るろ剣と和月のことは俺が一番よく分かってるんだ!」」」

はい、るろうに剣心世代です。私がジャンプを読み始めたのは、「ドラゴンボール」「幽遊白書」「スラムダンク」などが既に看板としての地位を確立してた頃。1994年開始の「るろ剣」は、長期連載としては初めて、連載開始から終了までを見届けた作品ではなかったかと思う。

今から約140年前、黒船来航から始まった「幕末」の動乱期、渦中であった京都に、「人斬り抜刀斎」と呼ばれる志士が居た。


修羅さながらに人を斬り、その血刀を以って新時代「明治」を切り拓いたその男は動乱の終結と共に人々の前から姿を消し去り、時の流れと共に「最強」という名の伝説と化していった。


そして浪漫譚の始まりは、明治十一年東京下町から――

  • 明治という時代/飛天御剣流のかっこよさ/不殺という潮流
  • 原作とのズレとメディアミックスの出来の良さ
  • 物語の外の作者のことば
  • 例の事件について、読者として

明治という時代/飛天御剣流のかっこよさ/不殺という潮流


ファンタジー全盛の当時、明治日本を舞台にした時代物、というのがまず新鮮に映った。ジャンプでは「花の慶次」(隆慶一郎原作)なんかもあったけど、時代物といえば大人の男の読み物みたいなイメージがある中で、原哲夫の劇画調もその枠内にあるもので。一方「るろ剣」は、それらからは程遠い線の細い絵柄が親近感を持たせてくれた。


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キモノの柄のような装飾が美しい単行本表紙。15巻電書版の表紙は紙版だと薫殿が脱いでる+背景の柄+それと同じ柄の布を剣心が巻いてることで、薫殿の着物を血止めに使ってるように見せてる演出が、ただの包帯巻いてることになってる。なんでや。 http://amzn.to/2zRSOk8


主人公の剣心は、そんな絵柄が似合う優男*1。10年間日本各地を放浪してきたが、剣術小町・神谷薫に出会うことで、東京の下町にしばらく腰を落ち着けることになる。


彼の流派「飛天御剣流」の技の数々に、小学生~中学生当時の私は憧れた。一番好きなのは「九頭龍閃」。奥義「天翔龍閃」の伝授のために生まれた技、という生まれついての二番手でありながら、使い勝手の良さゆえに多用されるポジションがお気に入りなんすよ……*2。「双龍閃」から「天翔龍閃」という、「飛天御剣流の抜刀術は全て隙を生じぬ二段構え!」の天丼もキマってた。相手の聴覚を破壊する【神速の納刀術】「龍鳴閃」もラストバトルで地味な直接攻撃じゃない技を初めて登場させるのが心憎い。納刀した段階から、親指一本で刀を的に向かって弾く「飛龍閃」で髪留めが弾ける演出もたまらない。


目に映る人々を助けるため、不殺(ころさず)の誓いを胸に秘め、彼は逆刃刀*3を振るう。……しかし、心の奥底には制御できない人斬りとしての過去の自分を飼っている。過去と現在、理想と現実、罪と罰。「るろ剣」は幕末の人斬りの贖罪というテーマが、作品全体を貫いている。彼の生き方の代名詞「不殺」は、90年代から00年代にかけて、アニメ漫画ラノベゲームなどにおける一大潮流となった*4


歴史物としては、「るろ剣」は本格派じゃない。ある書評で「バーチャル明治」と揶揄されたけどむしろこの漫画にはピッタリかもね、と作者はコメントしてる。でも、幕末・明治という時代に生きた人たちについて、この漫画は多くの見方を教えてくれた。自由民権運動なんて歴史の教科書でしか知らず、日本の民主化に至る立派な行いくらいにしか認識してなかったのが、それを錦の御旗に店で大酒喰らって周囲の客の迷惑も考えず大声で議論して文句つけてきた店員は喧嘩して、なんて輩もいたかもしれない、と思えた。また、「紀尾井坂の変」の大久保利通暗殺の裏には剣心の宿敵にしてこの漫画で一番スケールのでかい悪役・志々雄真実の暗躍があった、という展開にはぞくぞくした。史実の裏では実はこれこれこういうことがあったんだ、とフィクションに絡めていく手法に初めて触れたのも、「るろ剣」だったと思う。


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作中の時代に合わせたのか、3枚目のような浮世絵風? の扉絵は頻繁に描かれていた


「紀尾井坂の変」をラストに据える単行本7巻は、ドラマもバトルも盛り上がりが最高潮に達する。神谷道場に落ち着きつつあった矢先、新撰組三番隊組長斎藤一との再会。宿敵から、「人斬りが人を斬らずにどうして人を守れる」「不殺の信念がお前を弱くしたんだ」と責められる剣心。そして、幕末を再現するかのような死闘……。

*1:アニメ版の声優は宝塚出身の涼風真世。今にして思うとこれしかないという気にさせられる。少年役ならまだ適任もいたかもしれないけど

*2:でもビームを出してるかのような演出はちょっと……

*3:峰と刃が逆になっているため、殺傷力が削がれている日本刀

*4:この漫画が発端かどうかは分からない

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百合漫画「青い花」のAKB主演映画化企画と、志村貴子的なもののAKBや乃木坂への影響

二〇〇七年頃からAKB48のミュージックビデオをいくつか作るようになっていたのですが、そこから発展してAKB主演の映画を作ろうという企画がもちあがった時期があって、原作にできるものはないかと少女マンガをいろいろ読み漁っていたときに志村さんの『青い花』に出会ったんです。


えっ、これってみんな知ってたの? 私が志村作品からちょっと離れてた間に既に出てた情報だったりする? 

幻と消えた「青い花」の実写映画


青い花」は志村貴子の代表作。高校生になったふみちゃんは、幼なじみのあーちゃんと再会する。ふみちゃんは従姉妹の千津ちゃんと付き合ってたけど、彼女が男の人と結婚するというのでフラれたばかりだった。千津ちゃんを想って泣いているところにハンカチを差し出してくれたあーちゃん。「ふみちゃんはすぐ泣くんだから……」昔と変わらず優しい幼馴染に、ふみちゃんは恋に落ちる*1――というストーリーが、古都・鎌倉で展開される。単行本は全8巻。2009年にはアニメ化も果たし、こちらも評価が高い。


雑誌「ユリイカ」では志村貴子デビュー20周年を記念して総特集が組まれている。作家関係者によるお祝いイラスト、評論、対談、ロングインタビューなど内容は様々。



その中で、惜しくも幻に消えた映画と、志村貴子的なものがアイドルグループAKB48乃木坂46の世界観に与えた影響を語っているのは、高橋英樹。彼女たちのMVや映画を多数制作している映像作家である。THE YELLOW MONKEYの「第5のメンバー」としても有名らしい。

(…)アイドルの映像でもそうですが、女性像を描いた作品って、男性目線で“男の願望”をただただ具現化したような作品がやはり多い。俗にいう「こんな女の子が本当にいてくれたらいいな」願望というか(笑)。もちろんそれはマーケティング側の意見を取り入れた結果でもあるのだとは思いますが、志村さんの作品はそういう視点からも自由な女性像が描かれていると感じたんです。

実際いろいろなところに企画を持ち込んだんですけど、最終的にはストーリーの骨格がまありはっきりしないということと、それからこれは本当に残念だったのですが「BLは受けるけどGLは……」というような、そういう括りで考えられてしまうこともあって結局、映画化は難しかったんです。(…)


実写映画の企画はポシャったものの、「MdN」という雑誌で乃木坂の生駒里奈と「青い花」の姉妹作「淡島百景」がコラボしたのも、そういった流れから来ているそうだ。AKBや乃木坂というプロジェクト全体で志村貴子的なものを志向していこうというコンセンサスがあったわけではなさそうだけど、高橋が言うには、直接的ではなくとも乃木坂は志村貴子的なものに強く影響されているのではないか、という気がするらしい。


*1:正確には幼い頃の初恋に火がついた

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立川まんがぱーく常連による攻略ガイド

東京都立川市。中央線沿線の急成長を続けるこの街で今話題なのが、「立川まんがぱーく」です。言ってみれば公営の漫画喫茶でしょうか。料金が一日400円と格安であること、4万冊の幅広い蔵書、ドラえもんが寝てそうな押し入れを模したスペースや寝っ転がれる畳敷き、テラスなどの空間づくりが好評で、一躍人気スポットに成長しました。京都にある「京都国際マンガミュージアム」が遠方からの観光や学術研究などの用途にも使われるのに比べ、こちらはより漫画を読むことに特化している感じです。


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私も結構足を運ぶようになって、この施設を楽しむコツを掴めてきました。その内、他の情報サイトであまり触れられてないようなものをいくつかをご紹介したいと思います。

  • 基本情報
  • 蔵書検索
  • おすすめのスペース
  • 食事
  • 平日限定入場パスポート
  • その他注意事項

基本情報

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  • 蔵書:約4万冊
  • 開館時間:月~金 10:00-19:00 土日祝日 10:00-20:00
  • 休館日:なし
  • 入館料:大人:400円 小中学生:200円 未就学児(大人同伴):無料
  • 電子マネー、クレジットカード:不可。両替機設置。
  • アクセス:立川市子ども未来センター2F JR立川駅南口から徒歩13分、同西国立駅から徒歩7分
  • 有料駐車場:20分100円(最大 1,500円)
  • 公式サイト:http://mangapark.jp/
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00年代初頭の女子高生漫画オタク、伊原摩耶花(古典部)の本棚

10月に発売されたムック『米澤穂信古典部』では、原作者が考えた「古典部」メンバー4人の本棚が公開されていた。


オタクとしての伊原摩耶花


古典部」シリーズは、米澤穂信による青春ミステリー小説だ。青春とゆっても輝かしいばかりじゃない、ほろ苦い後味が人気の秘訣となってる。2012年には「氷菓」のタイトルで京都アニメーションによってTVアニメも制作され、人気を博した。今秋には実写映画も公開される。


この作品では、地方の進学校に通う高校生の様々な自意識が取り上げられている。その中でも私が一番注目してるのは伊原摩耶花。主人公・折木奉太郎とは犬猿の仲の、小柄な女の子だ。



古典部と掛け持ちしてる漫研*1では人一倍創作意欲に溢れていて、オタク以外の人をカタギと呼び、オタクとしては人目を気にする方で。多分、いわゆるガチ勢なんだろう。それだから部内のエンジョイ勢とはしばしば対立してる。強気のようだけど内に抱え込むタイプなので、人間関係に悩んで睡眠薬を服用しないと眠れなくなったりという一面も。


彼女が文化祭での漫研の企画としてコスプレをしてきた時に、乗り気じゃないながら選んだキャラも、萩尾望都「11人いる!」のフロル、藤子・F・不二雄エスパー魔美」のマミ、手塚治虫七色いんこ」のマリコと有名所ではあるものの、他の部員が「ストⅡ」の春麗や「ヴァンパイアハンター」のレイレイを演じてたのと並べてみると、部内の温度差が目に見えるよう*2


彼女が自分に似ているとは全く思わない。共感できるかというとそうでもない。ただ「古典部」メンバーを眺めてみた時、「刺さる」場面が多いのも彼女絡みの事件であることも事実だ。それはやっぱり私も彼女もオタクだからなんだろう。そんな伊原摩耶花の本棚は以下の通り。

*1:というか古典部のほうが掛け持ちなんだけど

*2:原作は10年以上前の作品なので、2017年時点から新しい古いで見てみると今やどっちもどっち感はなくはない

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