周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

ラブコメ漫画の二極化 恋のシーソーゲームとヒロインレースの競技性


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男性向けラブコメ漫画の楽しみ方って、ここ数年で二極化してると思うんですよね。自分の中で。

 

一対一のレクリエーションラブコメ

 

一つは「からかい上手の高木さん」や「僕の心のヤバいやつ」「かぐや様は告らせたい(初期」「保安官エヴァンスの嘘」など、付き合ってない男女が、日常に溢れるちょっとした遊びやらなんやらの中で恋のシーソーゲームを繰り広げるやつ。主導権をどっちが握ってるのか、両想いなのかなどは作品にもよる。勝ち負けはさして重要ではない。レクリエーションラブコメ、シチュエーションラブコメとでも言おうか。これにSF (すこしふしぎ)要素を足すと「上野さんは不器用」になる。なるか? なるんだよ。

 

上野さんは不器用 1 (ヤングアニマルコミックス)

上野さんは不器用 1 (ヤングアニマルコミックス)

 

 

登場人物が増えても、メインの男女cpが対称関係であることは変わらず。二人の間に余人が入り込む余地はない。それは読者も同じだ。私達は延々続く遊びと書いてイチャイチャと読むやつを見せつけられ、最終的には砂糖の柱になって死ぬ。

 

私がこの手の作品を最初に意識したのは、入間人間ラノベ多摩湖さんと黄鶏くん」だった。これが2010年なんで、もう随分長いブームだなと感じてる。

 

多摩湖さんと黄鶏くん (電撃文庫)

多摩湖さんと黄鶏くん (電撃文庫)

 

 

女の子たちが主人公をめぐって切磋琢磨するヒロインレース

 

そしてもう一つは、ルール無用のヒロインレースを楽しむハーレムラブコメ。「ぼくたちは勉強ができない」の中盤くらいまでは、一、二週替わりで各ヒロインの渾身のエピソードが続く。読者はどのヒロインにベットするかで毎週掌を返してると言われるくらい、予測不能のヒロインレースだった。

 

 

今は人気投票で桐須先生がぶっちぎりだったこともあり誰が一着か分からない混線模様からは抜け出してる(と思う)けど、途中参戦の教師ヒロインが勝てるのか? といった懸念も根強く、状況はまだまだ予断を許さない。私の一推しは妹の水希ちゃんです。

 

五等分の花嫁」は、五人のヒロインの内誰かとは結婚する未来が、プロローグで既に提示されている。読者はゴールとその時々の展開を結びつける筋道を想像することで誰とくっつくか予想し、見守る。ヒロインは見た目そっくりの五つ子で、しばしば他の姉妹に入れ替わりキスしてくるなどといったミステリー要素が魅力ともなっている。

 

五等分の花嫁(1) (週刊少年マガジンコミックス)

五等分の花嫁(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

ハームラブコメというと、冴えない男が美少女に囲まれウハウハというイメージがいまだ支配的だ。受け手もまた非モテ男性ばかりで、自分に近しい主人公に感情移入して楽しむ。そんな風に揶揄される。でも、こういった読み方はどこまで一般的なんだろうか。

 

「ぼく勉」や「五等分」における恋愛は一種の競技のようなもので、ハーレムの主であるはずの男主人公は、勝利者のトロフィーとして存在する。読者は自分の推しが勝てるよう応援する、あえて敗北者を愛でる、あるいはヒロインレースの行く末を予想して楽しむ……周囲ではこういった読みが多数派であるように感じる。

 

では男主人公に魅力がないか? 逆だ。ヒロインたちが凌を削ることに読者が納得できるだけの何かを、彼らは持っていなければならない。

 

上に挙げた作品を読むと、努力して得た勉学の能力というのは一つのトレンドのようだ。この手のラブコメの読者はどっちかというと勉強はできるとゆわれて育った人の方が多いんじゃないか、「できる」のレベルは人によるが、少なくとも運動も勉強もダメだけどひたすらに優しいみたいな主人公像よりは共感しやすいんじゃないか。昔からそう思ってたので、この傾向は納得できるところだ。

 

その上で、彼らは私たちに欠けている何らかの人間的魅力を発揮する。こいつらヒロインにこの主人公はもったいないと言われるほどに。

 

この手の作品では、序盤でまず主人公がヒロインたちを惚れさせる。この時点では男側に恋愛感情はない。ヒロインたちが主人公に魅入られてようやく、彼女たちが我先に主人公を攻略しようとするレースが開幕する。

 

ヒロインレースにルールは無用。しかし長年続いてきたジャンルなので、それらしいジンクスは存在する。たとえば、

 

  • 最初から好感度が高い幼馴染はドラマが作りにくいので勝てない
  • 主人公の何気ない一言でわーきゃー騒いで赤くなったりする燃費のよさは、それだけで満足してしまうことに繋がり恋愛成就のモチベーション維持に良くない
  • 中盤で一度くっついてしまうと最後の直線で力を使い果たして追い抜かれる
  • お色気担当はそれだけで不利

 

など。これらは敗北者ムーヴとも呼ばれる。真偽は不明だしジンクスを知ってて裏をかく漫画もある。「五等分」なんかは特にそうした傾向が強い。しかし、とにかく読者側はジンクスを前提に予想を立て、推しの状況に一喜一憂し、他推しのオタクを野次ったり野次られたりする。

 

ハーレムラブコメをヒロインレースとして読むという楽しみは、昔からある。「魔法先生ネギま!」(「五等分」の作者春場ねぎはこの作品が大好きで、PNもこのネギから取られている)ではキャラクター人気投票の結果を出番に反映すると明言してて、こうした楽しみを公式がダイレクトに採り入れた形となった。

 

 

私はというと、昔からこういった楽しみ方には今ひとつピンと来てなかった。綾波とアスカで言えば間違いなく綾波派だったけど、どっちがシンちゃんとくっつくかのがお似合いなのかとか、派閥争いみたいなのは別にどうでもよかったと思う。

 

考え方が変わったのは「ウマ娘」に出会ってから。このアニメは競走馬を美少女擬人化したレースもので、ラブコメとかでは全くない。しかし、女の子たちが駆けっこで相手より一秒でも早くゴールしようとする姿を見て、ああ、これってまさにヒロイン「レース」そのものだなあ女の子たちが男というトロフィー目指して競い合いクソデカ感情をぶつけ合うという意味ではラブコメもスポ根みたいな目線でも楽しめるなって気づいたのだった。

 

 

例えば麻雀。例えばアイドル活動。例えば野球。AKBブームが一つの契機ではあっただろうか。たくさんの女の子が何らかの競技性の元に切磋琢磨する作品群は、現代では一大ジャンルと化している(彼女たちの関係性に百合を見出す人もいる。キャプテン翼が801のお姉さんたちに愛されたことを思えば随分遅かったかもしれない)。ハーレムラブコメも、一部読者にとってはそういうジャンルとして楽しむもの。中心に男がいるかどうかもさして重要ではないのだ

 

まとまらない

 

ひとつがいの男女の遊びに擬した恋の駆け引きを見守るレクリエーションラブコメ型。ハーレムラブコメに読者が勝手に競技性を見い出すヒロインレース型。

 

この二つはラブコメの両極でありつつも、読者が自分を完全に作品の外に置いてるという共通点もある。これが主人公を自分の分身として読むやつ楽しみ方より上等かっていうと、まあ他人の恋路にアレコレ言ってる時点でかえって下品というか俗っぽいという誹りは免れないと思うのだけど、こういう切り口のラブコメ語りもあるよねということで。

 

書き残したかもしれないこと

 

あとは近年のラブコメについてだと、一般人がオタクを名乗るようになったっていうけどそれが本当ならフィクションの中で描かれる恋愛になんか影響はあるのかとか、エロゲギャルゲなどの基本的に主人公視点で読むラブコメと漫画やアニメでは違うよなとか、青春群像劇っぽいやつも人気あるなとか、「かぐや様」は会長とかぐや様がレクリエーションラブコメやってる横で石上は誰とくっつくか分からないハーレムラブコメっぽいことやってる二面作戦が面白いなあとか、そんなことを考えつつ、言いたいことは言ったので終わりです。

 

 

 

TVアニメ「魔術士オーフェンはぐれ旅」2020年版第1話を妄想する

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魔術士オーフェン」新作アニメは2020年1月から放映と発表された。企画が発表されたのが2018年3月。それから1年以上ほとんど何の音沙汰もなかったのでハラハラし通しだったけど、今回声優も発表されてるし、さすがにもうポシャることはないだろう。多分。

舞台版からの着想


オーフェン」は過去にもアニメ化されている。その時の内容は、一期は原作をベースにしつつオリジナル、二期はほぼ完全にアニメオリジナルというものだった。今回は、まあこのご時世だし、明言こそされてないものの、原作に寄り添った形になると思う。ただ、既に原作が完結しているからこそ*1、エピソードの順序などを再構成するという手はあるかもしれない。


……というのは、先日アニメより一足先に上演された舞台版「オーフェン」を観て感心したからなのだけど。


オーフェン」には大きく分けて三つのシリーズが存在する。時系列順に並べると、

  • オーフェンの少年時代、魔術士養成学校《牙の塔》を描いた「プレ編
  • 行方不明の姉アザリーを探し、数年放浪した果てに流れ着いた商都トトカンタ。そこでの騒がしい日々を綴るドタバタコメディー「無謀編
  • トトカンタにて、意外な形で姉と再会。その後紆余曲折を経て、弟子のマジク・ワガママお嬢様のクリーオウを連れて再び旅に出る本編「はぐれ旅


となる*2。それぞれに毛色が違うということもあり、従来のメディアミックスでは別々に展開されていたが、舞台版では「はぐれ旅」の随所に「プレ編」のエピソードを挟んでいる。これによって物語は一層の盛り上がりを見せていた。


sube4.hatenadiary.jp


舞台版はアニメとキービジュアルをかぶらせたりしてるし、PVを視聴しても、アニメの構成は舞台とそう変わらないのではないかと予想している。のだけど。いっそのこと、これに「無謀編」も接続してしまったらどうかなと。具体的には「無謀編」連載最終話「これで終わりと思うなよ!」を【第零話】的に一話目に持ってきたら、という思いつきが浮かんだ。この短編は「無謀編」の〆であると同時に、「はぐれ旅」の前フリとしての側面も持っているからだ。

*1:なんかまたぞろ新作が出るという報もあるけれど

*2:めんどくさいので新シリーズは省く

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コミックマーケット96 一人反省会

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当初の予定では、オーフェン本を出すつもりだったのです、実は。サークルカットもそのつもりで書きました。ところが、単発の記事は書けたとしても、それが一つの面白い本として結実しているのがどうにも想像できず。6月に当落が発表されてもまだうだうだ悩んで……最終的には、「オーフェン」がうまくいったらもう一冊、という候補として考えていた(そしてブログである程度書き溜めたテキストがあった)「スレイヤーズ」をメインとすることに決定しました。


私は長らく「オーフェン秋田禎信の読者として活動してきた身です。「スレイヤーズクラスタのことも、どちらかというと「お隣さん」という気持ちで見ていました。そんな自分が「スレイヤーズ」本を出すことはジャンルに対し土足で入っていくことになりはすまいか、とも思ったのですが、そういう人間だから書けるものもあるのではないか、と自分を納得させました。

事前準備とか


ゲスト原稿を載せるのは、前回の「秋田禎信1992-2018」を作ってた頃からやってみたかったことの一つでした。基本的に普段からやりとりのある中で、スレイヤーズについて興味深いpostなどをしてた人にお願いしています。実際に執筆していただいた各テーマは、おおむねそれらを踏まえたもの。元来コミュ障な人間なので最初の一歩を踏み出すのはなかなか大変でしたが、寄稿者の方々の優しさに救われました。それと、リストのファクトチェックなどでスレイヤーズNEWSのはまりやさんにご協力いただきました。


表紙裏表紙のイラスト・デザインは前回に引き続きおかきさん。表紙は往年のドラマガオマージュで依頼*1。裏表紙に関してはほぼマル・ナーゲということで、多大なご負担をおかけしました……。


キンコーズのコピーについては、前回新刊の増刷なども含め五回目くらいなんでいい加減慣れてきたかなとは思います。ミスって紙を無駄にすることも少なくなりました。ただ、本文はともかく、フルカラーの表紙をコピーでは、おかきさんの塗りを再現することが私の技術では難しいのが申し訳ないところで……厚くなってくるとページをめくりづらいということもあり、次はオフセにしなきゃかなあというところ。


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当日の様子


さて当日。今回のコミケはリストバンド導入及び自分的には初の宅配便搬入(既刊とその他の荷物のみ)ということでどれだけ時間がかかるのかちょっと不安でしたが、スタッフの方の尽力のお陰でどちらもほぼノータイムで作業完了。


机の前に貼り付けるポスターはコンビニで出力したA3の普通用紙をキンコーズのセルフラミネート加工機で補強。一枚だとテーブルの大きさ的にちょっと物足りないので同じものを二つ用意しました。300円かそこらで費用の割にはいいものができたとは思います。A2のも作りたいんですが、手間も費用もここからぐんとあがっちゃうのが悩みどころ。


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今夏は稀に見る猛暑で熱中症なども心配されましたが、私のいたスペースはちょうど冷風が当たる位置でちょっと寒いくらいでした。C94では卓上扇風機を持っていってちょっと邪魔だなと思ったので今度はちょっとちっちゃいハンディ扇風機を購入したものの、結局それもほとんど使いませんでしたね。


肝心の本は、正午回ってすぐくらいに新刊が捌けちゃいました。前回めちゃ苦労したので(その場で対処しようとするとめちゃパニくってミスを連発する)会場製本は絶対にしない、と決めてたのですが、完売後に起こしいただいた方には申し訳ありませんでした。どうせ通販はやると決めてたのだから、「通販についてはこのサイトをチェックしてください」という名刺的なものを用意しとけばよかったですね……


無配については呪文ビンゴ的なものを考えてはいたのですが、形にならず。前回の「秋田禎信総選挙」ペーパーを増刷して持っていきました。タブレットで展示する呪文ルビクイズは用意できたけど、当日タブレットを忘れた(と思いこんでただけでバッグの奥に眠ってた)という間抜けぶりを発揮。


www.youtube.com


お隣のスペースはtwitterでやりとりしてるかつ今回寄稿をお願いした方だったので、ちょっとウザいくらいの絡みをしてしまい。でも楽しい時間を過ごさせていただきました。即売会全体では、お一人ずつと話す時間はそんなに長くないのと、買ってくれる方の優しさと、売り子のフォローで、コミュ障でもなんとかボロを出さずやっていけてるような気がします。


海外の人に手にとっていただくもページを開いてみると文字ばっかりで読めないのでオ?ウ! ってゆわせてしまうのは、活字本は漫画に比べて手に取られにくいというのとはまた別の申し訳なさがありました。

反省点と今後


終わってみて最大の反省点は……コピー本なので比較的再販(そしてその際の修正)が容易で、またこのブログに訂正・注釈専用ページを設けてることもあり、なんというか、ミスに対して「後で修正できる」という内心の甘えが、本の出来にモロに出てしまったかなと。資料集めも不十分でした*2。やっぱり次はオフセかな。


と言いつつ、次の内容はまだ決まってません。今回出せなかったオーフェンか、あるいは来年完結する(予定の)エヴァか。寄稿は今回縁あって実現できたので、次はインタビューとかやってみたいけど、コミュ障にはハードル高そうだな……。冬コミはとりあえずお休みです。こいつにうちの本でなんか書かせたいという奇特な方がいらっしゃいましたら承ります。


新刊はBOOTHで通販中です。これもコミケ当日からなんだかんだ一週間かかってしまいましたが……。よろしかったらどうぞ。電子版もいずれ出すかも。出さないかも。


booth.pm

*1:先だって上遠野浩平ユリイカに取り上げられて、かどちんばっかりああいう雑誌に取り上げられてずるい!(? との思いからユリイカパロにしようかとも思いましたが、さすがに分かりづらいだろうと思ってやめました

*2:既刊のための準備をしてた際、秋田のことを調べれば神坂先生のことも引っかかったので、多少の蓄えはありましたが。お二人ともドラマガとザスニが主な発表媒体で助かった……

舞台「魔術士オーフェン」に感動したので原作読者は是非観よう「獣」は上演終了したので次のやつを

8月中旬。新宿村LIVEという劇場で上演された舞台、「魔術士オーフェンはぐれ旅」を観てきた。私が観劇したのは初日。一度観てこれは千秋楽も行きたいと思ったものの、残念ながら叶わなかった。

  • 舞台の魔法
  • プレ編と交錯する本編
  • 舞台ならではの演出
  • 魔術と格闘戦と生の迫力
  • 俳優さんたちについて
  • 舞台の幕が降りて

舞台の魔法


原作小説の世界では、【魔術】と【魔法】が厳密に区別されている*1。ざっくり言ってしまえば、人間の魔術士やドラゴン種族が扱うのが魔術、神々のそれが魔法である。魔術は一般的に見ればとても強力だができることに自ずと限界があるのに対し、魔法は万能の力とされる。これらの設定は物語が進み世界の真実が明らかになるにつれ、重要性を増していく。


www.orphenpedia.com


だから読者は作中で使われる【魔術】を、声優やアニメ雑誌のライターなどが【魔法】と混同することに対してとてもうるさい。今回の舞台を取り上げた芸能ニュースに対しても、そのような反応を見かけた。


……だが、だがしかし。「魔術士オーフェンはぐれ旅」の舞台で現出していたものは、私の見させられたものは実際【魔術】ではなく【魔法】だったのではないか。そんな風にも思ってしまう。だって、そうでもなければ「オーフェン」の舞台が面白いなんて、観に行った二十年来の原作読者がこぞって感動してるなんて、そんなこと想像できるか? 私は2.5次元の舞台はこれが初体験で、他作品との比較はできないけれど、めちゃくちゃ惹き込まれた。

*1:奈須きのこは「オーフェン」の影響を受けているのではないか、と言われる所以だ

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