周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「ヤマノススメ」にあの日エロゲユーザーが追いかけてた消える飛行機雲を見た

10年以上前、今よりもエロゲがオタク趣味のメインストリームにより近かった頃。 わたしも時流に乗ってそこそこの数をプレイしたけど、その一角に田舎ゲーと呼ばれるジャンルがあった。「AIR」「水月」「ゆのはな」「CROSS CHANNEL」「果てしなく青い、この空の下で…。」「とっぱら」などなど。文字通り田舎を舞台にしたゲームの数々。

 

 

なんでこのジャンルがエロゲで元気だったのかはよく分からない。伝奇的民俗学的な要素がある作品なら自然な流れだけどそうじゃないものもあるし、別にエロゲ特有のものというわけじゃない。単に、ビジュアル的な強みというのが一番大きかったのかもしれない。

 

TVアニメだけれど、「おねがい☆ティーチャー」(2002)辺りはこの流れを汲んでいる作品だと思ってる。本作は背景美術の制作を担う会社として「草薙」をオタク方面で有名にし、また作中の舞台である長野県木崎湖を訪れるファンが多いことで、近年のいわゆる「聖地巡礼」の先駆として語られることも多い。

 

 

なんにしろ、美少女+自然の美しい景観=大勝利という図式は、この頃自分の中に深く刻まれた。

 


ヤマノススメノススメ 

ヤマノススメ」の原作はいわゆる「山ガール」を題材にした漫画で、わたしが触れたのはアニメ版のほう。幼なじみの「あおい」と「ひなた」が、高校で再会したことをきっかけに登山を始める。二人の目的は、昔一緒にどこかの山で見たご来光をもう一度拝むことで……。

 

前述したエロゲーの中にも、自然の景観(というか舞台設定)と作品のテーマが深く結びついた作品はあった。例えば「Clannad」なんかがそうだ。けれど「ヤマノススメ」は題材が登山ということで、よりダイレクトに繋がっている。

 

 

二人の家の近所にある埼玉県飯能市天覧山から始まって、高尾山、富士山、谷川岳……と色んな山に彼女たちは登る。生まれた時から住んでいたから、愛着があったから、ではなく、登場人物が自ら選んで、踏破して、あるいはリタイアしたとしても、その都度、千変万化の風景を手に入れる。

 

その時々によって季節も、道端に咲く花も、フィジカルのコンディションも、標高も、登山の難度も、一緒に登る面子も違う。色んな悩みを抱えて山に挑んで、それが登山で解決することもあるし、逆に新たな重荷を背負って帰ってこなきゃならないこともある。でも、作中のテンションが明るくても暗くても、可愛い女の子と景勝地という組み合わせはいつだってシンプルに美しい。

 

なにも麦わら帽子に白ワンピを着ている必要はない。彼女たちがその景観の中にいるだけでわたしたちは感動できる。実際に笑って、泣いて、悩んでるキャラクターにとっては残酷なくらいに。……序盤から、あ、これ、自分が今も昔も好きなやつだって思った。

 

全12話の1期が5分枠、全24話の2期が15分枠というコンパクトさもありがたかった。毎朝出かける前に観てると、なんというか、大きく深呼吸して、きれいなものを体内に取り入れてる感じがした。できれば3期、4期と続いて、「サザエさん」くらい日々の生活の中に寄り添うアニメになってほしいな。