周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

平和な「のんのんびより」村を支配するベテラン声優・平松晶子

日常系アニメ「のんのんびより」を観たのん。田舎の女の子たちののどかな生活を描いた、「あっと」先生の漫画が原作。2013年に一期、2015年に二期が放映されたアニメなのん。



有名なアニメーション美術制作会社である「草薙」が思う存分力を奮った、大自然の四季の移り変わりは、眺めてるだけでうっとりしちゃうのんなー。


キャラクターでは、OLに間違われるくらいの高身長なのに内面はどこまでも子供っぽいほたるん。お調子者だけどお兄ちゃん大好きっ子ななっつん。この手のきららアニメの男キャラの背負った業として、画面にたまに映るけど一言も喋らないお兄ちゃん。お兄ちゃんをなっつんから奪おうとする*1強キャラ感あふるるこのみ姉。主役のれんちょんに駄々甘のヤンキー・駄菓子屋、なんかがいい味出してましたですのん。


でも、印象に残ってるという意味では、なっつんや兄ちゃんのお母さん・雪子さん(cv.平松晶子が一番だったりするのん。


きらら系の日常アニメには、ふわふわした雰囲気のものが多いん。一概に優しい世界かとゆわれると、例えば「きんいろモザイク」辺りは結構毒が強かったりするのデース! が、作品全体を覆うふわふわ感はスポンジのようにそれを吸収してしまうのんな。



のんのんびより」は、その点もうちょっと素朴で、オブラートに包んでない感じがするのん。喜怒哀楽の角を丸めてないといったらいいのか。昔ながらのホームドラマみたいというか。ファンタジー感が薄いというか。女の子たちの服装も量販店で売ってるようなやつだし。あの世界、村の外にドン・キホーテとかあっても不思議じゃなさそう、と感じさせる物があるのん。


それを体現してるのが、肝っ玉母ちゃんを絵に描いたような雪子さん。彼女を演じる平松晶子さんは芸歴30年のベテランで、林原めぐみと肩を並べた世代。「生活」の匂いが染みついた、そのドスの利いた声でなっつん(cv.佐倉綾音)が叱られる度、アラサーオタクはひっと首をすくめてしまうのん。ふわふわ日常ものの極致「ご注文はうさぎですか?」で、佐倉綾音の母親が皆口裕子だったのとは対極のんな。


強キャラ声優としての格なら、れんちょんのねえねえを演じる名塚佳織も負けてないん。でも、名塚佳織の強さって、ふわふわした日常を永遠のものにするか完膚なきまでに破壊するかの二択って気がする。だからねえねえは、四六時中眠ってなきゃいけなかったのん。……そういえば、ねえねえみたいな「無責任な大人」って、日常ものの中興の祖である「あずまんが大王」のゆかり先生もそうだったけど、あの人もアニメでは平松さんが演じてましたのん。



なっつんたちの幼い頃を描いた一期三話で雪子さんが本格登場した時は、正直、この所帯じみた感じはメイン格の若手声優とは位相がズレてるのでは? この作品にはそぐわないのでは? と思ったけど、観てる内にそのズレが逆に功を奏してような気がしてきたのん。


ほたるんを演じる村川梨衣は、芸歴20年のベテランエロゲ声優のような甘~い声の持ち主。前述した「ごちうさ」で遺憾なく発揮してた天使っぷりを、本作でも観せてくれて。でも、そのままでは天上に召されてしまいそうなほたるん(村川さん)は、一方で雪子さん(平松さん)みたいな地に足が着いたキャラクターが存在することで、辛うじて現世に繋ぎ留められてる気がするのん。生者には手が届かない天界ではなく、ひょっとしたらどこかにあるかもしれないと思わせてくれる地上の楽園。それがアニメ「のんのんびより」で、そのためのリアリティを辛うじて担保してるのが、平松さんなん。



ただ、雪子さんのケツをひっぱたいて叩き起こすような「カーチャン」っぷりは、一期で既にやった一年を二期でもう一度やり直す、というようなシリーズ構成とはなんとなく相性よろしくないような気がする。仮に三期があるとしたら、その成否は雪子さんというか平松さんの演技にかかっているといっても、きっと過言ではないのん。



余談。平松さんが「なつみ!」って呼ぶ度、「そうか警察を退職して中嶋くんと結婚して田舎に引っ込んで娘に親友の名前をつけたんだな」とか思ってしまう人もいるとかいないとか。年取ったオタクはこれだから手に負えないのんな。


*1:なお二次創作設定