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周回遅れの諸々

90年代にオタクとしての青春を過ごした人のブログです

【勇者のクズ】草河遊也 現役のフルアナログイラストレーター【オーフェン】

ラノベ

私の人生に一番影響を与えたラノベは、「魔術士オーフェン」でまず間違いない。作者の秋田禎信に関しても、旧シリーズが終了してからもずっと追い続けてる。


じゃあイラストの草河遊也はというと、正直ファンタジア文庫版の頃はそこまで熱狂的なファンではなかった。インターネットを始めてから、この人に影響受けた絵描きの人ってプロアマ問わず結構多いんだな、と思ったくらい。それで初めて、ああなるほどそういう良さが確かにあるな、と気付かされた。多分、昔はイラストに関してどうこう言う語彙が今以上になかった、ってのが大きかったんだろう。



草河遊也は1972年生まれ。都築由浩原作で「HARD DIVER」(青心社コミックガイア)という漫画を1度だけ発表した後、イラストレーターの道へ。月刊ドラゴンマガジンの「ソードワールドRPGアドベンチャー」のカットの仕事を数点こなした後、「オーフェン」でブレイク。他に森岡浩之「月と闇の戦記」、茅田砂胡「レディ・ガンナー」、あざの耕平Black Blood Brothers」などのイラストを手がけつつ*1、現在に至っている。昔のインタビューでは「好きな漫画家は」という質問に「伊東岳彦田中久仁彦幡池裕行」と答えていた。


どんなものを描いてきたか


老若男女描ける人だけど、代表作が「オーフェン」「BBB」なんで、かっこいい男を描かせると当代随一ってイメージを持ってる人は多いだろうか。氏の描くニヒル(死語)で、でもどこか子供っぽさが残ってるオーフェンが初恋の人だ、永遠のヒーローだって人は少なくないだろう。


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「片方の目だけつぶってニヒルに笑ってる」「扉の前に立つ人」、というのは昔から何度も挑戦してきたモチーフだ。また、あの頃の富士見でのしあがっただけあり、シリアスはもちろんギャグもいける。それはつまり、多彩な表情を描ける人だっていうことだ。


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アクションシーンでは、「我が胸で眠れ亡霊」のVSアクセル戦は秋田の本文と合わせてラノベのベストバウトの一つじゃないだろうか。《牙の塔》の戦闘服は、非常にタイトでえっちだと男女ともに評判だった。


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「我が神に弓引け背約者」で虚空から突き出た腕に首をへし折られてるオーリオウルの姿は、よくあれをイラストにできるなあと感心した。


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作品に対する理解も深い。いちいち納得させられる。オーフェンのことを「実は女々しい奴」とか新シリーズマジクの「夢遊病者のような目つき」とか分かっててもちょっと言えないと思うんだけど、それだけ距離の近さを感じさせる。

どんなふうに描いてきたか


草河先生が現在に至る作風を確立し始めたのは、「オーフェン」長編8巻『我が遺志を伝えよ魔王』辺りから? 絵心皆無なのでこのイラストから以降を一括して厚塗りでまとめていいのか、もうちょっと後は水彩なのか、画材は昔はアクリルガッシュというのを使ってたらしいけど今はどうなのかとかは全くわからないけど。なんというか、質感みたいなものを重視するようになったかなと。鍛え上げられた筋肉の固さ、金属の光沢と冷たさ、強い風が吹く荒野の埃っぽさ。そういう皮膚感覚みたいなものが絵を通して伝わってきた*2


そしてそういった画風は多分に塗りに負うもので、たまに草河先生の原画でアニメ制作会社がセルワーク≒塗り?を担当したイラストとか見ると、違和感がすごい。一方でモノクロ挿絵については白い部分が目立つようになってて、そこは残念。


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タイトルにもある通り、草河先生は一貫してアナログで絵を描いている。だから、まだ「オーフェン」旧シリーズが刊行中だった2000年、秋田の新作「エンジェル・ハウリング」で、バリバリデジタルな画風の椎名優先生が採用された時は、そのギャップが鮮烈に映ったものだった。当時の草河先生の乾いた画風は「オーフェン」後期の作風に見事にハマっていて、秋田作品のイラストと言えば草河先生、という思い込みから、椎名先生への反発も結構あったと記憶している。


私は椎名先生は「月と貴女に花束を」から好きだったので基本的に歓迎したけど、思えば、あれがラノベのイラストにおいてCG塗りの時代が来てる! と思った最初の経験じゃなかったろうか。まさかそれから15年経ってもまだ草河先生がアナログだとは思いもしなかったけど……


どんな仕事をしていくのか


近年、web小説の書籍化とライト文芸のブームで仕事が増え、ベテランのイラストレーターも活躍している。前段で挙げた椎名優なんかは「サクラダリセット」がTVアニメ化されるし「本好きの下克上」も公表だし、2017年は更なる飛躍の年になることが予想される。



草河先生にも、是非とももうひと旗揚げてもらいたい。ただ、作風はどんどん「絵画」っぽくなりつつあるけどキャラデザは漫画ちっくな氏のイラストは実は使い所難しいんじゃないか、と思っていた。「レディ・ガンナー」の仕事を請けた氏は茅田砂胡の別の作品を読んでみて、「この方向性の仕事は自分には無理だと思った*3」と思ったという。茅田作品のような華がない、と自分の絵を評価してるということなんだろうか。



だから、新たに仕事するならソノラマノベルスかノベルゼロ辺りが順当かなあと思っていた。意図的に漫画ちっくな「古さ」を志向してるような感あるので。そういうわけでカドカワブックスから発売される「勇者のクズ」での起用が発表された時は予想外だったのだけど、編集が富士見書房と聞いてなるほど、と納得した。原作読んでみたら、なるほどと思った。クズはクズを呼び寄せるのか……(風評被害 「BBB」のあざの耕平も、そういえば主人公を人生から転落させるのが好きだとかゆっていた。



この数年は「オーフェン」の新作のみで目新しさという点では物足りなかったけど、これを機により多く氏の仕事が見られるようになると嬉しい。具体的には、男がかっこいいという氏のイメージを裏切るような美女美女したやつが見たいです。美女美少女描かせても一流だと思うので。


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追記:昔「コミッカーズ」という雑誌に掲載されたという氏のインタビューの詳細を知ってる方、情報提供をお待ちしてます。せめて何年の何月号かだけでも分かれば……。それとも別の雑誌だったんだろうかあれは。

*1:「BBB」の時は、氏がどんな原作にイラストを描きたいか決めるコンペのようなこともしたとか

*2:今はもう少し違う方向を目指してる気もする

*3:でも実際やってみたらいけた

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