周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

5分で分かる「魔術士オーフェン」シリーズ25年の展開

まあまだ25周年までは1年あるのですが。


「魔術士オーフェン」のテレビアニメ化が発表されました。このシリーズは、秋田禎信先生によるファンタジー小説ライトノベルです。魔術士の最エリート候補だったけれど、行方不明の姉を追って学校を出奔し、はぐれ旅するようになった主人公オーフェンの物語です。イラストは一貫して草河遊也先生が担当しています。


f:id:megyumi:20180323143106p:plain
 間隔は適当です

旧シリーズ(富士見書房)について

 kindleで50%offセール中


富士見書房KADOKAWA)から刊行された旧シリーズは、1994年-2003年にかけて展開されました。「スレイヤーズ」と共に当時のファンタジア文庫を牽引し、発行部数は1000万部超と言われています。


旧シリーズには


の三つの系統が存在します。「はぐれ旅」は第一部と第二部がそれぞれ10巻、「無謀編」は13巻、合計33巻が刊行されました*1。公開されているティーザービジュアルから、今回アニメ化されるのは「はぐれ旅」第一、二部だと思われますが、どこまでやるかは不明です。

新シリーズ・新装版(TOブックス)について


版元をTOブックスに移した新シリーズ(仮)は、2011年-2015年にかけて全10巻が刊行されました。この新シリーズも既に完結済みです。青年コミックサイズのソフトカバー単行本として発売。同時に、この時期、コラボカフェや原画展も開催されました。第5巻「魔術学校攻防」からは、ドラマCDが付属した限定版も刊行。2017年から2018年にかけて連続刊行されているのは、これを文庫化したものです。

  • 1巻目の「キエサルヒマの終端」は、旧「はぐれ旅」第二部のエピローグ的な後日談
  • 2-8巻までは約20年後、舞台をそれまでの「キエサルヒマ大陸」から「原大陸」に移した第四部。主人公は変わらずオーフェンだが、彼の娘たちや「無謀編」のキャラクターも登場する。空白の20年間を描く第三部は構想のみ存在する
  • 9、10巻目は第四部の外伝短編集


これとは別に、富士見書房で刊行された「はぐれ旅」一、二部を2冊ずつ合本した新装版*2が全10巻で発売されました。全巻購入した読者は、応募すると特典として、旧プレ編を全て収録した単行本「魔術士オーフェン・プレ編」が送られました。


旧「無謀編」はドラマCDつきの限定版「しゃべる無謀編」として、全7巻が発売されました*3ドラゴンマガジン連載時の挿絵を完全収録というのがセールスポイント。新作のプレ編が各巻に書き下ろされている代わりに、旧プレ編は収録されていません


これらは旧プレ編を除いて、全て電子書籍として配信されています*4

富士見書房KADOKAWA)と秋田禎信とTOブックスの関係


新シリーズは、そもそも2008年に作者の公式サイトで、無料日刊連載された「キエサルヒマの終端」が発端となっています。連載時タイトルは「あいつがそいつでこいつがそれで」といい、権利関係からかキャラクター名が全て「あいつ」「こいつ」「そいつ」に置き換えられていました。今でも2008年09月から03月までの過去ログを辿れば読めます。


突如始まったこの連載は読者に衝撃を与え、後に書籍化。新シリーズ第2巻に当たる「約束の地で」や、作者の別シリーズ「エンジェル・ハウリング」なども含め多数の書き下ろしを加えた限定版「秋田禎信BOX」として、TOブックスから単行本3冊セットが発売されました。


  • はぐれ旅「キエサルヒマの終端」「約束の地で」は、上記の通り後に単品で販売
  • オーフェンの学生時代の仲間たちであるチャイルドマン教室が全員集合する新作プレ編「怪人、再び」はこのBOXでしか読めません
  • 過去に角川mini文庫というポケットサイズのレーベルで発売された「魔術士オーフェンまわり道」二篇を収録
  • 他に「エンジェル・ハウリング」など作者の別シリーズの新作書き下ろしなどを収録


この時、秋田先生は「オーフェンの版権を富士見書房から引き上げている」「富士見ファンタジア文庫ではもう仕事はしない」ということを公表しました。その理由については直接述べていないものの、「誤解してほしくないのは、絶対に喧嘩別れではない」と強調しています。


5年くらいはそれでもドラマガ〇〇周年記念のお祝いコメントくらいしか繋がりはなかったのですが、2013年から「スレイヤーズVSオーフェン」の復刊、「スレイヤーズ25周年あんそろじー」への参加、神坂一とのスーパー/リアルロボット小説競作企画「メックタイタンガジェット」刊行、富士見20周年記念イベントでの対談など、仕事相手の選択肢として入ってくるようになりました。どれもイレギュラーなものといえばそうですが、「オーフェン」以外の作品の電子書籍もこの版元から配信されているので、両者の関係はそこまで険悪なものではないと考えていいでしょう。



一方で、現在の「オーフェン」本編は、あくまでTO BOOKSから展開されています。今月のドラマガで発表されたコラボ企画でも、(c)を持つ会社として秋田と共にクレジットされています。


TOブックス(T.O.Entertainment)は、元角川・富士見の編集者らが立ち上げたエンタメ企業です。設立当初はファンタジア文庫の作品である「ストレイト・ジャケット」「だから僕はHができない」のアニメをプロデュースしています。近年では「小説家になろう」から書籍化された「本好きの下剋上」が看板タイトル。秋田先生とは「オーフェン」再始動以前から、作家と出版社の間に入って交渉する出版エージェントとして契約を交わし、また「誰しもそうだけど、俺達は就職しないとならない」などを出版しています。


秋田先生が新シリーズの刊行に当たりこの版元を選んだのも、旧シリーズ刊行当時の「呼吸」を知っている旧知の編集者がいるから、ということでした。

TVアニメについて


第一期「魔術士オーフェンは、1998-1999年にかけてTBS系列で2クールが放映されました。監督は「劇場版スレイヤーズ」のわたなべひろし。「はぐれ旅」第1巻「わが呼び声に応えよ獣」をベースに、第2巻「我が命にしたがえ機械」、第4巻「我が森に集え狼」、それとオリジナルエピソードを交えたものです。「監督が原作を読んでいなかったので1巻分で2クール持たせた」という話をたまに聞きますが、当時の監督インタビューを読む限り普通に「はぐれ旅」1部終盤の話などをしているので、デマと考えてよさそうです。最終回のオチは、秋田先生がアイディアを提案したとか。シャ乱QによるOPや、相澤昌弘によるスタイリッシュなキャラクターデザインが話題となりました。



第二期「魔術士オーフェンrevengeは、1999-2000年にかけて同じく2クールが放映されました。監督は高橋亨。この人は少女革命ウテナ」の監督補佐だった人なので、どことなくそれっぽさを感じるかも。こちらは原作11-12巻「我が夢に沈め楽園」をモチーフにした完全オリジナルストーリーが展開されました。第一期よりもキャラクターの描画の線を減らし、動きを重視しているのが特徴です。



アニメのストーリーが原作とは違うものになった理由については、原作者が「原作と同じことをやっても意味がない」という趣旨の発言をしていますが、同時にわたなべ監督は「原作の世界を壊さないようにしてほしいとは言われました*5」ともコメントしています。まあこの二つは別に両立可能ですが……。


2011年には、両作ともにDVD-BOXが発売されました。ネット配信については、TBSオンデマンドから配信されていたこともありましたが、現在は配信停止となっています。

ドラマCDについて


旧シリーズ時代には、アニメに合わせてラジオ番組が放映されていました。そこで放送された、「無謀編」ラジオドラマを収録したドラマCDが2枚発売されています。キャスティングは基本的にアニメに準拠。「無謀編」のヒロイン、コンスタンス・マギーはアニメでクリーオウを演じた飯塚雅弓が兼任しました。他に、ボニー・マギー役に大原さやか、キース・ロイヤル役に緑川光など。


2005年には「スレイヤーズVSオーフェン」のドラマCDが発売。ドロシー・マギー・ハウザ➖役に斎賀みつきが抜擢されました。


新シリーズを音声化したドラマCDは、単行本に特典として付属したものです。後にAmazon Audibleなどのサイトで配信、現品はTOブックスの通販のみで入手可能となっています。基本的に富士見時代とキャストは同じですが、第四部のマジク・リン(30代後半)については、南央美さんから鈴木千尋さんにバトンタッチされました。南さんが中年男性を演じるのは難しいという判断によるものだと思われます。以下は新規キャラのキャストの一部。


「しゃべる無謀編」のドラマCDは、新プレ編含むその巻の原作からチョイスされたエピソードを音声化したものです。現在Audibleで配信が進行中。


今回のアニメでもこのキャストが継続するかは不明です。とりあえず、現時点ではまだ声優陣に話は行ってないようです。

新旧コミカライズについて


富士見時代のコミカライズは、「マトゥルスの血族」の沢田一が担当。はぐれ旅1巻「獣」~6巻「後継者」をベースに、一部「無謀編」のエピソードなどを交えたストーリーが展開されました。単行本は「魔術士オーフェンはぐれ旅」が全6巻、「魔術士オーフェンMAX」が全2巻。


2016年から、「魔術士オーフェンはぐれ旅」の連載がKADOKAWAwebコミックサイト「ファミ通コミッククリア」でスタートしました。作画は連(むらじ)原作に忠実であることを謳い、第一部を最初から漫画化。月刊連載で、現在は原作3巻「亡霊」分が進行中です。


2017年からはニコニコ静画にて「プレ編」の連載がスタートしました。作画は雀葵蘭。掲載は不定期のようです。

副読本・画集など


富士見書房時代は、副読本も何冊か発売されました。「魔術士オーフェンはぐれ旅DX」は、大判サイズのガイドブック。「エンサイクロペディア魔術士オーフェン」は、当時の原作のデータを可能な限り網羅した副読本。情報量が多くて読み応えがあり、設定が複雑な本作を理解するにはおすすめの一冊です*6。「エンサイクロペディア魔術士オーフェン無謀編」は、「無謀編」のみに絞ったものですが、内容がやや薄いかも。「魔術士オーフェンファンブック」は、読者による人気投票の結果などが掲載されています。いずれも、旧シリーズが進行中に発売されたものだという点はご注意ください。それと、これはドラゴンマガジンの増刊として発売されたものですが、「ザ・ベスト・オブオーフェン」もインタビュー等がなかなか充実しています。


草河遊也先生のイラストも、本作の魅力の一つです。「鋼の後継者」「黒の聖域」はファンタジア文庫で刊行中のイラストを集めた画集。大判サイズでオーフェンたちが堪能できます。「草河遊也原画展2012原画集」は、旧シリーズ終盤~新シリーズ序盤くらいまでのイラストからセレクトされたものを収録。ページ数が前2作の半分しかないのが痛いところです。

他作品とのコラボなど


スレイヤーズVSオーフェン」は、秋田先生と神坂一先生とのコラボ小説。両作品のキャラクターが謎の異世界に召喚され、共闘することに。「オーフェン」サイドからは「無謀編」のコギー、キースらが参戦しました。2001年に雑誌に掲載された後、2005年に単行本化。2013年に復刊されています。製作の様子を収録したチャットログも話題になりました。こちらは電子版に収録されています。ドラマCDも発売されました。


2012年にはクロスオーバーRPGヒーローズファンタジア」(PSP用)に参戦しました。90-00年代のアニメ10作からキャラクターが集結するもので、バンダイナムコゲームスから発売されています。こちらは、秋田先生はシナリオには関わっていないものと思われます。


2016年には、「こち亀」が様々な作品とコラボする小説アンソロジー集「VSこち亀」に秋田先生の短編小説が収録されました。両さんがトトカンタに、オーフェンが葛飾亀有に、入れ替わりに召喚されるというものでした。


2018年には、月刊ドラゴンマガジン及びファンタジア文庫30周年記念企画として、現在の富士見の看板「デート・ア・ライブ」の橘公司先生が、「オーフェン」を執筆すると発表されました。詳細は不明ですが、どうやらスピンオフという形になるよう……?

原作・アニメその他関連作品の一覧

現在入手できるものを優先的に掲載しています。

原作


旧プレ編は現時点では残念ながら、非売品の「魔術士オーフェン・プレ編」を探すか、中古の旧無謀編を集めるしかないようです。

コミカライズ


連版はもうすぐ「我が命にしたがえ機械」が上下巻で発売されます。

終わりに

いかがだったでしょうか。原作は完結したり再開したりまた完結したりしつつ、なにかしらの展開がこれまで続いてきました。今回のアニメ化は、その流れにあるものです。また、秋田禎信は「オーフェン」だけでなく他にも刺激的な作品を多数発表しています。当ブログでも秋田禎信 カテゴリーの記事一覧でその一端を取り上げているので、興味のある方は是非ご覧くださればと思います。

*1:正確にはそれ以外にポケットサイズの角川mini文庫から全2巻の外伝が刊行されている

*2:新シリーズと同じくソフトカバー単行本

*3:ソフトカバー単行本

*4:正確には第4部のラスト2冊は5月、6月に配信

*5:が、おおむね信頼して頂いているようです、と続く

*6:当時基準

広告を非表示にする