周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

女児アニメでkawaiiの過剰摂取 「リルリルフェアリル」中毒に陥る大人が漸増中

大きなお友達」によるキッズアニメの評価基準として、どれだけ「清く正しい子供向け」から逸脱しているか、というのがある。お行儀のよさが求められる子供向けではありえない、大人にしか分からない「マジキチ」なパロディや毒のあるセリフ、常軌を逸した「カオス」な展開……。具体的にこういった要素に定評がある作品としては、「おねがいマイメロディ」「ジュエルペット」「プリパラ」などが挙げられる*1

 

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最近では「ひみつのここたま」も妙な方向で人気を得ているし、男児向けでは「遊戯王」なんかも結構すごいと聞く。長期作品なら「クレしん」も侮れない。わたしもこういった作品は好きだ。でも、それらは本当にキッズアニメにおいて異端なんだろうか、とふと思うことがあって。むしろ、子どもに向けられているからこそ、変に物語の整合性とか論理性を気にせずぶっ飛んだ展開がやれる、なんてことはないでしょうか。

 

リルリルフェアリル~妖精のドア~」は、わたしが近年観ている女児アニメの中では逆に珍しい「正統派」の作品だ。

 


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ジュエルペット」の後継であるサンリオ・セガトイズ原作のこのアニメは、今年2月から始まり、テレビ東京系列と、AT-Xで放映されている。監督は映画「キンプリ」が絶好調な菱田正和……との繋がりが噂されている新人美少女JK監督・五城桜。フェアリルと呼ばれる、花を始めとする動植物をモチーフにした妖精たち*2が、いかにもファンシーな世界「リトルフェアリル」で、ゆるふわ~っと魔法の修行を積んで、成長していく。それだけの話。「好きという感情を、時と場所を考えず相手に押し付けるとうざがられる」とか「学校にオシャレをしてくるのもいいけどTPOという考えを取り入れるとオシャレのバリエーションが広がるかもね」とか、そういったことを教えてくれる寓話としてよくできてる。触手に襲われたり、生命の危機がわりと頻繁にある。かわいいキャラクターが時折妙に切れ味鋭いセリフを吐いたりする。でも、それよりなにより、

 

かわいい。

 

めっちゃかわいい。

 

……ちゃかわいい♥(都内在住・社会人・男性)

 

何がそんなにかわいいのかというと、まず手乗りサイズなのがかわいい。へちゃむくれな造形がかわいい。何かって言うと台詞をハモらせるのがかわいい。この世にひとつも悪意なんてないみたいな顔してるのに時折思い出したように曇りだして、でも次の瞬間にぱっと満面の笑みを浮かべるのがかわいい。基本的に妖精同士スキンシップ多めで、かわいい×かわいい=もっとかわいい。「ラブライブ!」で一躍有名になった内田彩楠田亜衣奈や、「アイドルマスターシンデレラガールズ」の久野美咲、そして花守ゆみり日高里菜といった若手声優の、舌っ足らずでどこかアニマルっぽい声の妖精たちが最高にかわいい。

 

刺激の強いアニメに慣れすぎた大きなお友達kawaiiの嵐が襲い、心の防御機構をずたずたにして帰っていく。頭空っぽにして多幸感に浸れる、そんな土曜朝に相応しい癒やしの30分間。

 

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1話時点での評判はおおむね「可愛いしよくできてるけど……まあ正統派女児アニメってこんなもんだよな」という感じに落ち着いていた。けど、回を重ねていくにつれて評価の方向性はそのまま、「これでいいんだよ……! これがいいんだよ……!」と中毒症状に陥る大きなお友達が続出している。特に第9話「ローズが大好き!」は、主人公の天然ウザカワフェアリルたらしの主人公りっぷが、いつも一人でいる「ちくちく」ローズを追いかけ回すという話で、なんというかもう……最高でした。

 

 

……人間が暮らす世界とリトルフェアリルは、余人には知られざる扉で繋がっている。というか繋がることがある。「ビッグヒューマル」と呼ばれる人間世界からフェアリルたちを見守っているのが、フェアリル大図鑑を持ち彼女たちの研究家を目指す乙女系男子・花村望(cv.花江夏樹)くんだ。

 

 

普通この手のアニメで人間サイドの主人公*3というと女の子が多い気がするけど、あえて少年にした狙いはなんだろうか。ジェンダー的なアレコレの目配せ? 瓶詰妖精フォロワー? ……フェアリルたちを愛でるその姿は一部視聴者から時にネタにされ、時に「フェアリルを見てる時の気持ち悪い笑顔(いい意味で)がこのアニメを観てる時の俺/私にそっくり」と共感を呼び、愛されている。冒頭、「みんな、フェアリルって知ってるかな?」と呼びかける花村くんは、わたしたちをあのkawaiiでいっぱいの箱庭世界に連れて行ってくれる水先案内人だ。

 

人間の世界ではフェアリルは空想上の生き物とされている。一方、リトルフェアリルでは、扉の向こうにあるビッグヒューマルとそこに住むヒューマルの存在は自明のことだ。しかし彼ら「大きな生き物」は危険であるからという理由で、成長するまで接触を禁じられている。フェアリルたちのヒューマルへの対応は怖がるか、羽も生えてないなんてとバカにするか、あまり興味が無いか……。でも、りっぷは違う。フェアリルとして生まれた時に花村君とニアミスしていた彼女は、自ら扉を開けて彼にもう一度会いたいと願っている。基本的に1話完結で、今のところ大体の回は事前知識ゼロで観ていられるけど、その辺りが今後のストーリーの軸になってくるのでしょう。

 

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キッズアニメは1年物が多い。そしてこの手のアニメでは、ちょっと見逃すともう全然テイストが別物の作品になっているということがままある。リルリルフェアリルも今後どう転がっていくのか分からない。だから今はただkawaiiを味わい尽くそうと思う。もし君がこの文章を読んで少しでも興味を持ってくれたなら、休日の朝にはぼくと一緒にこう唱えるんだ、「リルリルフェアリル~」(cv.花江夏樹

 

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*1:もちろん、これらの作品がマジキチ/カオス一辺倒ということはない

*2:男女問わず

*3:基本的に語り部ポジションなので、言うほど出番ないけど