周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

みんなで作るインターネット百科事典的なサイト群の話

wikipediaの自分の趣味に関連した項を編集するのはわりと好きです。感情を交えず事実だけを淡々と記入していく喜びってのはあると思いますし、お気に入りの作家や作品の項がなかったり何年も手つかずになってたりすると、ぐぐって一番上に出てくるのにこれじゃいかん!と妙な使命感が湧き上がってきます。

 

でも、もう随分前からwikipediaだけがユーザー参加型のインターネット百科事典としてオンリーワンではなくなってきているような気がして、他の辞典編集を趣味としている人はどうなのかなー他のサイトでご活躍されてたりするのかな―と思ったりもしているので、参考までに日本語で記述されているそういったサイトを並べてみました。運営などについては各サイト詳しくないところもありますので、間違いに気づいた方がおられましたらご指摘お願いします。

 

Wikipedia


 

2001年開設。設立者はジミー・ウェールズとラリー・サンガー。運営はウィキメディア財団。英語を始めとする291の言語それぞれに事典が編まれている。日本語版の記事は100万件以上。編集は誰でも可能。単に「wiki」といった場合、正確にはこのサイトだけでなく他のインターネット百科事典やまとめサイトなどでも広く使用されているシステムのことを指す。

 

このジャンルの火付け役。基本的に内容は真面目なもので編集に対しての心理的な敷居も高そうだが、情報の信頼性については専門家が疑問を呈することもしばしば。編集合戦、荒らし、記事の偏り、速報を目的とした記事、ネタバレしすぎてる「あらすじ」、資金難などが悩みの種。

 

日本語版はアニメや漫画の項目が圧倒的に多いと言われる。自分的には「原作」の項目なのにキャラクターの名前の横にアニメのCVを記述する人は最大の敵。利便性とか知るか!「○○な役柄を演じることが多い。だが△△から□□まで幅広く演じる。最近は☆☆といった役柄も多い」までがテンプレになってるのは、その慎重さは必要なものだろうし間違っちゃいないんだろうけど……。有名人の「親交が厚い」の統一基準をそろそろ設けるべきではないかとも思ったり。

 


 話題の言葉がわかる、みんなで編集するキーワード


 

2003年開設。運営は株式会社はてな。項目数は2012年時点で30万件以上。編集は、はてなユーザーになってから一週間経過してからでないとできない。元々はweb日記サイト「はてなダイアリー」の機能のひとつで、本文中に含まれるキーワードに自動的にリンクを貼り他の日記に繋げるものだった。本邦のこの種のサービスとしては比較的古いもののはずだが、最近はやや影が薄い……と感じてしまうのは、自分が利用から遠ざかっていたせいだろうか。インターネットの流行語を独自の視点から解説した記事が多いのが特徴。

 

2008年からは、「はてなダイアリーキーワード」だった正式名称を「はてなキーワード」に変更し、ダイアリー/ブログから独立したサービスとなった。が、自動的にリンクされることは変わらず(有料版なら解除できる/閾値をいじることでリンクの数を少なくすることはできる)、CSSを編集しリンクの下線を消すなどして、パッと見では分からなくしているユーザーも少なくない。一時期、wikipediaに同じ項目がある場合そちらの説明も併せて掲載していた。

 

アンサイクロペディア - アンサイクロペディア


 

 2005年開設。設立者はジョナサン・ホアンと匿名の協力者ら。80以上の言語それぞれで事典が編まれている。日本語版の総記事数は2016年2月現在18920本。元々はwikipediaから削除されたネタ記事の保管所だったとか。それがいつの間にか独立したサイトとなっていた。その成り立ちからそのデザインはほぼ本家まんまだし、wikipediaを編集する人たちを「ユーモア欠落症」と皮肉っていたりもする。インターネット版「悪魔の辞典」。

 

記事の傾向としては、知っての通り何かしらのユーモアがある記事しか載せてはいけない。ネタ度が低いと判断された場合、躊躇なくユーモア欠落症」タグが貼られる、ある意味本家以上のモヒカン地帯。またある程度完成した記事でなければ投稿してはいけない。自分としては、これから面白いことを言いますと宣言してから面白いことを言って受けを取ることの難しさを教えてくれるサイトでもある。

 

ニコニコ大百科

 

2008年開設。運営は未来検索ブラジル。項目数は2015年3月時点で37万以上。編集は、基本的に有料であるプレミアム会員しかできないが、それでも盛況なのはニコニコという巨大コミュニティを母体に持っているが故だろう。2015年8月時点でそのプレミアム会員は250万人を突破しているという。

 

wikipediaなどと違って、記事の著作権は運営元に帰属するのが特徴。でもwikipediaのそのまんま引き写しみたいな記事も多いような……それはでも、このサイトに限った話ではないか。項目記事の直下に掲示板がついていて、コミュニティとしての役割も果たしている。

 

ピクシブ百科事典

 

(何故かサムネイルを生成するスクリプトがトップページに効かないのでリンク先は百科事典内のピクシブ百科事典の項目で)

 

2009年開設。運営元はピクシブ百科事典製作委員会。当初は「pixpedia」というサイト名だったが、2010年に現在のものに改称。編集するにはpixivの会員(無料会員でも問題ない)である必要がある。

 

漫画、イラストなどを投稿するサイトだけあってアニメや漫画、ゲーム等の作品/キャラクター/カップリング、性的趣向やシチュエーションなどの項目が非常に充実している。検索に使われる関連タグとの結びつきが強固で、関連タグさえ並べてあれば「百科事典」としての説明がなくともpixivユーザー的には有用な場合もある。リダイレクト機能がないための表記ゆれが問題。

 

アニヲタWiki(仮) - トップページ

 

開設は2002年?当初は「冥殿」氏の個人サイトのコンテンツの一つだった。2012年に元サイトが閉鎖されてからは@wikiに場を移し、有志による旧wikiのサルベージが行われた上で、現在も「アニヲタwiki(仮)」として更新が続けられている。2016年02月時点の項目数は32000以上。

 

タイトル通りアニメや漫画の項目が多いが、それ以外のネタで作成しても特に問題はない。作品の項目を立ち上げるにも、他のサイトがまず概要と作品リストと担当声優と必要不可欠な情報を並べなければならないのに比べると、筆者がその作品のどこを面白いと思ったか、世間的にはどこが受けたかなど、ひとまとまりの読み物としての面白さを意識してる記事が多い気がしなくもない。他の編集者に対して記事の追記、修正をお願いする文章で遊ぶのがお約束?

 

chakuwiki

 

開設は2003年?上記のアニヲタwiki(仮)同様、「一刀」氏の個人サイト「借力」のコンテンツがその発端で、書籍化された「バカ日本地図」もここから生まれている。2005年からはMediawikiで「ご当地の噂」をメインとした現在のchakuwikiをスタート。「バカが、バカなテーマで、バカな情報を集める場」として、地方ネタ以外にも項目を増やしつつ、現在に至っている。項目数は2014年時点で15000以上。

 

投稿者一人一人が箇条書きで短文を書き足していく形式が特徴。結果、情報を提供する場としては全く整理されていないページが出来上がるが、自分としてはむしろあの雑然とした雰囲気が結構好きだ。とはいえこのサイトの情報はあくまで「噂」「主観」「思いつき」であってwikipediaのような真面目なサイトでなければアンサイクロペディアのようにガチでネタをやるサイトでもないのだけど。上述したように地方ネタ、そして鉄道ネタが豊富で、自分が住んでいる県や市の情報をぐぐってみると上のほうに出てくるという経験をした人は多いだろう。

 

この文章を書いていく過程で 

例えば「wikipedia」という項目をwikipediaアンサイクロペディアはてなキーワードと……とにかくここに書いてある全サイトで確認してみる、なんてことをしてみたんですが、同じインターネット百科事典という場に対する他のサイトの意識みたいなものが見られて面白かったです。ニコニコはpixiv百科事典は敵視してるけどアニヲタwiki(仮)にはそうでもない、みたいな(あくまで例えです)。まあ当然それぞれ執筆者が違うんでしょうけど。

 

今回は特定の方向に特化したものは取り上げなかったんですが、他に有名なのは作画@wikiとかでしょうか。特定の作品を取り扱ったものとしては異様に完成度が高いオーフェンペディアさんにはいつもお世話になっています。以前、講談社の編集者の人が、公式で上遠野浩平wikiを作ろうとゆってたのはどうなったのやら。

 

あとこれは百科事典系のサイトではないものの、相当昔からあるし作品タイトルでぐぐると結構上に来るのに話題になってるところをあんまし見たことがない作品データベースの成り立ちとか実情とかが気になるのでした。