周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

青木U平「フリンジマン」 不倫は文化ですか? いいえ、エンタメです


恋愛、というか、男女の駆け引きをレクリエーション的に描いた作品が、今、楽しい。「次にくるマンガ大賞」を受賞した「かぐや様は告らせたい」、サンデーで人気急上昇中の「保安官エヴァンスの嘘」、ラノベでは「OP-TICKET GAME」などなど。


恋愛あるある、異性あるあるを絡めつつ、「これだから男は」「これだから女は」式地獄に陥らないよう、キャラクターを愛しいおバカに描く。結構な作者のバランス感覚が要求される。


sube4.hatenadiary.jp


上に挙げた作品の主人公は、多くが童貞だったり異性と付き合ったことがなかったり。まーそっちのほうがキャラに可愛げ(? が出るしね。そーゆー点で「不倫」を目指す以上主人公が既婚者である「フリンジマン」という漫画は、異色とは言えるかな?

場末の雀荘に集まった4人の男たち。彼らはある共通の願望で繋がっていた。その願望とは「愛人を作りたい!!」という清々しいまでに不純で、申し開きできないくらいにストレートなものである。そして男たちは『愛人同盟』を結成する!! 不倫のベテランである井伏(通称:愛人教授)から、愛人作りのノウハウを伝授される田斉たち。果たして、彼らは愛人を獲得することができるのか……ッ!?

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「魔術士オーフェン」は銃の存在するファンタジー世界をいかに描いたか

銃は、大陸でも類を見ない、強力な兵器のひとつではあった。が、最強ではない。便利ですらないかもしれない。数発撃つごとに暴発の危険性は高まり、さりとて一発目から危険がないわけでもない。故障も多い。それでもなお、この武器は騎士たちの誇りであり続けた。大陸の治安を守る者だけが使うことを許された聖なる武器。


魔術士オーフェンはぐれ旅 我が庭に響け銃声』より

銃器について。
なんでかわたしは、イスラエルに惹かれるみたいです。
そんなわけでアサルトライフルといえばTAR-21です。
ディスカバリーなチャンネルの、最強兵器がどうのといういつものやつで紹介された時、現地の人がアメリカ人の紹介者に試射させて「へー、アメリカ人が撃ってもわりと的に当てられるもんだネー」的な素敵コメントしていたのが印象的でした。
そして彼いわく、「連射性能はもちろん良いよ。まあカタログスペック的にはね。でも実際ライフルを使う時にフルオートで撃つ奴はいないだろ。こいつが本当に優れてるのはまず撃ちたい時に必ず弾が出ること。そして遠すぎない距離で当てやすいこと」
これで学んだってわけではないですが(この番組見たの最近ですしね)、わたしが現実性を感じる銃器のスペックっていうのは、そのあたりが一番ピンときます。
彼らにとっては現実性どころか現実ですから、単に感心して済むような話でもないんでしょうけどね……


http://www.motsunabenohigan.jp/oldnote/200810nt.htm


「刀剣や魔法が主な攻撃手段である作品では、銃火器は不当に弱く描かれているッッッ」というのはよく聞く話ではある。「現実的に」考えればそういう傾向もあるかな、とは思う。銃が「真っ当に」強い作品としては人類最強の範馬勇次郎が、腕っこきのハンターの銃弾に気絶させられた「グラップラー刃牙」が真っ先に出てくる。*1。あと「トライガン」。銃は直線の攻撃しかできない、それに対して刀は曲線的な動きが可能、って理論好きだったんだけどなあ……



我らが「オーフェン」シリーズも、銃が存在するファンタジー小説としてたまに例として挙げられる。ではその評価はというと、わりとバラけてる気がする。


そこで、以下でシリーズ中の銃の扱いをざっと追ってみた。未読の人は、作品世界は都市圏ではガス灯や下水道なども整備された、産業革命を経た文明が構築されてる。作中最大の攻撃力を持つ魔術は、人間の場合他種族との混血によるものであり、遺伝的素養がない者は絶対に使えない。人間の使う魔術は音声魔術と言って、声の届く範囲までしか効果を発揮しない。以上の3点だけ知っといてほしい。

  • 第1部~拳銃は近接戦闘で使うもの
  • 第2部~狙撃銃の登場
  • 新シリーズ~狙撃銃の普及
  • 結論

*1:ただしこの時点のオーガは今現在ほどには化け物じみた強さではなかった

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お前はまだ本当の安中榛名を知らない(2017)

群馬の実家に帰る際、安中榛名駅に寄ったことがある。北陸新幹線の、高崎と軽井沢に挟まれた駅だ。榛名とついてるけど観光地として有名な榛名山とは連絡はない。一日の乗降客数は約200人。駅前にはコンビニどころか商業施設自体全く見当たらない。一説には、北陸新幹線開業時「県内に駅も作らないのに金出せるか!」と出資をつっぱねようとした群馬県を納得させるために設置されたのだとか。私が訪れたのもこれといって目的はなく、「飲み会のネタにでもなればいいか」くらいの気持ちだった。


高崎駅からこの駅までは新幹線で10分もかからない。ただ、本数が1~2時間に1本なので乗り過ごすと大変ではあります。料金は1180円。


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高崎名物「シャンゴ風スパゲティ」


駅一帯は山を切り開いて作られたようで、ホーム裏手は緑色の壁がそびえ立ってる。駅舎はまあ普通。改札を出たところには釜飯屋がある。壁には「俺たちはまだ本当のグンマを知らない」とのコラボポスターが貼ってあった。なんつう皮肉だ。


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湘南日帰り海めぐり

今年の夏は、海を見たい。ナイターに花火大会にアニサマにと、自分としては「なんでここまで生き急いでるの……」ってレベルで満喫した夏。当然、海も外せなかった。


特に泳ぎたくはない。ガリオタのなまっちろい肌を人目にさらしたくない。でも、10年ぶりくらいに海を見たい。かといってほんとに見るだけ見て帰ってくるのも……。そうだ、せっかくなら近場で気になってた海岸を日帰りでいくつか巡ってみればいいのでは? それが身軽な独身男性の海の楽しみ方では?「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。8月上旬の平日のことである。


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サザンビーチちがさき

とりあえず範囲を湘南近辺と決めて、南下する。横浜以南に行こうとする度、新宿まで出たほうが早いという事実に打ちのめされる多摩県民です。JR茅ヶ崎駅東海道本線・相模線)から徒歩20分、バスで10分。住宅街を抜けたところにサザンビーチちがさきはある。海は広いのになんとなく圧迫感を覚えたのは、後ろに防風林を背負ってるせいか、遊泳可能な範囲が狭いせいか。防風林の向こうの国道134号線はちょっと首都圏離れした風景。泳ぐよりサーフィンて感じはした。わりとアットホームな感じの海の家で昼メシ。甘じょっぱいラーメンとフランクフルトとビール。


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店員のお姉さんに聞いてみたらこの日は波が高くて遊泳が禁止されるかされないかっていうところだったらしい。関係ないけどサザンでは「愛の言霊」がいちばん好きです。

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祝プレオーフェン漫画化 コミクロンの三つ編みの行方

魔術士オーフェン」シリーズは、90-00年代にファンタジア文庫から刊行されたラノベだ。当時のファンタジア文庫といえば、書き下ろしのシリアスな長編と雑誌連載のギャグ短編、二つのシリーズが同時進行するスタイルをもって人気を得る作品が多かった。「オーフェン」にも、シリアスな本編「はぐれ旅」とギャグ短編「無謀編」の二つの流れが存在する。そして第三の流れが、「無謀編」単行本*1に毎度書き下ろされる「プレ編」と呼ばれるシリーズ。本編から遡ること5年前、主人公オーフェンの学生時代を描く、タイトル通りの前日譚である。


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前日譚という創作手法には、何故か人を惹きつけるものがある。本編以上の人気を得るものも少なくない。これまで明かされなかった謎が今、明らかに! っていうアオリはよく見る。先が見えない楽しさではなく、先が見えてるからこそ、こいつら今はこんなだけど将来ああなるんだなあ一体どういう経緯を辿るんだろう、というワクワクもページを繰る手を早めてくれる。


世間の荒波に揉まれ、やさぐれ、金貸しとして立派なチンピラと成り果てたオーフェンも、5年前は魔術の名門《牙の塔》の最エリートだった。当時の名前はキリランシェロ。そして名門校の生徒というのが度々そうであるように、彼が所属する「チャイルドマン教室」は奇人変人の集まりであった。「プレ編」は、本編ではオーフェンの姉アザリーが引き起こした事件によって離散している、彼らの輝かしい日常を綴っている。

*1:正確には「無謀編」は単行本シリーズ名であって、ドラゴンマガジン連載時のタイトルは短編も「はぐれ旅」

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