周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

「小中高校時代、学校や公共の図書館にラノベはあったか」アンケート結果

ライトノベルと図書館の関連性が話題になる度、最近の図書館にはラノベが置いてるのか! という声が上がる。一方で、いや昔からラノベ置いてあったしなんなら自分で購入希望出して入れてもらったし、という反論も出てくる。実際そこのところどうなの、と思ったので、20代、30代、40代と回答者の現在の年代別にTwitterでアンケートを取ってみたら、予想以上にたくさんの方に回答してもらえた。





突発的な思いつきだったので、レギュレーションがゆるゆるなのは勘弁。少年向け少女向けと分けたのは、中高生の図書館利用率の男女比とか見てるとそこら辺で差が出そうだなあと思ったからなのだけど、それなら3つ目の選択肢を2分割しないとあんまし意味なかったかもね。twitterのアンケート機能の選択肢の最大数がもっとあれば……! 期間は11月15日13時過ぎから翌日の同じ時間まで、24時間。後から下記のような付け足しをしたけど、RT数を見る限り、多分実際の回答にはあんまり反映されてない。




結果としては、どの年代でもラノベが図書館に置いてあった人は、なかった人より圧倒的に多い、ということにはなった。

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あざの耕平「Dクラッカーズ」 おクスリキメてラリった挙句が熱血スタンドバトル

90年代後半から00年代前半のオタク文化というと、セカイ系だったり泣きゲーだったり少年犯罪だったり何かと根暗なイメージがある。実際に個々の作品を当たってみると案外そうでもなかったりするんだけど、逆にそんな時代だからこそ、健全な価値観の作品が「こんな時代なのに!」と評価されていた気もする。


あざの耕平Dクラッカーズ」も、ドラッグ・カルチャーという根暗な題材を扱いながら、シリーズ通して読むといたって健康的な価値観のラノベではあった。

通称・カプセルと呼ばれるそのドラッグには、不可思議な噂があった。曰く―飲めば、天使や悪魔が出てきて願い事を叶えてくれる、と。7年ぶりに日本に帰国した姫木梓を待っていたのは、陰を持つようになった幼なじみの物部景と、彼がカプセルを常用しているという事実。「僕は自分の意志でここにいる」記憶の中と同じ声で、でも記憶の中とは違う瞳で景は梓に囁く。「君は関わっちゃいけない」カプセルの真実の効力、それに秘められたキーワード。王国、悪魔、そして無慈悲な女王―。“鍵”がかみ合った時、梓の前に姿を表す世界とは…!?孤独な魂が疾走する、ネオ・アクション・サスペンス開幕。

  • ホラー色の強い龍皇杯参加作
  • かっこよすぎるくらいにかっこよく~シリーズ全体を通して
  • メインヒロインの可愛さ←大事
  • 他作品との比較
  • 海野千絵の倫理観
  • 完結後

ホラー色の強い龍皇杯参加作


本作の初出は1998年。「龍皇杯」という、読者が連載作を決める競作企画の一環として、月刊ドラゴンマガジンに掲載された短編だ*1。これは著者のデビュー作で、後のシリーズ全体から見ると学園ホラーとしての色が濃い。ラノベでこの種のものは珍しかったこともあって*2、結構新鮮に映ったのだけど、一方で読み切りとして完結してて、「連載したらこの後どう続けるんだろう……」と思いもした。


結局、この時連載決定したのは榊一郎の「スクラップド・プリンセス」だったのだけど。あざの初の単著である「ブートレガース」を経て、2000年、「Dクラ」はシリーズ化される。ファンタジア文庫の姉妹レーベル、富士見ミステリー文庫の創刊ラインナップの一つとして。


 禁酒法時代のアメリカを舞台にしたコメディ色の強いガンアクション。後年、緒方剛志イラストによる新装版が出たけど、私は旧版のほうが好きです。

*1:後に短編集に収録

*2:とはいえ当時は「リング」「パラサイトイブ」などで和製ホラーブームが訪れていて、ラノベに限らず角川全体がホラーを推していこうとしていた節はあった、と後に作家の小林めぐみは語っている

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「相思相愛ロリータ」の同人エロゲサークル【夜のひつじ】の全作をプレイ後 「ゆ、許された」

昔々、ネオ・ジオンの偉い人は言いました。「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!」と。別にこのキャラクターこの台詞が端緒となったわけではないけれど、年端もいかない女の子に母性を求める、という性癖はオタクの間でそこそこ市民権を得ているようで。


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ララァが戦死した時、彼女は17歳でシャアは20歳。それに比べると艦これの雷やモバマスの桃華ちゃまなんていうのは外見上本当に幼くて隔世の感があるし、こういう文脈でのとことん甘やかしてくれる「母性」って実は祖母性とでも言うべきものじゃないのって思うけど、まあそれはそれとして。そんなロリ母性ブーム? に乗っかってヒットした同人エロゲが、サークル「夜のひつじ」の「相思相愛ロリータ」だった。

  • 純愛中出しロリユートピアノベル「相思相愛ロリータ」
  • エロが根っこにあるシナリオゲーという幻想
  • 縁組み性愛ロリユートピアノベル「ゆびきり婚約ロリイタ」
  • シロップ漬けボーイミーツガールADV「彼女、甘い彼女」
  • ノスタルジック幼馴染ノベル「幼馴染と十年、夏」
  • 愛ある射精管理からの~→たくさんお射精ADV「好き好き大好き!超管理してあげる」
  • 身代わり女装人質ADV「女装お嬢様への異常な愛情」とTSライトヴィジュアルノベル「親友が美少女になって帰ってきた」
  • だだ漏れデレパシーADV「幼馴染の心が読めたらどうする?」
  • 逆レイプ浮気ADV「純情セックスフレンド」と陵辱アフターADV「さようなら、援交娘さん」
  • 天使に吸われてお射精天国ADV「聖天使☆レベルドレイン」
  • その他小説、スマホゲーなど
  • 今後の展望

純愛中出しロリユートピアノベル「相思相愛ロリータ」

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仕事が忙しく徹夜続きで、日に日に心が擦り減っていくリーマンの「おか」くんが、満員電車の中で出会った少しおませな「まこ」ちゃんと、身も心も通わせていく。まこちゃんの何もかもを肯定してくれるような聖母っぷりもさることながら、おかくんの心情描写が秀逸で。


現場の誰もが限界だと思ってるのに上の人間は聞き入れてくれない、営業は営業でリストラされないよう必死でまた利益にならない案件を取ってくる、いきおい無駄な会議ばかりが増えていく、とりあえず今できることを一つずつ片付けていくしかない。終わりが見えない―― そんな疲弊した大人の日常が社会人プレイヤーの胸を打った。おかくんが疲弊しているからこそ、まこちゃんの底知れないロリ母性が一層引き立つのか。あるいはその逆か。


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わたし自身は、去年の6月にこのゲームに触れた。正直本作単体だとそこまでびびっとこなかったんだけど、テキストはものすごく波長が合ったので、その後一年かけて「夜のひつじ」の作品を全てプレイし、ライターである幌井学司氏が執筆してるジュヴナイルポルノも読み、ずぶずぶと沼に沈んでいった。エロゲで一人のライターにここまで入れ込むというのは初めてだ*1

*1:ロープライスなので手を出しやすいというのはあったけれど

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「サクラダリセット」「階段島」河野裕講演会 in 中央大学白門祭 レポ

11月4日に中央大学の学園祭「白門祭」にて開催された、河野裕先生の講演会に行ってきた。中央大学にお邪魔するのは、3年前に米澤穂信先生の講演会に参加して以来だ。って、そういえばあれも文学会さん主催のイベントか。いつもお世話になってます。


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正式名称は「河野裕・高橋祐介対談講演会~小説をつくること~」。河野先生は『いなくなれ、群青』を始めとする青春小説「階段島」シリーズでブレイクし、「サクラダリセット」は実写映画化とTVアニメ化が予定されている。今後一層の活躍が期待される若手作家だ。もう一人、タイトルに名前のある高橋祐介さんは、「階段島」を刊行している新潮文庫nexの編集長で、河野先生と名を連ねているものの、基本的には聞き役に徹していた。この文章はそのレポートとなる。ただし、実際の講演会は

  1. まず河野先生の作品、特に「階段島」シリーズがどのように書かれたか
  2. 河野先生が影響を受け、また今回の課題図書として推薦した乙一『失はれる物語』、夏目漱石草枕』、村上春樹『スピートニクの恋人』、ミヒャエル・エンデ『モモ』、秋田禎信『ハルコナ』の創作者視点からの解説
  3. 休憩を挟んで質疑応答

という形を取っていたのだけど、わりと話題があっちこっちに飛んだり、前半は春樹までで時間切れになったりして、そのままだと分かりづらそうなので、そういう場合時系列は無視して、話題のまとまり毎に書いていく。


基本的に以下に書いてあることは全て河野先生の発言*1。わりとうろ覚えなところもあるので、この文章を閲覧してくれた人の中に講演会に参加した人がいたら、是非ツッコミを入れてほしい。というか、参加しなかった人は「当日はこういう話をしてたんだな」くらいに大まかな流れだけ受け取ってもらえると。それと、創作手法に関して河野先生は何度か「これは後で自分のやったことを分析したらそうなったというだけで、実際書いている時はそこまで意識してない」と言っていた点にも留意してほしい。強調部分は筆者によるものです。


※他の参加者の方からご指摘を受け、一部文章を修正しました。

  • デビュー前の経歴
  • 『いなくなれ、群青』 なぜこのテーマで物語が書かれているのか
  • 『失はれる物語』 設定とプロットの関係について
  • 草枕』 小説という媒体の面白さについて
  • スプートニクの恋人』 文章表現について
  • 質疑応答
    • 「サクラダ」はどこまでが最初から考えられていた要素で、どこからが後づけなのか
    • イラストについて、何か指定をすることがあるか。「サクラダリセット」のスニーカー版で、ケイの外見が少しずつ変わっていったことに対して、何か知っていたら教えてほしい。
    • 自作で思い入れのあるものは
    • 高橋氏への質問。「群青」は「サクラダ」のような小説を、と依頼したそうだけど、他の著作の名前を挙げての依頼というのはよくあるのか。また「サクラダ」のどのようなところが好きか
    • 創作する上で、外で色んなことに直接触れるのと、例えば部屋にこもって哲学書を読んでいる、というのはどちらが重要か
    • 先ほどの講義で触れなかった『モモ』と『ハルコナ』について、これだけは語っておきたいというのがあれば
    • 秋田禎信「エンジェル・ハウリング」が好きで『シリアルバレット・オイタナジー』という二次創作のような作品を書いているが、秋田先生について
    • 個性的なキャラクターの台詞回しはどのように思い浮かぶのか
    • 頭のいいキャラクターが多いと思うが、執筆している時に注意する点は
    • 物静かな主人公が多いように思うが。
    • 書きにくいキャラクターというのはいるか
    • 小説以外で好きなもの/影響を受けたものは
    • 文章のリズムをかなり重要視しているように感じたが、漢字と平仮名の使い分けについてどう考えているか
    • 好きな色とその理由
    • 孤独について。また孤独感を誤魔化す方法
  • 閉会

デビュー前の経歴

小学生の頃からフィクションが好きだった。漫画、ゲーム、小説とメディアは問わなかった。その内、いつからか作家を志すようになった。多くの子供の夢がそうであるように、特にこれといったきっかけというのはない/覚えていない。


高校生の頃は新人賞に投稿する生活を送っていたが、どこにも引っかからなかった。


大学時代はとにかく書かなければ駄目だということで、1日20枚みたいな感じで目標を決めて書いていたこともある。今年は短編小説を書けるようになる、来年は長編を……といった風に年次ごとの目標も立てていた。


今回取り上げる作品は、『モモ』は小学生、『草枕』『失はれる物語』、それと『ハルコナ』……というか秋田作品*2は高校生、『スプートニクの恋人』はちょっと遅くて大学に入ってから読んだ。


卒業後はグループSNEというゲーム会社に所属。運良く作家デビューすることができ、現在に至る。


*1:の内、私が覚えているものを文章化している

*2:編注:秋田禎信は90年代から刊行している「魔術士オーフェン」シリーズが有名な作家で、河野先生は事あるごとに影響を公言している。『ハルコナ』は「階段島」と同じく新潮文庫nexから2016年に刊行された最新作

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キッズアニメのTwitter広報と、「リルリルフェアリル」公式

キッズアニメが好きな「大きなお友達」は、女性向けジャンルで同人活動してる人の一部と同じくらい、「公式」と自分たちの距離に敏感だ。基本的には作品は自分たちに向けて作られたものではないし、作り手もあまり大っぴらにこちらの需要にそれに乗っかってほしくない。劇場版が公開されたとして、例えば子供向けの上映回とは別に、自分たち向けとして隔離された上映回を設けてくれるような配慮が何よりありがたい。そんな考え方が広く共有されている。これが反転して、あるネタや商業的展開が自分たち向けと認識した時の喜び方は、より強いものがあったりするけれど……


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キッズアニメの広報に求められる倫理観とは


公式Twitterアカウントの運用については、ファンの間で合意が形成されていない面もある。このご時世、オタ向けほどではないにしろ、キッズアニメでもTwitterで広報を行っている作品は結構存在する。ただやっぱり対象年齢層*1Twitter見ないだろ、という考えからか、本腰を上げてないところも少なくない。で、子供が見ないなら他の広報よりは多少緩めでもアリっちゃアリかな、という。一方で、公式は公式、キッズアニメはどこまでいってもキッズアニメなんだから、それはTwitterも他の媒体も変わらないでほしい、という考えも根強い。放映終了から時間が経過してかつての視聴者が大人になった時、初めてそういう展開が許容される。


この手の話題だとアイカツ!」公式Twitterの宣伝担当者が頻繁に自作の百合SSをあげてたことが記憶に新しい。でもはたしてあれはキッズアニメだからどうこう、という問題だったのか……。女児アニメの代名詞である「プリキュア」は、作品そのものの公式アカはないけど制作の東映アニメーションが情報発信してるみたいだ。それと、「まほプリ」劇場版も公式アカウントを立ち上げてるのか。たまにスポーツ新聞でプリキュアの記事とか載ることあるけど、あれは誰に向けられたものなんだろう……


*1:本来? の

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