ジャンル:サンリオアニメのはじまり「おねがいマイメロディ」
サンリオ原作の人気キャラクター「マイメロディ」を主人公にしたアニメ「おねがいマイメロディ」も、放映開始から11年が経過した。今、ちょうど全208話を収録したBD-BOXなどが発売されている。ので語る。
アイキャッチでいつもマイメロを見守っていたサンリオのドン・キティさん。本編には未登場
2005年当時の朝アニメの状況
そもそも朝のアニメ特撮とゆえば、昔から*1東映の魔女っ子戦隊物ライダーなどを擁する「
「マイメロ」は、2005年に生誕30周年記念のTVアニメとしてスタート。関東ではテレ東日曜09時30分から。前番組は朝日小学生新聞連載の「
*1:いつ?
榊一郎「ドラゴンズ・ウィル」「棄てプリ」そして「ストジャ」 生粋の「軽小説屋」に覚えた同時代意識
ひとつのジャンルに多少なりとも長く留まっていると、
「スレイヤーズ」の最初のアニメ(1995)からライトノベルを本格的に読み始めたわたしにとって、1998年デビューの榊一郎はそういう存在だった*2。他ジャンルでは、和月伸宏や黒田洋介が自分の中で同じカテゴリに入っている。
続きを読む次世代の主人公とたてまつられる人間は、こっけいだねえ!
- 「ドラゴンボール」孫悟飯 息子はセルにやられてる
- 「ラブライブ!」亜里沙と雪穂 妹コンビはどこいった
- 「MAJOR」茂野いずみ 姉はここにいる
- 「アイカツ!」北大路さくら 取り残された後輩
- 「魔術士オーフェン」マジク・リン 弟子は結局帰ってきた
「ドラゴンボール」孫悟飯 息子はセルにやられてる
「ドラゴンボール」でセル編が終了してから数年後、大きく成長した悟飯が都会の学校に通い出した頃の話が好きだった。冴えない転校生が実はかつて地球を救ったこともある戦士で、日常生活でも力をセーブしなきゃいけないんだけど、ついやり過ぎてしまって……という設定にボンクラ魂を惹かれた。しかし、人気がなかったのか、元々その予定だったのか、物語はすぐに天下一武道会からの魔人ブウ編に入ってしまい、主人公としての悟飯の影も薄れていった。まああのままグレートサイヤマンを続けてても発展性がなかった気はする。
シリーズ物の世代を跨いだ主人公交代劇は難しい、とはよくゆわれる。なんだかんだゆって読者は旧主人公に愛着を持って作品についてきた人が多いだろうし、交代に当たって作品の変質は免れないし、逆に変わらないなら主人公を交代する意味がない。これに新主人公がシリーズ途中からの新加入キャラで旧主人公に対してやたら噛みついてきて作者からは優遇されていて(いるように読者には見えて)、なんていうのが加わるともう、旧主人公がやたらヘイトを溜めてでもいないと積みである。
悟飯については、人造人間との戦いで片腕を失い、トランクスの師匠ポジとなっている未来悟飯がかっこよかった。というかあの未来トランクス編自体のシリアスなトーンが最高だった。トランクスというキャラクターはフリーザを真っ二つにした初登場時から成功が約束されたようなもので、アニメ独自の続編「GT」ではチビ悟空、パンと共に冒険する主要キャラに選ばれている。悟空と違って社会的な意味でも良き父である悟飯の姿は、そこにはない。
それでも悟飯は一度は主人公の座に就いた。一方で、続編ではこいつら主役の話が見たいとファンから言われたりしながらも、さらに下の代にその座を奪われた、谷間の世代ともゆえるキャラクターっていうのもいる。
秋田禎信とかいうコラボ・ノベライズ大好きおじさん エロゲから国民的漫画まで
昨日、「VS.こち亀」の話をした。オーフェンとこち亀って接点皆無じゃないですか!? と驚いた人も多かったようだけど、実は秋田禎信という作家は、この10年くらい、意外なところでの原作つきの仕事やコラボに積極的に関わっている。昔に比べればネームバリューのある作家のノベライズというのはぐっと増えたし、例えば西尾維新辺りもかなり多いんだけど、秋田の場合全体の執筆量の中でのノベライズ・コラボの比率がめっちゃ高い。
ノベライズという仕事の魅力、本質について、秋田はこんなことを言っている。
ノベライズって、いつもの仕事よりほんの少しだけ孤独でないからか、なんか不思議なテンションになる気がするのです。なので実は、ノベライズ好きなのです。わたし。
— 秋田禎信 (@AkitaYoshinobu) 2015年5月11日
@Bubles_withK そうですねー。ノベライズって、元になる世界やキャラが頭の外にいる感じで、書いてるわたしにも楽しい経験でした。
— 秋田禎信 (@AkitaYoshinobu) 2015年5月30日
そんな話ばっかりしてても伝わらないので… そういや血界戦線を通してわたしが1番好きなコマっていうのがあって、話を見失いそうな時はそのコマ見直してました。それが「鰓呼吸ブルース」の、早速プリントアウトしようっていうコマなんですが。
— 秋田禎信 (@AkitaYoshinobu) 2016年4月3日
ここがね、血界戦線がなにかっていうのを示してるコマって信じてるのですよ。何故かはあんま言語化できないんですが…それじゃ余計伝わらないか。まあ単にこのエピソードが好きってだけな気もしますけど。そんな「好き」がなんなのかを纏めるのがノベライズって作業かなと思ってます。(あっ纏めた)
— 秋田禎信 (@AkitaYoshinobu) 2016年4月3日
では、実際に関わった作品はどんなものがあるだろうか。ちょっと長くなるけど勘弁して付き合ってほしい。
- 神坂一との合作「スレイヤーズVSオーフェン」(2001)
- 読者参加企画「スペル・ブレイク・トリガー!」(2003)
- きゆづきさとこ原作「パノのもっとみに冒険」(2006)
- 士郎正宗・Production I.G.原作「RD 潜脳調査室 Redeemable Dream」(2008)
- 舞城王太郎原作「魔界探偵冥王星O ホーマーのH」(2010)
- ニトロプラス原作「愛しい香奈枝さんの装甲悪鬼村」(2010)
- 岸啓介キャラクター原案?「ハンターダーク」(2011)
- 神坂一との競作「メックタイタン ガジェット 虐殺機イクシアント」(2013)
- 神坂一原作「ゼフィーリアの悪魔」(2015)
- 内藤泰弘原作「血界戦線 オンリー・ア・ペイパームーン」(2015)
- わたしにとって好きな作家の書くノベライズとは
「VS.こち亀」 コラボ相手としての両さんとはどういう存在なのか
http://j-books.shueisha.co.jp/pickup/vs_kochikame/j-books.shueisha.co.jp
連載40周年&単行本200巻記念という名目だったのがいつの間にか完結記念になっていた、「VS.こち亀 こちら葛飾区亀有公園前派出所ノベライズアンソロジー」を読んだ。ちなみに作家陣は執筆当時、完結を知らなかったらしい。そうと知っていれば内容変えたのに! って人もいるだろうに。恐ろしい恐ろしい……
『VSこち亀』発売になりました。執筆当時は連載終了を全く知らなかったので、『チア男子!!』がコラボできることをただただ喜んでおりました。キャラクターが勝手に動く現象童貞の私ですが、両さんや海パン刑事たちには勝手に動きまくられました。 https://t.co/BE4kDzm3zM
— 朝井リョウ (@asai__ryo) 2016年9月18日
- VS.ガルパン「両津&パンツァー」の遠慮のなさ
- VS.オーフェン「いったいどうしてこうなった」ほんとにね
- 朝井リョウの作家としての嗅覚「こちら命志院大学チアリーディングチーム出張部」
- コラボ相手としての「こち亀」
VS.ガルパン「両津&パンツァー」の遠慮のなさ
6作の中では、本業小説家ではない、そしてアニメの原作者というわけでもない、岡田邦彦という人*1が書いたVS.ガルパンが一番面白かった。
ガルパン世界では男が戦車道をたしなみたい場合、ラジコン戦車道というのがあるらしい。大洗で行われる大会に参戦しよう! あんこうチームと遭遇! 秋山殿と意気投合!からの、後半は両さんが
さすが直近で「こち亀」本編に登場していただけあり、導入にもまるで違和感がなく、成功が約束されたコラボという気がする。戦車として反則だ、リアリティがない、みたいな台詞が、リアリティと映像的面白さなら後者を必ず選ぶガルパンでポンポン出てくるのが可笑しい。搭乗員のボルボと本田がいまいち活きていなかったのと、文章が淡白で、ガルパンはやっぱり音響の迫力あってこそだなあと思わされてしまったのが欠点か。
VS.オーフェン「いったいどうしてこうなった」ほんとにね
お目当ての秋田禎信「魔術士オーフェン・迷宮編 いったいどうしてこうなった」は無謀編とのコラボ。キエサルヒマのオーフェンと現代日本の両さんが入れ替わり転生? する。
両さんがオーフェンの格好を90年代っぽいだの暴走族だのと評したり借金取りに追われる身として地人兄弟と意気投合したりトトカンタの住民にグロ魔術士は帰ってくるなリョーさんずっといてくださいと懇願されたり。ファンがくすりとさせられる小ネタが多いのはありがたいし
正直、全然食い足りない……! 構成上入れ違いになったのでしょうがないんだけど、オーフェンと両さんの絡みももっと欲しかった。なお一番のお気に入りは、原作ファンが口を揃えて「他のファンタジーとはひと味違う」というあの世界の創世神話、成り立ちを「いかにもファンタジーらしい説明」と両さんが一蹴した場面。まあそんなもんだよな。
朝井リョウの作家としての嗅覚「こちら命志院大学チアリーディングチーム出張部」
他は全部原作に触れたことがなかったけど、「チア男子!」の朝井リョウは、超神田寿司の食べログでの評価が急に下がった! 味が落ちたわけでもないのにこれは何かある! ということで、以前からある意味お約束のネタだったし偶然だろうとはいえ、このタイミングで食べログのアレげなところをdisってくる辺りに、直木賞作家の引きの強さを垣間見た。時事ネタへの嗅覚の鋭さって実にこち亀的だという気がしませんか。
「おそ松さん」の公式ノベライズを担当している石原宙による「6つの童貞VS.こち亀女子~魂の合コン~」は、元々キャラ文芸やラノベで活躍してるメンツを集めた中でもひときわ「最近のラノベ」という感じでややしんどかった。面倒見のいい両さんと欲深い両さんの二面性に切り込んだ目のつけどころは悪くなかっただけに。これは他作品にもゆえることだけど、漫画のキャラを小説で出すのに直で漫画っぽい(?)表現を、というのも時と場合による気がして。たとえば多少原作と台詞回しが違っても、村上龍辺りに両さんの商売の栄光と没落とか書いてもらうとかあっても面白かったんじゃないか。まあ今回はそういう企画ではないのだけど。というか自分は推理作家協会が監修したやつを読むべきなのか。
青春小説「ハルチカ」の初野晴が執筆した「二十四の瞳」では、何故かこち亀じゃなくて梅澤春人先生の名前が出てきたけど、「ハルチカ」って普段からこういうパロディを挿れてくる作風なのかしら。ミステリー小説「謎解きはディナーの中で」の東川篤哉による「謎解きは葛飾区亀有公園の前で」は、初期の両さんと中川が町中で銃を撃ちまくっていた頃の雰囲気を感じる短編。ベテランだけあって意外にこなれていた。
イラストは、草河テイストでありながら両さん以外の何者でもない両さんを描いてみせた草河遊也と、秋本先生の絵柄とはまったくかけ離れてるけれど両さんを完全に自分の世界に取り込んでみせた中村佑介が双璧だった。
コラボ相手としての「こち亀」
全作読んで思ったのは、こういうコラボで両さんの何がいいかって、どんな世界でも馴染んじゃうのは勿論なんだけど、何か大成功してもその後にズッコケ三人組よろしく失敗するのがお約束になってるって点ですね。コラボ先の連中に負けるのも可。リスペクトは必要だけど配慮はいらない。そういう点でこれだよこれ! と思うものもあれば、もっと全開で行っていいんやで、と思うものもあったな。
ところで。裏表紙のこのロゴ、ソーキュートですね
*1:ドラマCDの脚本とか書いてるらしい