周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

ジャンル:サンリオアニメのはじまり「おねがいマイメロディ」

サンリオ原作の人気キャラクター「マイメロディ」を主人公にしたアニメ「おねがいマイメロディ」も、放映開始から11年が経過した。今、ちょうど全208話を収録したBD-BOXなどが発売されている。ので語る。


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アイキャッチでいつもマイメロを見守っていたサンリオのドン・キティさん。本編には未登場


2005年当時の朝アニメの状況


そもそも朝のアニメ特撮とゆえば、昔から*1東映の魔女っ子戦隊物ライダーなどを擁する「ニチアサ」が圧倒的だった。しかし2002年に義務教育の週休2日制が導入されてから「ドアサ」が開拓され、土日両日含めて作品の幅がかなり広がった感はある。特にテレ東で。コナミ原作の「おとぎ銃士赤ずきん」、ブロッコリーの「デ・ジ・キャラットにょ」 「ギャラクシーエンジェル」(二、三期)、コバルト文庫の「マリア様がみてる」(二期)、電撃大王の「ぴたテン」辺りはその最たるものだろう。もっともそれ以前にも「ヤマモト・ヨーコ」とか何故か朝にやってたけど……。なお現在の朝アニメの雄たる「プリキュア」は2004年開始。


マイメロ」は、2005年に生誕30周年記念のTVアニメとしてスタート。関東ではテレ東日曜09時30分から。前番組は朝日小学生新聞連載の「マシュマロ通信」。これも詳細は覚えていないけど、なかなか毒がきいている――当時のアニメ実況ではOPの歌詞にならって「スパイスきいてる」と表現していた――内容だった。企画のウィーヴと制作のスタジオコメット、それと音響監督の岩浪美和は「マイメロ」も引き続き参加し、原作の山本ルンルンは「マイメロ」ではクリーチャーデザイン(!)を担当。森脇真琴も演出ローテに入っていた。その手のアニメファンに受けるお膳立ては整っていた、とは言える。


*1:いつ?

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榊一郎「ドラゴンズ・ウィル」「棄てプリ」そして「ストジャ」 生粋の「軽小説屋」に覚えた同時代意識

ひとつのジャンルに多少なりとも長く留まっていると、「あ、この作家は自分と同じものを食べて育ってきたんだな」「この人が使ってる言葉は自分と共通のものだな」というのが透けて見えることがある。それが単に流行に乗っかったり懐古の念をくすぐろうとしてるだけで著者本人は対象について特別な感情がなかったり。あるいは単にこちらの勘違いで、実際は読者が影響を受けたもののさらに元ネタから持ってきていたとしても*1、あらゆるフィクションにおいて同世代/同時代意識というのは結構重要だ。


スレイヤーズ」の最初のアニメ(1995)からライトノベルを本格的に読み始めたわたしにとって、1998年デビューの榊一郎はそういう存在だった*2。他ジャンルでは、和月伸宏黒田洋介が自分の中で同じカテゴリに入っている。

*1:予防線

*2:年齢的にはわたしは榊先生の一回り以上年下なので、同世代ではない

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次世代の主人公とたてまつられる人間は、こっけいだねえ!

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ドラゴンボール孫悟飯 息子はセルにやられてる


ドラゴンボール」でセル編が終了してから数年後、大きく成長した悟飯が都会の学校に通い出した頃の話が好きだった。冴えない転校生が実はかつて地球を救ったこともある戦士で、日常生活でも力をセーブしなきゃいけないんだけど、ついやり過ぎてしまって……という設定にボンクラ魂を惹かれた。しかし、人気がなかったのか、元々その予定だったのか、物語はすぐに天下一武道会からの魔人ブウ編に入ってしまい、主人公としての悟飯の影も薄れていった。まああのままグレートサイヤマンを続けてても発展性がなかった気はする。


シリーズ物の世代を跨いだ主人公交代劇は難しい、とはよくゆわれる。なんだかんだゆって読者は旧主人公に愛着を持って作品についてきた人が多いだろうし、交代に当たって作品の変質は免れないし、逆に変わらないなら主人公を交代する意味がない。これに新主人公がシリーズ途中からの新加入キャラで旧主人公に対してやたら噛みついてきて作者からは優遇されていて(いるように読者には見えて)、なんていうのが加わるともう、旧主人公がやたらヘイトを溜めてでもいないと積みである。


悟飯については、人造人間との戦いで片腕を失い、トランクスの師匠ポジとなっている未来悟飯がかっこよかった。というかあの未来トランクス編自体のシリアスなトーンが最高だった。トランクスというキャラクターはフリーザを真っ二つにした初登場時から成功が約束されたようなもので、アニメ独自の続編「GT」ではチビ悟空、パンと共に冒険する主要キャラに選ばれている。悟空と違って社会的な意味でも良き父である悟飯の姿は、そこにはない。


それでも悟飯は一度は主人公の座に就いた。一方で、続編ではこいつら主役の話が見たいとファンから言われたりしながらも、さらに下の代にその座を奪われた、谷間の世代ともゆえるキャラクターっていうのもいる。


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秋田禎信とかいうコラボ・ノベライズ大好きおじさん エロゲから国民的漫画まで

sube4.hatenadiary.jp


昨日、「VS.こち亀」の話をした。オーフェンこち亀って接点皆無じゃないですか!? と驚いた人も多かったようだけど、実は秋田禎信という作家は、この10年くらい、意外なところでの原作つきの仕事やコラボに積極的に関わっている。昔に比べればネームバリューのある作家のノベライズというのはぐっと増えたし、例えば西尾維新辺りもかなり多いんだけど、秋田の場合全体の執筆量の中でのノベライズ・コラボの比率がめっちゃ高い。


ノベライズという仕事の魅力、本質について、秋田はこんなことを言っている。



では、実際に関わった作品はどんなものがあるだろうか。ちょっと長くなるけど勘弁して付き合ってほしい。


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「VS.こち亀」 コラボ相手としての両さんとはどういう存在なのか

http://j-books.shueisha.co.jp/pickup/vs_kochikame/j-books.shueisha.co.jp


連載40周年&単行本200巻記念という名目だったのがいつの間にか完結記念になっていた、「VS.こち亀 こちら葛飾区亀有公園前派出所ノベライズアンソロジー」を読んだ。ちなみに作家陣は執筆当時、完結を知らなかったらしい。そうと知っていれば内容変えたのに! って人もいるだろうに。恐ろしい恐ろしい……


VS.ガルパン「両津&パンツァー」の遠慮のなさ

6作の中では、本業小説家ではない、そしてアニメの原作者というわけでもない、岡田邦彦という人*1が書いたVS.ガルパンが一番面白かった。


ガルパン世界では男が戦車道をたしなみたい場合、ラジコン戦車道というのがあるらしい。大洗で行われる大会に参戦しよう! あんこうチームと遭遇! 秋山殿と意気投合!からの、後半は両さん3Dプリンタでタイガー戦車を自作しての本物の戦車道。しかも両さんのことだから中川家の資金力を駆使した特殊な材質とか様々なギミックが施されていて……。


さすが直近で「こち亀」本編に登場していただけあり、導入にもまるで違和感がなく、成功が約束されたコラボという気がする。戦車として反則だ、リアリティがない、みたいな台詞が、リアリティと映像的面白さなら後者を必ず選ぶガルパンでポンポン出てくるのが可笑しい。搭乗員のボルボと本田がいまいち活きていなかったのと、文章が淡白で、ガルパンはやっぱり音響の迫力あってこそだなあと思わされてしまったのが欠点か。


VS.オーフェン「いったいどうしてこうなった」ほんとにね

お目当ての秋田禎信魔術士オーフェン・迷宮編 いったいどうしてこうなった」は無謀編とのコラボ。キエサルヒマのオーフェン現代日本両さんが入れ替わり転生? する。


両さんオーフェンの格好を90年代っぽいだの暴走族だのと評したり借金取りに追われる身として地人兄弟と意気投合したりトトカンタの住民にグロ魔術士は帰ってくるなリョーさんずっといてくださいと懇願されたり。ファンがくすりとさせられる小ネタが多いのはありがたいし格闘描写に定評のある秋田の筆で両さんが切り裂きポチョムキンと殴り合いしてるのは感慨深かったし、ラストまで上り詰めるといきなり視界が開けて見晴らしのいい景色を見せてくれる。そんな秋田の美点もいつも通り発揮されているのだけど、


正直、全然食い足りない……! 構成上入れ違いになったのでしょうがないんだけど、オーフェン両さんの絡みももっと欲しかった。なお一番のお気に入りは、原作ファンが口を揃えて「他のファンタジーとはひと味違う」というあの世界の創世神話、成り立ちを「いかにもファンタジーらしい説明」と両さんが一蹴した場面。まあそんなもんだよな。


朝井リョウの作家としての嗅覚「こちら命志院大学チアリーディングチーム出張部」

他は全部原作に触れたことがなかったけど、「チア男子!」の朝井リョウは、超神田寿司の食べログでの評価が急に下がった! 味が落ちたわけでもないのにこれは何かある! ということで、以前からある意味お約束のネタだったし偶然だろうとはいえ、このタイミングで食べログアレげなところをdisってくる辺りに、直木賞作家の引きの強さを垣間見た。時事ネタへの嗅覚の鋭さって実にこち亀的だという気がしませんか。



おそ松さん」の公式ノベライズを担当している石原宙による「6つの童貞VS.こち亀女子~魂の合コン~」は、元々キャラ文芸やラノベで活躍してるメンツを集めた中でもひときわ「最近のラノベ」という感じでややしんどかった。面倒見のいい両さんと欲深い両さんの二面性に切り込んだ目のつけどころは悪くなかっただけに。これは他作品にもゆえることだけど、漫画のキャラを小説で出すのに直で漫画っぽい(?)表現を、というのも時と場合による気がして。たとえば多少原作と台詞回しが違っても、村上龍辺りに両さんの商売の栄光と没落とか書いてもらうとかあっても面白かったんじゃないか。まあ今回はそういう企画ではないのだけど。というか自分は推理作家協会が監修したやつを読むべきなのか。



青春小説「ハルチカ」の初野晴が執筆した「二十四の瞳」では、何故かこち亀じゃなくて梅澤春人先生の名前が出てきたけど、「ハルチカ」って普段からこういうパロディを挿れてくる作風なのかしら。ミステリー小説「謎解きはディナーの中で」の東川篤哉による「謎解きは葛飾区亀有公園の前で」は、初期の両さんと中川が町中で銃を撃ちまくっていた頃の雰囲気を感じる短編。ベテランだけあって意外にこなれていた。


イラストは、草河テイストでありながら両さん以外の何者でもない両さんを描いてみせた草河遊也と、秋本先生の絵柄とはまったくかけ離れてるけれど両さんを完全に自分の世界に取り込んでみせた中村佑介が双璧だった。


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コラボ相手としての「こち亀


全作読んで思ったのは、こういうコラボで両さんの何がいいかって、どんな世界でも馴染んじゃうのは勿論なんだけど、何か大成功してもその後にズッコケ三人組よろしく失敗するのがお約束になってるって点ですね。コラボ先の連中に負けるのも可。リスペクトは必要だけど配慮はいらない。そういう点でこれだよこれ! と思うものもあれば、もっと全開で行っていいんやで、と思うものもあったな。



ところで。裏表紙のこのロゴ、ソーキュートですね


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*1:ドラマCDの脚本とか書いてるらしい