周回遅れの諸々

90年代育ちのオタクです

最終兵器彼女:新海誠がブレイクしたので、今一度三大セカイ系について語る 01

sube4.hatenadiary.jp

sube4.hatenadiary.jp



君の名は。」が大ヒット中の新海誠は、00年代前半に「ほしのこえ」で脚光を浴びた。このアニメを評するのによく使われていた言葉が「セカイ系」だ。当時は「ほしのこえ」に高橋しんの漫画「最終兵器彼女」、秋山瑞人の小説「イリヤの空、UFOの夏」を合わせて、三大セカイ系とも呼ばれた。あの時代に生きた人間は、あえてカタカナでオサレ感を出す「ソラマチ」などといった言葉の語感にもびくっとしてしまうとかしないとか。

まずは簡単に、わたしなりの「セカイ系」の理解


用語の定義についてはwikipediaでも読んで大雑把に理解するのでもいいけど、こと三大セカイ系については

三大セカイ系はそれぞれに異なった様相を示す作品だが、その共通点を大まかに抜き出せば、
銃後の少年
前線の少女
二人をそれぞれ違った仕方で繋ぐ空と学園
の三要素ということになるだろう。

http://d.hatena.ne.jp/K_NATSUBA/20091216#1261006655


というのが簡明かなと。つまり、戦争に引き裂かれた恋人たちをSF要素を交えて描く恋愛もの。少女が前衛で少年が後衛、ただし二人は引き裂かれておらず共に戦う、ということならそれは「灼眼のシャナ」などの学園異能ものとなる。「セカイ系とは何か」で出た

「『新世紀エヴァンゲリオン』の影響を受け、1990年代後半からゼロ年代に作られた、巨大ロボットや戦闘美少女、探偵など、おたく文化と親和性の高い要素やジャンルコードを作中に導入したうえで、若者(特に男性)の自意識を描写する作品群

という結論についてはちょっと込み入ってて、「セカイ系とは何か」を丸ごと読まないと納得行かないと思うのでみんな読もう。自分なんかは戦争や軍隊に好きな人を奪われる、NTR物の亜種として捉えてるけど……。




あるいは、当時「なんでもエヴァのパクリ扱いはもういいよ」派が拡大していく一方、一部現代批評界隈ではまだまだホットなトピックであり、セカイ系とはすなわちエヴァの作品としての命脈を断ち切らせないために仕掛けられた*1ムーヴメントだったんだよ! とか。


……まあ、この際用語の定義やまして時代背景なんかどうでもよくて、三大セカイ系の個々の作品についてちょっと語ってみたい。

ぼくたちは、恋していく。

最終兵器彼女」は、ビッグコミックスピリッツで2000年第1号からスタートした。00年代初頭に戦争を描いた作品というイメージだと9.11~イラク戦争との関連を疑いがちだけど、件のテロが起こったのは連載も終盤に入ってからで、影響を受けたのは連載終了後に発表した外伝の方。


大手メーカーに就職した「いい人」の主人公が社会の荒波の中でどう生きるか、周囲は彼の影響でどのように変わっていくかを描いたヒット作「いいひと。」完結から1年。高橋しんの待望の新作、という扱いだった。



今回取り上げる中で最も思い入れがあるのがこの「サイカノ」。強面で誤解されやすいけど本当は繊細な少年と、いつもオドオドしている少女の恋愛を描くと1話で思わせといて突然の開戦、偶然シュウジが居合わせた戦場に兵器としてのちせが現れ、「最終兵器になっちゃった」と告白。そこで、連載予告などでも伏せられていた「最終兵器彼女」というタイトルがどどーんと出てくる。


f:id:megyumi:20160915200748j:plain:w400


ギャグのような設定でありながら、実際ギャグも交えつつも、ストーリーは転げ落ちるように悲劇的な方向に進んでいく。その語り口はとことんセンチメンタルで、苦手って人も多いんだろうけど、当時の自分はずっぽりハマってしまった。

*1:誰に?

続きを読む

清野静「時載りリンネ!」「さよなら、サイキック」 歯列矯正ブリッジをつけた女の子は好きですか?

7年の沈黙を破り、あの清野静が新作発表! ってことで、未完の前作「時載りリンネ!」シリーズ1-5を読み返していた。

200万字の本を読むことでたった1秒だけ、時を止めることができる一族“時載り”。バベルの塔に住み、本を摂取することで生きている彼らだが、わざわざ人間界にやってくる変わり者もいる―それが僕の隣の家に住む幼なじみの少女・リンネだ。「わくわくするような大冒険がしたいな」というリンネの一言により僕らは、時間を自由にまたぎ歴史の中に住む死の集団“時砕き”が所有する、“誰にも読めない本”を巡る冒険を始める。


第11回スニーカー大賞奨励賞を受賞して書籍化されたこのシリーズは、児童文学の影響が色濃いハートフルなファンタジー。児童文学風味のラノベ作家というとどうしても野村美月を連想してしまうけれど、あちらが青い鳥文庫などの新書レーベルならこちらは立派な装丁のハードカバーといった感じで、小学六年生のリンネと語り手の少年・久高の冒険を確かな語彙でわりかし格調高く? ちょっと言いすぎか。あまり崩さない文章で、しかし軽やかに謳いあげている。

続きを読む

「劇場版アイカツスターズ!」 スタッフTとショートパンツと生足と伝説のドレスと

新宿バルト9で「劇場版アイカツスターズ!」を観てきた。女児向けアニメの映画を劇場で観るのは実は初めてだけど、大画面に映るアイドルたちのスタッフTシャツ(というか四つ星の体操服?)とショートパンツから伸びる二の腕生足に目を奪われっぱなしだった。

 

f:id:megyumi:20160831213157j:plain

 

自分はひょっとしてアイドルっぽい人のスタッフTフェチなのかもしれない。衣装の素朴さが素材の良さをひきたてるところとか、なんとなく学生の頃を思い出すところとかに惹かれる。モバマスなんかでも特訓後のきらびやかな衣装より特訓前の私服のほうが好きなことが多いしね。そして健康的なスタッフTにショートパンツから伸びる生足の過激さがスーッときいて……これは……ありがたい……

 

南の島を丸々ひとつ使って行われる「アイカツ☆アイランド」はステージあり、アトラクションあり、島内観光あり。そしてその辺をアイドル(候補生)たちがうろうろしていて、いわゆる「接近戦」以上にアイドルとファンの距離が近いイベントだ。話に聞くマチ★アソビがこんな感じだろうか。ゆめたちはアイドルとしてステージに立つ一方で、イベントスタッフもこなし、たまには海で遊んだりもする。スタッフTとショートパンツは、主にイベント運営時とプライベートの時に着られていた。

 

www.youtube.com

 

続きを読む

開催場所非公開で行われた「アダルトVRエキスポ2016」に行ってきた

8月27日に池袋の某所で開催された成人向けVR技術の展覧会、「アダルトVRエキスポ2016」に参加してきましたので、専門的見地とか皆無のただのスケベな人から軽くレポートを。6月に秋葉原で開催され大きな話題を呼んだものの、盛況すぎて途中で中止になった前回「アダルトVRフェスタ」のリベンジの意味も込めたイベントです。

 

これはヤバい! 恥ずかしすぎる「アダルトVRフェスタ」レポ

 

6月に第1回、8月に当初予定していなかった第2回ということでただでさえ突発工事感のあるイベントだったんですが、開催二日前に付近住民の要望がったとかで、会場変更。新しい会場は当選者のみに通知。いよいよアングラじみてきたなあどこでやるのかなあと思ったら、話を伺うと普段はえっちなビデオ撮影とかに使ってる雑居ビルだったそうで。7階建てのビルに学校の教室だの電車の中だの牢屋だののセットが。ますますアングラ感。

 

f:id:megyumi:20160828173341j:plain

 

続きを読む

「カムイの剣」 最高にかっこいい80年代のニンジャ活劇アニメーション

子供の頃、テレビで放映していたアニメを観て、何か強烈な印象を残していったことだけは覚えている。でも、内容はおろかタイトルも思い出せない。こういった経験のある人は多いと思う。その後、なにかしらのきっかけがあって再視聴することができたとして、「やばいやっぱすごかった当時の俺の目確かだったわ」となるか「あれ、こんなもんだっけ……?」となるかは、ひとつの賭けではある。今回わたしもひとつの賭けに挑んでみた。その結果は……記憶に残っていた以上に面白かった! 観てよかった! 当時の俺偉い!

 

賭けの対象になった「カムイの剣」は、SF作家・矢野徹の同名小説を原作として、1985年に公開されたアニメ映画だ。当時乗りに乗っていた角川映画としては、「幻魔大戦」「少年ケニヤ」に次ぐ長編アニメーションとなる。監督はその「幻魔大戦」や、「銀河鉄道999」などで知られるりんたろう。アニメーション制作はマッドハウスが担当した。

 


矢野徹原作、りんたろう監督による、伝説の海賊・キャプテンキッドの財宝を巡る波乱万丈な痛快冒険スペクタクル。親殺しの汚名を着せられた次郎は、無罪を知る僧侶・天海に救われ忍者修行を始めるが、天海の狙いは次郎の“カムイの剣”だった…。

www.youtube.com

 

続きを読む